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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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吸収

『チチクリ、貴方は回復魔法など持っていないでしょう!?』


 俺の心の内から声を上げたのはチチクリだった。どうやら契約者である俺の危機を感じ取ったらしい。


『まあそうなのですが、私に考えがございます。主人様は光属性の持ち主。闇属性も持っておられますが、明確に暗黒であるイーサ様の魔素を浴びてしまっては流石にお身体に障ります』


『ならば、どうやって旦那様を回復させるつもり?』


『はい、私めが主人様の魂に溶け込みます。そうすることで暗黒魔素に適応させるのです。既に魂の一部を主人様に捧げておりますゆえ、造作もないことでございます』


『いや貴方、死ぬつもり!? 魂に溶け込むとは吸収されるということですよ!?』


 流石に声を荒らげるミア。元使い魔であったチチクリを犠牲にするなんて看過できないようだ。


『構いません。主人様と私は同じ双山の下に集う同志。主人様の危機に私が何もしないなどあり得ません。そもそも主人様が失われたのなら、私も失われる運命なのです。ならば、この命など惜しくありませんよ……』


 黙り込むミア。俺自身も納得できない話であったけれど、生憎と俺は全身に激痛を覚えており、気の利いた言葉を返すなんてできない。


『分かりました。チチクリ、貴方にお任せいたします』

『お任せください。私はいつ何時もミア様と主人様と共にあります。それではお元気で……』


『ええ、私は既に死んでますけどね……』


 最後にミアのクスリと笑う声が聞こえた。彼女も覚悟したのかもしれない。願わくばチチクリの魂が迷わず天へと向かえるようにと。


 もうチチクリの声は聞こえなくなった。と同時に俺は再び激しい痛みに襲われている。正直に気が触れてしまいそうなほどの痛みを。


『旦那様!?』


『悪魔の魂強度を丸ごと吸収するのじゃからな。飛散したものを取り込むのとはわけが違うの。まあしかし、チチクリに抗うつもりがないのなら、上手くいくじゃろう』


『貴方、先程も問題ないとかいってましたよね?』

『それは婿殿の属性まで考慮しておらんかったのじゃ!』


 喧嘩してんじゃねぇよ。死にそうな痛みに耐えている俺を心配しろっての。

 果たしてチチクリはどうなるのだろうか。痛みと闘いながらも、俺は考えていた。


 ところが、急に痛みが引く。どうしてか、斬り裂かれるような痛みはもう感じなくなっていた。

 意識と身体が繋がる。どうやら俺はまだ生きているらしい。


「ぅ……ぅぅ……」


『旦那様!?』

『婿殿!?』


 二人の呼びかけに、俺は薄く目を開く。まだ朦朧としていたけれど、もう生死の狭間を彷徨う感じでもなかった。


「二人とも……?」


 まだ意識がはっきりしない。けれど、俺は理解してもいた。

 俺は寝転んだまま眉間に手を当て、先ほどの出来事を思い出している。


「チチクリ……」


 意外な言葉だったのか、二人は一様に驚く。俺は意識が朦朧たしていたはずで、三人の会話を聞いてはいないだろうと。


『旦那様、チチクリがどうなったのか分かるのでしょうか!?』


 堪らずミアが聞く。全てをやり遂げた彼がどうなってしまったのかと。

 まあでも、俺には分かる。彼女の問いに対する回答が俺にはあった。


「チチクリは俺の中にいる。俺は彼に助けられた……」


『それではチチクリも無事なのでしょうか!?』


 追加的な質問には首を振るしかない。それが意味することは否定であり、チチクリはもう天へと還ったことを意味する。


『そうでしたか。彼は弱いと考えておりましたが、とても強かったのですね……』


 頭を振ったあと、ミアは目尻の涙を拭っている。霊体である彼女の涙は頬を伝うや、幻のように消えていく。


「どうも俺はチチクリの全てを受け継いだらしい……」


 俺自身、よく分かっていないのだが、恐らく受け継いだと考えるのが正解だと思う。


『婿殿、どういう意味じゃ?』


「ああ、彼が持っていた魔法やスキルを俺は引き継いだ。かといって全部は使用できない。今の俺は雷属性を正式に獲得しただけみたいだな」


 もうチチクリの気配はない。しかし、ステータスには雷属性が残っており、殆どが選択できなかったけれど、彼が所持していた魔法の表示もあった。


「まずは初級魔法のライトニングボルトを熟練度マックスにしなきゃな……」


