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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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出立前に

 俺は急いで借家へと戻り、訓練用の剣と鎧を装備。ろくな生活用品を持っていない俺は買い置きの食材をアイテムボックスへと放り込むだけで準備完了である。一階に住む大家と契約解除の話を済ませてから、弾むようにして駆けていく。


 俺は巨乳に成長しただろうヒナと合流するつもりだ。

 主神のせいで貧乳が溢れる街を去り、再会を約束したヒナと会う。全ては前世からの願望を叶えるためであった。


「一応は報告しておくか……」


 旅立つ前に俺は大聖堂で祈りを済ませる。現在の主神であるシルアンナに報告すべきだろうと。

 祈りを捧げると、即座に脳裏へとシルアンナの姿が浮かび上がっていく。


「シルアンナ、俺は旅立つことにした。共和国には巨乳などいない」


 顕現するや否に俺は声を張る。薄い目をするシルアンナに構わず意志をぶつけていた。


『あんたねぇ、少しは自重しなさいよ? 旅に出るってどうするつもり?』


「とりあえず北を目指す。俺にはもうヒナしかいないんだ。あいつも頑張っているんだろ?」


 転生したヒナが巨乳である可能性は高い。俺も以前と同じように成長していたのだ。異世界転生と同界の違いはあるだろうが、魂情報は過度に書き換えられていないはずだと考えている。


『いや、あの子も頑張っているだろうけど、クリエスよりもランクが低い魂なのよ? 私の予想では恐らく制約をクリアできない……』


「マジで!? 俺はヒナに会いたいんだ! どうしたらいいんだよ!?」


 ディーテの部下であるシルアンナは逐一報告をしているそうだが、シルアンナ自身はヒナの現状を知らないようだ。天界でのステータス評価を見る限りは制約を果たせるとは思えないらしい。


『ヒナに会いたいのなら早く旅立つ方が良いわね。あの子は十八歳の誕生日を迎えられないから。まあでも、旅立つのは悪くない。もう基礎ステータスは上がりにくくなっているし、レベルアップしていく頃合いかもしれないわ』


 ここで聞き慣れない話が飛び出す。確かに俺のステータスにはレベルという項目があったけれど、幾ら鍛え上げようと1のままなのだ。


「レベルって何だ? ステータスにあるけど上がったことがない」


『レベルとは魂の強度よ。普通に生きていたのでは一つも上がらないの。レベルを上げるには他者の魂強度を吸収するしかない』


 割と不穏な回答が返ってくる。他者の魂強度を奪うだなんて聖職者であった俺には受け入れ難いことだ。女性関係以外は真面目で真っ直ぐだと自負しているのだから。


「それは殺人鬼になれってことかよ?」


『いいえ、違う。失われた魂は魔物も人も還るのよ。善魂は輪廻に還り、魔物などの悪魂は世界を流転する。失われるとき、全ての魂は溜め込んだ力を飛散させて、存在を軽くするの。素早く還るためにね』


 ますます意味不明である。天に還ることまでは理解できたが、それがレベルとどう関係するのか少しも分からなかった。


『運命が導くままに失われた魂は輪廻に還るだけなのだけど、その死に第三者が介入していると少しばかり異なる。殺めた者には対象が溜め込んだ力を吸収する権利が生じるのよ。簡単に言えば相手の力を引き継げるってわけ』


「物騒な話だな? やっぱ殺人鬼じゃねぇかよ……」

「言ったでしょ? 魔物も還るのだと……」


 端的な返答にて、ようやく話が見えてきた。要は魔物を倒して、魔物の魂から力を奪えばいいのだと。


「じゃあ、どうして俺に冒険者を勧めなかったんだ? その方が強くなれるんだろ?」


『弱いうちからレベルアップしても駄目。無駄が多すぎるの。レベルが低い間に基礎値を上げておかないと、レベルアップ時の成長率が悪くなるのよ。レベルは徐々に上がりづらくなるし、幼いうちに努力して基礎ステータスを上げておく必要があるわけ』


 しつこく鍛錬について言われていたことを俺は思い出していた。街から出たことなどなかったけれど、俺はシルアンナの指示通りに剣術を習ったり、身体トレーニングを欠かさずにしていたのだ。


『往々にして基礎ステータスの成長は十六歳前後がピークなの。だから動機はともかくとして、クリエスが旅立つことに私は反対しないわ』


 どうやら基礎ステータスは年齢によって上がりにくくなるらしい。一般的に成長期と呼ばれる時期が基礎ステータスを伸ばす期間であるようだ。


「マジか。じゃあ、俺はヒナと合流しても構わないんだな?」


『言っとくけど、ヒナは北大陸の西側にいるのよ? それに彼女は公爵家のご令嬢。旅の途中で合流しない限り、お屋敷に近付いても簡単に会える人じゃないわ』


 そういえば身分の差があった。今にして思えば、俺も貴族を希望するべきだったのかもしれない。さりとて、貴族であれば結婚相手を自由に決められなくなってしまうのだけど。


「まあ旅立つよ。魔物を倒して名声を得ていけば、俺だって一代貴族になれる可能性があると思うし、ヒナが生きている間に俺は会っておきたい」


『目標を持つことは良いことよ。頑張ってね。魔王候補はまだ北大陸のデスメタリア山にいる。北大陸の北東部には近づかないこと。少しずつ強くなりなさい。最終的にクリエスの望みが叶うと良いわね』


 シルアンナは天界でのいざこざを引き摺ることなく、ずっと俺の味方だった。彼女が俺のために動いてくれるたびに、大人げなかった対応が悔やまれてしまう。


 だからこそ、俺は彼女のために働くと決めた。自身の願望を叶えながら、シルアンナのためにも行動するのだと。


「任せろ。今の俺はシルアンナの使徒であり信徒だからな……」


 今となっては彼女の期待に応えるだけ。巨乳か貧乳かはともかくとして、俺は彼女のために頑張ろうと考えている。


 いよいよ旅立ちの時だ。俺は意気揚々と大聖堂をあとにしていく……。


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