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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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か細い輝きを放つ未来

『恐らく華の女子高生には昇格先があります』


 世界は生きとし生けるもの全ての意志であるといいます。自ずと発展していくものであり、時として竜神様のような安寧に導く神格を自然と生み出したりもするのだと。


 また女神様たちが直接介入をしない理由は世界が包括的な意志を持っているからであり、下手に介入するとバランスを崩す原因となるからでした。


 従って女神様にも把握しきれない事象が多々存在しているようです。導き手である女神様は世界の決定を促すことはできても、実行する役目は持ち合わせておりません。


『昇格……ですか?』


『ええ、現状では20%アップでしかありませんが、昇格すれば間違いなく強力なスキルとなるはずです。現実に人族やエルフ族、ドワーフ族といった人種を束ねる者は、いずれも強大な先天スキルを保有しております。もし仮に昇格させられたのなら、途切れたはずの未来が僅かにでも繋がることでしょう』


 ディーテ様は実在する先天スキルから、派生先があると予想しています。また昇格した際には強力なスキルになっているだろうと。


『ヒナ、これより貴方は制服を着て過ごしなさい。いつ如何なる時も制服を着て過ごすのです。ただし、常時発動スキルには熟練度がありません。よって貴方は昇格を信じて着続けること。双方を遂げるには華の女子高生を昇格させるしかないと言えます』


『いやしかし、制服と仰られてもアストラル世界には制服の概念すらないでしょう!?』


 困惑するのは当たり前ですわ。貴族学院でも私服なのです。わたくしがその条件を満たせるとは思えません。


『概念がないのですから、貴方が考える制服で構わないのですよ。早速と裁縫士に依頼しなさい。ワタシは貴方が全てを叶える姿が見てみたくなりました。決して楽な道のりではなく、寧ろ絶望的だといえます。けれども、ヒナは迷わず真っ直ぐに突き進んでください。準備が整い次第、旅に出てレベルアップをするように』


 ここにきてディーテ様はスタンスを変えていました。わたくしが愛すべき使徒なのだとは思えませんが、信徒が絶望に暮れるよりも、何かに縋って生きられるようにと諭してくれているようです。


『分かりました。制服は直ぐに手配いたします。神聖魔法習得と併せて準備が整い次第、出立させていただきますわ。全てはディーテ様が望まれる世界へと導くために』


 わたくしの決心も固まっていました。どうせなら長生きしたい。悪役令嬢となり、悪評を覆したく存じますの。ならば、やるべきことをこなすだけですわ。


『ワタシの可愛いヒナ。よく聞きなさい。全てが上手く運んだとしても、貴方の未来は限定的です。か細い光を貴方自身が掴み取り、大いなる輝きとするのです。せめて貴方が歩む道程に光があらんことを。ヒナ・テオドールに祝福を授けます……』


 刹那に神聖な輝きが身体を包み込む。それは身体の中心まで届き、心に温もりを感じさせていました。


 わたくしは期待されていなかったはず。しかし、女神様の祝福を受けたわたくしは考えを改めております。今はやる気に満ちていました。まだ諦めるときではない。夢を追い続けても構わないのだと。


『ありがとうございます。祝福まで……』


『大した効果はありませんが、クリエス君のように貴方まで悪霊に取り憑かれては困りますからね。しばらくは悪しき存在から身を守れることでしょう』


 若干の幸運値アップと神聖魔法の効果を高める以外に祝福はステータスに影響を与えないそうです。けれど、悪しきものを寄せ付けない効果があるみたい。神力を一万も要するらしいのですが、ディーテ様は惜しむことなく、わたくしに祝福を与えてくれております。


『クリエス君は南大陸の南東におります。貴方に会おうと北へ向かっているようです。ヒナも急いでください。強大な悪霊に取り憑かれたせいで、彼はステータスが四分の一になっているのです。災いの芽は摘んでおかねばなりませんし、クリエス君のステータスが下がったままでは世界救済という至上命令は遂げられないでしょうから』


 ここでわたくしは思い出していました。クリエス様がステータスダウンする原因について。

 あの方はわたくしが必要だと言ったはず。あの方はわたくしが欲しいと口にしたはずなのに。


『クリエス様はまた同じ過ちを繰り返しておるのですか?』


『ああいや、そういうわけではないのですけどね。勘付いている通り、悪霊は女性であり、二人とも巨乳です。ただし、本当に運悪く取り憑かれただけなので、嫉妬しなくても大丈夫ですよ?』


『二人って!? いや、嫉妬とかじゃありませんし!』


 否定してみたものの、顔中が熱い。恥ずかしくも感じる。

 でも、本心なのか分からない。天界で会っただけの人に、わたくしが嫉妬しているなんて。


『お前が手に入るのなら他には何もいらない――――』


 不意に思い出してしまう。一字一句、表情ですら思い出せてしまう。

 正直にキュンとしましたの。だって、あれは漫画で読んだような台詞だったのですから。


 告白ですわよね? あれはわたくしに対する愛ですよね?


