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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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帝都ラベンズリへ

 ココナを発ったわたくしとエルサは魔物を倒しながら帝都ラベンズリまで到着していました。


 その期間は一ヶ月。道中にあった村には宿泊せず、ただひたすら突き進んでいましたが、やはり一国を徒歩で横断するのはかなりの時間を要しています。


 仮眠を取っただけで歩き通し。早朝ともいえる時間でありましたけれど、わたくしたちは宿を取り、ベッドで休む計画を立てていました。


「ここが帝国の都……?」


「千年前に世界の狭間が北大陸を割ってから、遷都したと伝わっていますね。真偽の程は定かではありませんけれど……」


 東西に長く地面が割れた世界の狭間により、北大陸はそれまでの生活を一変させたみたいです。聖王国は遷都の必要がなかったものの、帝国においてそれは遷都せざるを得ない状況でありました。


 何しろ聖都ネオシュバルツとの街道が途切れたのです。当時の人々は信心深く、首都が聖都と繋がっていないなど考えられない話であったと聞いております。


「アルテシオ帝国は聖王国と親密な関係です。特に公爵様は所領の特産品を色々と輸出されておりますし。皇帝に謁見されますか?」


 ここでエルサが提案をしました。先を急いでいるようで、その実はレベルアップが優先です。従って、わたくしは国家間とお父様の顔を立てるつもりです。


「あまり気乗りしませんが、顔見せくらいはした方が良さそうですね……」


 必ずしも軽い足取りではなかったけれど、わたくしはラベンズリ城を目指します。形式的な挨拶をして、直ぐに旅立てばいいだろうと。


 城門前。どうやらわたくしの容姿は知れ渡っていたらしく、ブレザーの制服姿であったというのに、疑いもせず御前へと通されています。


 まだ陽が昇りかけた頃であったのですけれど、どうしてか皇帝様は早朝から活動されており、謁見可能みたいですわね。


「おおヒナ、久しいな! 幾つになった?」


 早朝からテンション高めのアルテシオ皇帝様。割と気さくな感じの人柄です。わたくしの記憶によると五年ほど前に会ったのが最後だと思います。


「先日、十七歳になりました」


 わたくしは旅の途中で誕生日を迎えていました。よって制約の日まであと一年を切っています。


「いや、美しく成長したな。まだ婚約者はいないのだろう? ロベールはどうだ?」


 ロベール様はアルテシオ帝国の第二皇子殿下。面識はありませんでしたが、聞いた話ではわたくしの一つ年上であったはず。


「いえ、わたくしには旅を続ける必要がありますので……」

「ちょうど、これから遷都記念のパーティがあるのだ。本日は帝国全土が祭日。朝から晩まで祝い続けることになっておる。ヒナも参加していきなさい」


 皇帝様はまるで話を聞いていません。どうやら早朝からアルテシオ皇帝様が謁見可能であったのは祭事とも呼ぶべきパーティーが催されるからみたい。加えて皇帝様はわたくしの事情など考慮せず、パーティーへの参加を強制的に決めてしまう。


「わたくし、ドレスをもっておりません……」

「直ぐに仕立てよう。おい大臣、裁縫士を呼べ!」


 何を言っても無駄のよう。どうやら本日はアルテシオ帝国に足止めとなるようです。

 仕方なくわたくしは採寸を受け、見立ててもらった純白のドレスに袖を通す。別にお世辞はいらなかったのですけれど、わたくしの姿に裁縫士様は感嘆の声を上げていました。


「お嬢様、お似合いです。まあ一日くらいは構わないでしょう。外交も令嬢の務めでありますし……」


 エルサはパーティーへの出席を悪いこととは考えていないようね。ずっと戦い続けていたのだから、休息も必要だろうと。


「しょうがありませんね……」


 かといって既にわたくしも諦めている。皇帝様の誘いを断るなんて流石にできません。祖国やお父様に迷惑をかけるわけにはならないのですから。


 聞いていたまま朝だというのにパーティーが始まりました。どうやら要人や貴族たちは前日から帝都入りしていたようですね。


 明らかに、わたくしは注目を浴びていました。隣国の姫君でありましたけれど、恐らく聖女だという噂が届いているのでしょう。間に合わせのドレスでパーティーの主役になるなんてあり得ませんし。


「ヒナ、楽しんでいるか? 紹介しよう。第二皇子のロベールだ」


 皇帝様自ら紹介していただきました。連れられてきた第二皇子殿下は武の才に秀でているらしいですね。


「ロベールだ。よろしく……」


 ぶっきっらぼうなご挨拶。ロベール様は顔を真っ赤にしておりますし、恐らく記念日とのことで、朝からお酒を呑まれているのでしょうね。


「ロベール殿下、お初にお目にかかります。わたくしはヒナ・テオドールですわ」

「ああ、知っている。見目麗しい聖女に会えるとは幸運だよ」


 このあとはダンスに興じる。アップテンポな曲からムーディーな落ち着いた曲まで。転生してからわたくしはダンスに取り組んだわけですが、得意というわけではありません。


「ヒナ、なかなかの腕前だな?」

「殿下の足手纏いとなってしまい申し訳ございません」


 交わされる会話は形式上ですわ。褒められたとして真に受けてはなりません。初対面での会話に本心など含まれないのですから。


 ロベール様と踊っていますと、流石に来場者様の視線が気になります。他のご令嬢に役目を交代して欲しかったのですけれど、曲が終わったとしても近付いて来られないので困っております。


