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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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心積もり

 祈りを終えていました。ディーテ様たちが脳裏より去ると、わたくしは静かに目を開いて立ち上がっています。


「お嬢様、司教との面会予約ができました」


 わたくしが祈りを捧げている時間にエルサは司教と会えるよう取り計らってくれたらしい。だけど、それはもう必要ありません。無力なわたくしが口を出す問題ではなかったのですから。


「それはキャンセルさせていただきましょう。面会は結構です」

「いや、お嬢様には教会の助力が必要でしょう?」


 エルサの問いに、わたくしは小さく顔を振る。思い違いをしていたこと。ディーテ様に諭されてしまったこと。彼女はエルサに全てを伝えています。


「今し方、ディーテ様が降臨なされたと?」


 流石に信じられなかったことでしょう。けれど、わたくしが他国の内政に首を突っ込まないとする話はエルサにとっても悪くなかったことでしょう。確実に問題が発生する予感を彼女は覚えていたのですから。


「それでは面会のキャンセルを伝えてきます」

「お願いね」


 わたくしは長いため息を吐いていました。

 クリエス様の現状。レベル100どころか300超えだなんて考えられません。しかも自分と会うために頑張っているだなんて。


 思わず赤面してしまいますけれど、わたくしは心を落ち着かせます。再会の場面では恥ずかしくない強さになっていようと思い直していたからです。


「クリエス様に負けてはいられませんわ」


 改めて思う。やはり生きたいと。制約を遂げさえすれば、漫画で読んだような素敵な青春ライフが待っているような気がします。相手が誰であれ、わたくしは青春を謳歌したい。愛する人とデートをし、ゆくゆくは幸せな家庭を築いてみたかった。再び十七歳で輪廻に戻りたくはありませんの。


 程なくエルサが戻ってきました。やはり面会予約よりキャンセルは手間がかからないみたいね。


「お嬢様、滞りなく伝え終えました。司教は残念がっておりましたが……」


「エルサ、旅立ちましょう。買えるだけ食料を買い込み、魔物を狩るのです。わたくしはレベルアップしなければなりません」


 司教については触れず、わたくしは目的を語る。ジョブランクに勝るとはいえ、クリエス様は明らかに支援職なのです。ならば自分も同じように、レベルアップが遂げられるはずだと。


「でしたら、街道を外れて進みましょうか。帝都ラベンズリまではそれほど距離もありませんし」


「そうですね。わたくしはもう戦うしかありません……」


 エルサの目に映るわたくしの表情はどう映ったことでしょう。

 女神様の降臨だなんて俄には信じられない話であったはず。しかし、わたくしが言葉を違えたことは少なからず真意を伝えることになったかと思います。わたくしは割と頑固な性格をしておりますし、エルサはわたくしの性格を熟知しておるのですから。


 エルサは大量の食糧を買い込み、わたくしがそれをアイテムボックスへと収納。それだけで準備は万端ですの。十八歳以降も生きるため、わたくしは体力値をあと140も上げねばならないのです。


「お嬢様、頑張りましょう」

「もちろんよ!」


 言って、わたくしたちは宿場町ココナをあとにしました。

 町に残る闇の部分に気付きながらも、首を突っ込むことなく。それはわたくしにとって苦渋の選択でありましたけれど、今のわたくしには何もできないのです。


 だから今は出来ることを増やせるように強くなるだけですわ。わたくしは世界を動かすという圧倒的な力が欲しい。転生をしたこの人生で初めて思いました。


 ココナの町を出たわたくしたちは東側の外門を抜け、いざ帝都ラベンズリを目指す。


「今日中にレベル20まで上げたいところね」

「お嬢様、レベルという概念がよく分かりません。参考までにいつ上がったのかを教えてもらえませんか?」


 鑑定眼を持っていないわたくしはエルサのレベルを調べられません。自身のステータスしか参考になるものはなかったのです。


「最初上がったのは大聖堂のガーゴイル討伐よ。あのときレベルが6まで上がったの。今思えばガーゴイルは大した魂強度を持っていなかったのね」


「魂強度とは教会などで調べられるものと同じでしょうか?」


 エルサは何から何まで分からないみたい。今後を考えると詳しく説明しておいた方が良いかもしれませんね。


「魂強度とは魂の強さ。元々の強さに加え、殺めた者たちの魂強度を足したものになるわ。魔物や人は失われた時、貯め込んだ魂強度を解き放つの。輪廻へと素早く還るためにね。また魂が輪廻に還る原因となった者は放出された魂強度を奪って強くなっていく」