 俺が使用できるのはそれだけである。恐らくは熟練度まで引き継げなかったのだろう。他の魔法はグレーで表示されており、昇格先が分かるだけであった。


『む? ならば暗黒魔法も使えるのではないか?』


 イーサが問う。チチクリは曲がりなりにも悪魔であったのだ。従って闇魔法の使い手でもあったはずだと。


「表示はあるが、全部グレーだな。闇魔法は何か特別なことをしなきゃならんのか?」


『いや、分からん。妾は生まれつき闇属性じゃからな……』

『お恥ずかしながら私もです……』


 先天的な属性ではない。加えて俺は対極にある光属性だった。つまるところ、俺には素質がなかったと考えるべきなのかもしれない。


「ま、とにかくチチクリのおかげで俺は死の淵から生還できた。全てはイーサのせいだと思うがどうだろう?」


 ギロリと睨みつける。彼女が大丈夫だと言ったから、俺は叩き割ったのだ。もしも危険だと伝えられていたとすれば、他の方法で破壊していたはず。


『その通りです! 駄肉が適当なことを話すから……』


『婿殿、すまんのじゃ! 悪気があったわけじゃない。妾が悪かった。煮るなり焼くなり、吸い付くなり舐めるなりしてくれい!』


 本気で謝るイーサに俺は嘆息している。チチクリが犠牲になったけれど、一応は無事なのだ。反省しているようだし、過度な責任追及は止めた方がいいだろう。


「ま、今後は軽はずみなことを言うな。前にも言ったけど、俺は世界を救う役割を担っている。イーサのあと魔王候補になったもの。加えて確実に発生するだろう邪竜の討伐だ。更にはタイラーという千年前の勇者が邪神として蘇ろうとしている。俺はそいつも倒さなきゃいけないんだ……」


 タイラーとの話にイーサが反応する。少なからず接点があった彼女は思うところがあるのかもしれない。


『婿殿、タイラーは強いぞ。神格を得たのなら、それは常軌を逸するじゃろう。今は力を付け、そのときに備えるべきじゃ』


『私はタイラーを知りませんが、邪神となるだなんて横暴は許すべきではありません。私も協力させていただきますので、顕現するや天まで送ってやりましょう』


 悪霊の二人も邪神の降臨には反対であるらしい。彼女たちはタイラーがこの世に降臨することを望まないようである。


「まあそれはまだ先のこと。俺は今よりも強くならなければいけない」


 ダイヤモンドアントの討伐により、レベルは321にまで上がっている。例によって四分の一になっているのだが、どこへ出しても恥ずかしくないレベルにまで強くなっていた。


 チチクリを吸収したことで俺は改めてステータスを確認している。



【名前】クリエス・フォスター

【種別】人族

【年齢】16

【ジョブ】クレリック(剣士)

【属性】光・闇・雷

【レベル】321

【体力】260

【魔力】225

【戦闘】217(+42)

【知恵】206

【俊敏】251

【信仰】262

【魅力】193(女性+160)

【幸運】45

【加護】シルアンナの加護・魔眼(透視)

【スキル】

・ヒール(99)

・浄化(53)

・魔眼(55)

・剣豪(2)

・ライトニングボルト(1)

・ハイスピアサンダー(不可)

・ダークフレア(不可)

・ヘルバースト(不可)

・隠密

【付与】

・貧乳の怨念[★★★☆☆]

・女難[★★★☆☆]



 やはり格段に強くなっている。幸運値を除けばバランスも取れており、属性もトリプルエレメントと申し分ないものであった。


「戦闘値にプラスがある……?」


 どういうわけか、ステータスの戦闘値がプラス42となっている。疑問に感じたものの、その原因はステータスの最後に記されていた。



【称号】変態紳士(パーティ内に巨乳がいると戦闘値10%アップ)



 属性や所有スキルだけ手に入れたのかと思いきや、俺はチチクリの称号まで手に入れていた。どうやら巨乳の数だけプラスされるらしく、ギガメロン級のイーサもまた巨乳判定されている。


「しっかし、こんな称号はねぇな。他人に知られると死にたくなる……」


 戦闘値のプラスは素直に嬉しいものだが、称号を口にするのは憚られてしまう。変態紳士だなんて女性の前では絶対に禁句である。


「とりあえず王城に戻るぞ? 変態紳士が無事に天へと還ったことを祈りながらな……」


 俺の話に悪霊の二人も頷いていた。チチクリは自ら天へと還ったのだ。


 魂がないだけでなく、亡骸ですら古代遺跡には存在しない。敵討ちする相手すらいないのだから、古代遺跡に留まる理由はないはずである。


 俺たちは決して軽いとは言えない足取りで、アーレスト王城へと戻っていくのだった。


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