 一日中続くというこのパーティー。しかし、昼頃になると新鮮さもなくなって、見知った者での歓談が目立つようになっています。


 もうそろそろ会場をあとにしても構わないだろうかと、わたくしは考えていました。しかし、ロベール様とわたくしの元へ大きな笑みを浮かべた皇帝様が来てしまう。


「ヒナ、どうだロベールは? なかなかの男だろ? 婚約者になる決心はついたか?」

「ち、父上!?」


 ロベール様は焦っていらっしゃる。まあ、それは困惑しますね。本日、出会ったばかりだというのに、そのような冗談を口にされてしまえば。


「陛下、わたくしには旅がございますので、殿下とは今回限りですわ」


 ルーカス殿下のように誤解されてはならないと、わたくしは毅然と返している。相手は大国の主君でありましたけれど。


「むぅ、何が足りない? 自慢の息子なのだぞ? 不満点があるというのなら、言ってみなさい」


 残念ながら、アルテシオ皇帝様は引き下がってくれません。

 どうしてか気に入られてしまったようですが、婚約などわたくしは望んでおりませんし、不満以前の問題です。よって、わたくしは別の疑問点を口にすることに。


「それでは失礼して。陛下はココナの現状をどうお考えでしょうか?」

「お、お嬢様!?」


 慌ててエルサが口を挟むも、わたくしは首を振る。明らかに内政干渉でありましたけれど、それを目的としてラベンズリ皇城に来たわけではありません。不満点を問われたから答えただけですわ。


「ココナ? 何か問題でもあったのか?」


 わたくしの意図を皇帝様は理解できない。地方都市は基本的に貴族の支配地だからです。何の報告も上がっていない現状では仕方のないことでありました。


「実はラベンズリを訪れる前に立ち寄ったのです。しかし、政治が腐敗し、悪人が幅を利かせているというのに放置されておりますの。住民は泣き寝入りするしかない状況。わたくしはそれが適切だとは思えませんでした」


 どこからともなく拍手が巻き起こる。どうやら皇帝様と皇子殿下との会話は来場者たちも気になっていたみたいね。側耳を立てていた彼らには、わたくしたちの会話が聞こえていたようです。


 わたくしの質問に返したのは皇帝様ではなく、意外にもロベール様でした。


「ヒナ、残念だが、ココナは地方都市だ。皇帝が関与すべき問題ではない」


「ロベール殿下、お言葉ですが、ココナは帝国外なのでしょうか?」

「お嬢様ぁぁっ!?」


 エルサは気が気でない様子。まあでも安心して。わたくしはエルサの期待に応え、必ずやココナを救って見せますわ。


「いや、帝国領に決まってるだろ? でも政治は異なる。皇帝に願っても無駄だ」

「帝国民が困窮しているのですよ? 殿下は何も感じられないのでしょうか!?」


 わたくしは徐々にエスカレートしていく。見当外れな返答はわたくしを苛立たせるだけでした。


「住人の管理は貴族の務めだ。問題提起されない限り、国が動くことはない。現に住人が蜂起したり、問題が報告された事実もないんだ。ヒナの思い過ごしだよ」


 ロベール様の話は納得できません。わたくし自身がこの目で見てきたのです。泣き寝入りしている住人様がいることを。


「ならば、わたくしが問題提起させていただきますわ! ココナの現状。住人様は諦めるしかない状況ですの。統治する貴族が悪い? ならば酷い統治者を据えている帝国もまた最低な国家ですわ! 住人様が本当に気の毒ですの!」

「お嬢様ァァッッ!!」


 焦るようなエルサですが、心配しなくとも、わたくしは完遂しますわ。

 やはり見て見ぬ振りができません。この発言により国家間の問題へ発展していったとしても。


「ヒナ、分かってくれ。俺にはどうにもできない。ココナの問題はココナで解決すべきだ」

「どうして他人事なのでしょうか!? わたくしには理解できません!」


「君こそどうして首を突っ込む? 下手をすれば国際問題だぞ?」


 もう我慢なりませんわ。既に暴言を吐きまくっていましたが、わたくしとしてはまだ抑えていたというのに。


「国際問題だとか、わたくしの知ったことではありませんわ! 困窮する住民がいて、改善できる権力者にお願いしただけですの! わたくしは帝国民が不憫で仕方ありません! 帝国の政治は圧政でしかないのですから!」


 言って、わたくしはロベール様に背を向け、不満げな表情のまま視線だけをエルサに合わせた。


「エルサ、出発します。このような国に滞在する必要はありません!」


 わたくしは割と熱血漢だったのかもしれません。ああいえ、短慮というべきでしょうか。

 熱くなったわたくしは、取り返しのつかない暴言を公的な場所で叫んでいたのですもの。


 でも、反省はしませんの。わたくしは絶対に間違っておりません。ねぇ、そうでしょ、エルサ?


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