「殺めたものですか? ならば、5しか上がらなかったガーゴイルは大した魂強度を持っていなかったと?」


「そういうことでしょうね。対照的に地平の楽園の僧兵様はあの数だけでレベルが10も上がったの。あの人たちは多くの人を殺めて、失われた人たちの魂強度を奪っていたことになる」


 ようやくエルサにも理解できた感じ。要は人や魔物を問わず他者を殺めた者の方が魂強度に勝るのだと。


「ということは、より長く生きる魔物を狩れば、効率的にレベルアップできるのですね?」


「戦う相手は、わたくしたちの強さを加味しなければ大変なことになります。しかし、多少の無理くらいはしなければなりません。何しろ、わたくしが合流しようというお方は既にレベル321だそうです。アストラル世界においてトップクラスといえるほど成長されております」


 ここでわたくしはクリエス様を例に出して話す。彼に追いつきたいこと。自身がまだ歩み始めたヒヨコでしかないことを伝えるために。


「確か、お嬢様の想い人でしたか?」

「いや、好きとかそういうわけでは!?」


 どうしてかエルサはクスッと笑い声を上げた。

 何だか嫌な感じですわ。別にわたくしは慌ててなどおりませんの。クリエス様が想い人だと言われたくらいで。


「お嬢様、強くなりましょう。かの御仁の目に留まるように。ヒナお嬢様の魅力共々見せつけてやらねばなりません!」


「ですから想い人などでは……」


「いえいえ、ルーカス殿下には悪いですが、反応に雲泥の差があります。顔を真っ赤にしているのがその証拠ですね」


「エルサ、からかうのもいい加減にしてよ!」


 どうやらエルサには見透かされているみたい。

 わたくし自身もよく分かっていない感情に。整った顔立ちをされていましたけれど、主人公としては微妙なクレリックというジョブ。まあでも、彼は主人公さながらに成長されているのですよね……。


「お嬢様、恋愛は押すことも必要だと聞きます。つまりはイケイケです。彼に出会うまでに運命とやらをねじ伏せておけば、心置きなくアタックできますよ!」


「エルサに恋愛が分かるの? わたくしの方がきっと恋愛について詳しいはずですわ」


 元冒険者であったエルサに恋愛云々が分かるはずもありませんわ。わたくし自身は漫画によって恋愛のイロハを勉強しており、彼女よりも恋愛巧者であるのですから。


「お嬢様の思考はどうせ的外れに決まっています。私にお任せいただければ、如何に強者な御仁であろうと、瞬く間に籠絡させて見せましょう!」


「本当ぉ? 何だか安心できないけど……」


「しかし、否定されないということは、やはりお嬢様は南大陸の御仁を想ってらっしゃるのでしょう?」


「そ、それは卑怯よ! わたくしは別に……」


 恋愛漫画にて想像していた恋心。自身が好きかどうか。相手にどれだけ愛されるのか。その折り合いが恋愛漫画の醍醐味であったと記憶しております。


 現状は果たしてどうなのでしょうか。面識は天界で会っただけという関係。正直にクリエス様の女性関係は最低という印象でした。わたくしの胸しか見ておりませんし。


 けれども、現状のクリエス様は天界での約束を果たすため、わたくしに会うことだけを考えられているご様子。つまりは愛されていると考えて差し支えないのかしら?


 だとすれば、残すところは自分の気持ちだけ。彼の想いに応えるかどうかでしょうか。

 わたくしは少しばかり沈黙したあと、現状の気持ちを口にする。


「わたくしは彼の本気に応える用意があります――――」


 少しばかりズルい返答を口にする。言葉にした瞬間から間違っているように思うも、現状ではそれ以上の言葉を選べません。


「お嬢様、素直になることも必要ですよ?」

「まあ、それはそのうちに……」


 心の向きはともかくとして、やるべきことは明らかでした。

 わたくしたちは笑い合ったあと、再び剣を手に取る。残された期間はあと一年ほどしかありません。制約を遂げなければ、その先はないのです。よって現状で最優先とすべき魔物討伐に精を出す。


 陽が落ちても戦いに明け暮れていました。街道を少し外れるだけで、魔物が多く現れたのです。


 一心不乱に愛刀を振る理由は制約のためだけではない。自身と会うためだけに剣を振るう人。彼と交わした約束の通り、このアストラル世界で再会するためですわ。


 わたくしの戦いに新たな意味合いが加えられていました。


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