企みはカフェテリアで
廊下に座らせて少ししたら目を覚ましたウィステリア先輩と、ランチを兼ねて学内にあるカフェに行くことにした。
食堂よりも軽食メニューが多く、お昼は意外と空いている。ちょっと値段も高めだし、室内より外の席をメインとしているのでご令嬢には不評らしい。おれは初めてきた。
「聞きたいこと?」
「はい、イベントのことで……フェナク様の」
「ああーわかった。順調にいけばそろそろ『街デート』やな」
外の日陰席でサンドイッチを食べながら、さり気なく話し合う。
「あれなぁ。気品が65必要なんよ、それが厳しくてなかなか起こせんかったの」
「厳しい条件なんですか」
「気品ステ自体がかなり意識しないとあがらないんよ。65もあげるのめんどかったから覚えてるわ。週一はぜったい気品の勉強せんといかんくらい」
レクティータさんは気品ステータス足りてるかな。このまえ見た限りでは……うーん。
「この世界でステータスを確認する方法あるんですか」
「聞いたことないな。魔法の属性くらいちゃう?わかるの。……『街デート』起こそうとしてるん?」
「はい。いまのヒロイン彼氏候補の1位が……」
おれは今までの経緯と目標を先輩に伝えた。
フェナクがいまのところイイ感じに攻略されてるんじゃないかってことも、刃丞と王子を親しくさせたいってことも。
一通り説明し終えると先輩が腕を組んで目を閉じ、黙り込んでしまった。
「先輩?」
「翔義くん、これはかなりキケンかもしれない」
「え」
「さっきも言ったが気品ステはあげるの相当苦労するんや。でも現状、ヒロインのあの子は気品の勉強をしてるようには見えん。二年の間に『街デート』起こせても、それ以降が間にあわんかもしれん」
「あ…っ!!」
たしかに!今回イベント起こせてもそれがゴールじゃないしな。え、これってかなりヤバくないか……?
「ど、どうしたら」
「せやねん……」
腕を組んで空を仰ぎみる先輩。
「ほかの攻略対象者はむりそうなん?」
「1位のつぎが王子なのでそこを外すと同率って感じでした。でももう一度確認してみます!」
「ああ、それが良いな。ヒロインのほうは、もしかしたらなんとか出来るかもしれん」
「!」
「おれが、いえ、わたくしがヒロインに気品のお勉強をさせられないか伝手を探ってみます。確実ではないですし、間に合うかも賭けになります。ですがやらなくては」
「せ、先輩……っ!」
「可愛い後輩の、貴女にとっては親友の未来がかかってますもの……頑張ろーな」
ニッと笑った先輩に首取れる勢いでガクガク頷いた。
頼れる先輩がいてよかったー!
そうと決まれば一刻も早くレゴちゃんに好感度の調査結果を聞かなければ。前回は聞こうとしてフェナクぶっ倒れ事件が起きちゃったんだよ。
あーでも今日は約束してない! いまお願いして明日教えてもらえる感じだろう。わかっていても気の急くおれは早足でカフェから食堂へ移動していた。レゴちゃんはランチ食堂派なのだ。
(あ!あとヴェガも探さないと!)
食堂への道中をすこし遠回りすればヴェガのサボり場だ。おれは方向をそちらへ変えると、人気がないので小走りでむかう。
もう少しであのベンチというところで抱き合う男女が目に入った。
(は!?)
いつもの場所にヴェガがいた。で、しっかり抱きしめてる相手が目を閉じたレクティータさんだ。
(フラグ立ててるー!?)
慌てて足を止めるが走ってたのが仇となり、足音で気づかれた。
「おい」
「あっ、いや、なんも見てないですうー!」
リアルで抱き合ってる男女を正視できるメンタルが、おれにはない。なんか気まずい。
遅いとわかってても目をそらして壁際へ体を寄せた。意味ないのなんかわかってるけど、壁と一体になりたいんだ……!イチャつくふたりを邪魔するタイミングの悪いおれの気配をうすめてくれ……!
「おい、石持ってるか」
不良がなんか言ってくる。石? 迷惑料じゃなくて?
「?」
「きのうの魔力回復石だ」
「あ、はい」
胸の内ポケットからハンカチに包んでおいた魔石を取り出す。そのあいだにヴェガがレクティータさんをベンチに座らせた。
あれ、レクティータさんの意識なくないか?
「レクティータ様、大丈夫ですの?」
「おまえと同じ魔力切れだ……充填したのか」
「はい。きのう午後すこし使いましたので入れておきました」
ヴェガがおれが渡した魔石をレクティータさんに握らせる。
「どうですか」
「んん……」
レクティータさんが身じろいだ。意識がもどってきたかな。
「あれ、わたし……?」
目を開けたレクティータさんがおれとヴェガをみて不思議そうに首を傾げた。
「気分はどうだ」
「あ、すみません、わたし貧血を起こしましたか?記憶がなくて」
(……これ、イベントだよな)
ヒロインの恋愛イベントに見切れるおれ。気まずいぜぇ。
これはさっさと立ち去ったほうがいいよな。
「良かったですわぁーではわたくしはこれで……」
「待ってください……!」
オホホホ、となんとなく立ち去ろうとしたら、レクティータさんに制服を掴まれた。
「あ、あの、ありがとうございます! カエノメルさん!」
「えっ!? あ、はい。お気にならさず」
めっちゃ名前呼ばれた。やばい、認識されてたんだな。というか助けたのはどちらかというとヴェガだけど。
「わたしとお友達になってください!」
「へえ!?」
変な声でた。




