ダンジョン攻略☆わくわく道中
一階層も安全とはいえダンジョンなので複雑な造りをしてる。行き止まりや回り道も多くそれなりの距離を歩いてるし、モンスターとの戦闘もあるから貴族にはわりとハードな行程だ。
しかもダンジョンならではのオプションもある。
「また宝箱ですわ」
「さっきのは空でしたけど……」
目の前にあるのは木でできた箱。多くの場合、魔素が固まってできたもので中身は冒険者たちの遺品だったりする。でもここは初心者用ダンジョン。ほぼ“やらせ”の宝箱なのだ。
「いよいよ罠でしょうか」
「変な魔力構成は感じないな」
「アイテムが入ってる可能性もあるわ」
「…………」
いままで発見した宝箱は三つ。すべて開けてきたが空、ショボい薬草、空の順だ。しかしたいしたアイテムが入ってないってわかってても好奇心と警戒心の狭間でこころが揺れちゃう。開けたい……!
だがダンジョン内ではリーダーの決定に従うのが基本だ。おれたちのリーダーはレゴちゃんである、
「トミカさんのご意見はいかがでしょうか」
レゴちゃんが意見を求めるとトミカちゃんは小首を傾げたあと、胸のまえでそっと天井を指さした。
「弓が……」
「「「 !? 」」」
バッと指先の天井をみれば、岩に隠された弓矢が仕掛けられてた。殺傷力は無さそうなオモチャの弓っぽいが、宝箱をあけた者に確実に当たるように設置されてる。
「ぁっぶなー」
「罠でしたのね……」
「魔力での発動ではないのか、近づいたら当たっていたのか、開けていたら発射されるのか」
「トミカさん、ありがとうございます。貴女のおかげで難を逃れましたわ」
「い、いえ……」
口々にお礼を言うと俯いてもじもじしてる。なんでわかったか聞いたら「悪意の気配が……」とか言ってたけど声がちっさすぎてよく聞こえなかった。なんにしても助かった!
宝箱は開けずに進むことにした。罠を回避してって方法もあるんだろうけど、おれたちの班はリスクをとらないのだ。貴族だからね、みんな欲がないみたいだ。ちなみにおれはある。でも我慢できる人間なのだよ。
「ふぅ……これで全部でしょうか」
何度目かの行き止まりにきたが体感としては一周できたと思う。みんなでマッピング担当のトミカちゃんを見ると、トミカちゃんもちいさく頷いてくれた。
「よかったー! 下へいく階段は少し戻ったところですよね」
「ええ、ですが下の攻略のまえに休憩しましょう」
たしかに貴族の体力的にはここで休憩が必要そうだ。先鋒のロベールの疲労はおれたちより大きいだろうし。
見張りを交代で行うことにして、ロベールは魔力回復薬を飲んだり、その他は足をもんだりして休息をとる。おれはハンカチを敷き行き止まりの壁に凭れた。すると尻に違和感があった。なんか刺さるような……
「どうかしまして?」
「いえ、なんか下に……」
石でも踏んだかとハンカチをどかして手で砂を払えば、なにやら色が違うところがみえる。
「?」
そのまま手のひらで砂をかき分けていくと、小さなイヤリングが片方だけでてきた。
「落とし物かな?」
女性物らしいデザインのイヤリングで傷み具合や光沢からかなり古そうだ。
「いや、埋まってなかったか」
「たしかに……」
埋まってたな。…………。
「も、貰っていってもいいでしょうか……?」
いやしいって思われるかもしれんけど、身に付けたいわけじゃないんだ!ただなんかダンジョンの記念品ぽいじゃんっ。羞恥で顔真っ赤になってるのが自分でもわかる。しかし頼む!頼むリーダー!!
レゴちゃんを見る。
「……ふふっ、よい思い出の品になりますね」
ちょっと思案したあと、許可をだしてくれた。やった!ありがとう!! ニコニコしてたらロベールもうんうん頷いてくれた。
そうしてつかの間の休憩をとったおれたちは階段をおりて地下一階へ。
「地下一階は狭いそうですが、油断せずにいきましょう」
レゴちゃん言うとおり、一階に比べると地下は狭いらしい。モンスターは少し数が多くなったものの危なげなく倒せたし、さして苦労もなくマップも埋まった。ただひとつを除いては。
「すごい。あからさまな扉」
そして、最後。おれたちの目の前にはボス部屋につづきそうなデカい扉が立ちふさがっていた。
「木札を取るだけにしては大仰な扉だな」
「いまさらですが、他の班とすれ違わなかったのも気になりますね」
「………嵌められたのでしょうか…………」
トミカちゃん、嵌められたとかストレートだな。でもたぶん正解で、このイレギュラーに対応するのも授業ってことなんだろう。
「みなさん、おそらくこれが最後の課題でしょう。この先に何があっても良いように準備をしてから入ることにします」
ボス部屋か。定番だけど、これは燃えるな!
モンスターには触手ちゃんでの捕縛と、たまに蹴りで対応してたけど相手がボスなら話が変わってくる。
肩をまわし、足を開いて股関節を柔らかくしておく。アキレス腱も伸ばさんとな。手首もまわしておこうか。
ぐるぐる各部所をまわしてるとロベールと目があった。
「カエノメル、あくまでもこれは魔法の授業だからな」
なぜか釘をさしてきた。