 今思い返しても、胸が痛むほど脈打つのです。身体目当てなのは明らかですけれど、クリエス様の言葉には心が籠もっていました。本当にわたくしを求めているのだと。


 思い出す度に恥ずかしく、けれども嬉しいと感じる言葉に他なりません。たとえ、愛情の根幹にあるものが極度に歪んでいようとも。


『悪霊は二体なのです。恐らくクリエス君が持つ女難が招いたトラブルの結果だと思われます。かといって女難は好感度アップ効果により悪霊を手懐けてもいます。今のところはですがね……』


 現状を聞いたわたくしは頷いていました。クリエス様が再び女性問題にて危機に陥ったのかと思えば、現状は不可抗力であったみたい。


『ならば頃合いを見計らい南大陸へと向かいます。わたくしは必ずやご期待に応えたいと考えておりますので……』


 わたくしの返事に、どうしてかディーテ様は嘆息している。わたくしがやる気を見せると、彼女は罪悪感を覚えるのかもしれません。困難な制約を強いたのはディーテ様自身なのですから。


『こんなにも素直で努力家な使徒であるとは考えもしませんでした。ワタシはヒナを誇りに思います。これから先の困難も、貴方には乗り越えられると信じておりますからね?』


 祝福を与えてもらったとして、僅かなメリットを生むだけでした。とはいえディーテ様が他にできることなどありません。彼女にはわたくしを信じることくらいしか残っていないはずですの。


『ヒナ、気を付けて行きなさい。魔王候補や邪竜だけでなく、邪神の復活を目論む地平の楽園が動きを活発化させておりますので。地平の楽園と称するその教団はディーテ教を異端とする土着信仰であり、ディーテ教を信仰する村々が彼らに襲われております。もしも貴方がディーテ教の聖女となるのなら、命を狙われる可能性があるのです』


『地平の楽園ですか。心しておきます。仮に襲われたとしても、わたくしは邪教に屈しませんし、絶対に許しません……』


 毅然と語るわたくしに、ディーテ様は満足そうな笑みを浮かべた。

 わたくしは間違っておりません。転生させてくれたディーテ様をわたくしも信じるだけですわ。


『それでディーテ様、わたくしにはもう一つ聞きたいことがあるのです』


 ここで話題を転換する。わたくしにはまだ質問があるのです。


『あら? 何でしょうかね。ワタシに分かることでしたら何なりと聞いてください』


 現状のわたくしがすべきことなど明確に決まっています。だからこそディーテ様には何を疑問に感じているのか察知できないのでしょう。


 少しばかり躊躇いましたが、わたくしはディーテ様に思いの丈を語ります。


『実はまるで悪役令嬢として扱われないのです……』


 わたくしの疑問に眉根を寄せるディーテ様。しかし、直ぐさま思い出されたようです。わたくしが天界でも口にしていたことであると。


『悪役令嬢とは貴方がなりたかったという地球世界のお伽噺ですね?』


『そうなのです。わたくしの力足らずか、誰も悪役令嬢だと言ってくれません。どうすれば悪役令嬢と呼ばれる日が来るのでしょう?』


 ディーテ様は悩んだ末、女神デバイスを操作。悪役令嬢についての情報を収集しています。


 わたくしが頑張れる原動力。今となってはディーテ様もわたくしに期待しているのです。従って、わたくしが張り切れるように、最大限の助力をいただけるかと思います。


『なるほど、悪役令嬢とは苦境に陥りながらも、努力で困難を回避し、望む未来を手に入れる者を指すのですね?』


『そうなのです! 一般的には追放される未来を回避しなければなりません! わたくしは悪役令嬢と呼ばれ、徐々に悪評を覆したい。最終的にはハッピーエンドを迎えたいと考えております!』


 わたくしは訴えていました。理想の悪役令嬢について。公爵家の生まれであるのは望んだ通りですけれど、現状は王子様との婚約話もなかったし、悪く言う者なんて一人もおりません。一体全体どうなっているんですの?


『ならばエバートン教皇に神託を授けて根回ししておきましょう。そこで貴方は制約について公表しなさい。十八歳で失われようとしていること。苦境から脱する必要があることを。それだけで旅立つ準備となるでしょうし、理想の悪役令嬢に近づけるはずです』


『ありがとうございます! ディーテ様!』


 わたくしの願いは叶っていました。アストラル世界の主神ディーテ様のお墨付き。ようやく悪役令嬢になれる日が来るのだと思えてなりません。


 わたくしは不安を覚えるよりも、来たるべき日を待ち焦がれていました。



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