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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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悪霊たちの正体

『もう二度と口を聞いてやらねぇからな!』


 女難の効果に託す。三日月亭というボロ宿を悪霊の破壊行為から守るための文言を俺は口にしていた。


 一瞬のあと、禍々しい魔力波が消失。地響きすらしていたというのに、酒場は静まり返っている。ここが斎場であると言われたら、信じてしまうほどに。


『婿殿、妾はちょっとした余興のつもりだったのじゃよ……』

『私も脅かしただけです! 本気で標本にしようなどとは……』


 即座に身体の支配権が戻されていた。やはり悪霊の二人は俺に心酔しているようで、俺に嫌われることを良しとしないらしい。


 彼女たちに頷く俺は店主に向かって言い放つ。


「俺の気が済むまで無料で宿泊させろ。新人だと思って舐めんなよ?」

「も、もちろんでさぁ。好きなだけご宿泊くだせぇ……」


 店主は態度を翻す。肌に刺さるような魔力波を感じては流石に口答えできないようだ。


 これにて予算的な問題は回避できた。しかしながら、部屋に入った俺は不満げにベッドへと腰を掛け、悪霊の二人を睨み付けている。


「お前たち分かっているだろうな?」


 他人に見えないからと油断していた。まさか聖職者の身体を乗っ取ってしまうなんてと。


『婿殿、すまんのじゃ。妾はカッとなってしもうた……』

『私もです。旦那様の扱いが酷すぎましたので……』


 動機は悪くないどころか有り難いものだ。しかし、二人は明確な殺意を持っていたし、イーサに関しては確実に宿ごと破壊していただろう。


「俺はルーキーなんだ。あまり目立つのは困る。あの場面も少し怖がらせるだけでよかったんだ……」


 シュンとする二人。ここまで懐かれる覚えはなかったけれど、やはり女難にある好感度プラス補正が効果を発揮しているのかもしれない。


 しおらしく俯く二人に俺は頭を掻く。少しくらい反論があると考えていたのだ。こうも素直に反省されてしまうと文句もいえなくなる。


「まあ、次からは気を付けろ。これから先も俺はからかわれたり、時には暴力を受けるかと思う。他人からすれば害がなさそうな少年だからな」


『いやでも、旦那様はどうして少年の姿をしているのでしょう?』


 俺の話にミアが聞いた。どうしてと言われても十六年しか生きていないというだけだ。彼女の問いに対する明確な回答を俺は持っていない。


『うむ、婿殿は立派な大人じゃというのに、幼い格好をしておるの……』


 イーサもまた同意していた。二人はかなり上位の霊体である。よって俺は二人が何を見ているのか見当をつけていた。


「お前たちは俺の魂を見ているのか?」


 そうとしか思えない。幾ら好感度上げのスキルがあるといっても、少年だと思えば異なる感情となるはずだ。


 俺は記憶を引き継いで転生している。従って霊体である彼女たちにはそれなりの年齢に見えているのかもしれない。


『そうですね。旦那様は若く立派な成人男性です。身体は幼いですが……』

『うむ、妾のタイプじゃぞ? 身体もそのうち魂に追いつくじゃろう』


 やはり二人は俺の本質を見抜いている感じだ。確実に転生しているのだが、格の違いか見透かされている。


 小さく息を吐く。そういえばこの二人について詳しく調べていなかった。転生魂であると察知できるような霊。一人旅の話し相手くらいにしか考えていなかったし、強大な存在である可能性を俺は排除していた。


「これからお前たちのステータスを確認する」


 ふと思い出す。加護としてもらった透視スキルが魔眼に昇格したこと。女性の裸を見てはならないと釘を刺されていたけれど、彼女たちは既に透けて見える霊体である。更には魔眼であれば、ステータスだけを見ることも可能だろうと。


「いくぞ、魔眼! 凶悪な悪霊の本質を見抜けぇぇっ!」


『悪霊はないのじゃ、婿殿……』

『ああ、旦那様が私を罵ってくれている……』


 反応は様々であったけれど、俺の頭は痛まない。不気味に光る右目は彼女たちのステータスを明らかとしていた。



【名前】イーサ・メイテル

【種別】悪霊 (サキュバス)

【ジョブ】魔王候補

【レベル】不明

【属性】不明

【性別】女性

【体力】不明

【魔力】不明

【戦闘】不明

【知恵】不明

【俊敏】不明

【信仰】不明

【魅力】不明

【幸運】不明



 イーサの情報は自己申告したもの以外に判明していない。リトルドラゴンでは弱点まで表示されていたというのに。


「やっぱ悪霊じゃねぇか……」

『妾は善良な悪霊じゃて!』


 この結果により判明するのはイーサがリトルドラゴンを軽く超える存在だということ。霊体となった今も強大な力を持っているはずだ。


 続いてミアの情報を見る。しかし、彼女もまた同じことであった。



【名前】ミア・グランティス

【種別】悪霊 (ハイエルフ)

【ジョブ】ネクロマンサー

【属性】不明

【性別】女性

【レベル】不明

【体力】不明

【魔力】不明

【戦闘】不明

【知恵】不明

【俊敏】不明

【信仰】不明

【魅力】不明

【幸運】不明



 ミアもまた自己申告に嘘はない。しかし、あとはさっぱりだ。確実に格上である二人の情報は何も閲覧できなかった。


『婿殿、他に何か分かったかの?』


 魔眼は右目が赤く光るので彼女たちも何かしらの情報を覗かれていたと分かったはず。イーサは特に隠し事などないような感じだが、問いを投げている。


「ああ、お前たちが祓うべき悪霊だってことがな……」


『酷いのじゃ!』

『旦那様ァァッ!』


 魔眼による鑑定結果は時間の無駄ともいえる。しかし、熟練度を上げるためには今後も使用していくべきだろう。


「ま、とにかく明日からは依頼を受けて金を稼ぐ。またレベルを上げるために俺が魔物を倒す。だが、思わぬ強敵が現れた場合は手を貸してくれ。それくらいできるな?」


 自発的に輪廻へと還らぬ悪霊なら利用するだけだ。先ほど見た感じでは、強力な魔物が現れたとしても、彼女たちが倒してしまうはず。


『不安ですが頑張ります。古龍を腐らせてドラゴンゾンビとして使役した経験くらいしかありませんけれど……』

「うん、ミアは大人しくしといてくれ。世界が滅びる」


 古龍だなんてお伽話レベルである。勝利しただけでなく使役してしまうなど、やはり彼女はただの悪霊ではない。


『当然のこと妾も手助けするが、過度な期待はするな。矮小なるサキュバス族である妾は大海を裂き、大地を消失させるくらいしかできぬ。婿殿、すまないな……』


「うん、お前も待機な。指示を出すまで勝手に動くなよ? 絶対にだ!」


 どうにも世界に迫る終末の原因は彼女たちじゃないかと考えてしまう。ただの悪霊にしては強すぎる。地縛霊であったから良かったものの、浮遊霊に分類されていたのなら、世界はとうの昔に滅びていると思う。


「ま、俺はしばらくレベル上げに専念だな……」


 兎にも角にも俺の新たな人生が始まろうとしていた。


 鍛錬に明け暮れた日々は終わりを告げ、レベルアップにてステータス向上を目指す。俺は強くなり、取り憑いた悪霊を祓わねばならない……。


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