なうおんせーる
城下町にある雑貨店。大通りに面したお店で小さいけれどお洒落な飾りつけをしてるし流行りものを扱っている。出来てから数年らしいけれど繁盛しているらしい。
「カエノメルお嬢様、ようこそおいでくださいました。お会いできて光栄です。わたしはこの店の主人をしていますポロンでございます」
ポロンさんは20代後半くらいのご婦人でぱっちりした瞳の女主人である。赤いドレスが都会的でおしゃれだ。
「ポロンさん、わたくしのワガママをきいてくれて感謝します。よろしくお願いいたしますね。……早速だけど、これが例の香油なの」
「まあっこちらが……!領主様からお話をおききしてからとても興味がございました」
ふふふ、なんと今日は学校を休んで香油を売りに来たのだ!
香油のことをお父様に報告したら「メルはすごいな〜!」という感動とともにポロンさんのお店に置いてもらえるよう手配したよって書かれた手紙がきた。いつでもおれに甘い父上、ありがとう。
ポロンさんはもともとはうちの領地にいた領民で、十年くらいまえに旦那さんが王都へ行くって言うのについていったらしい。旦那さんは冒険者をしていてたまに魔物素材を持って帰ってくるらしい。
「カエノメルお嬢様、フタを開けてみてもよろしいでしょうか」
「ええもちろん」
香油は250mlのペットボトルくらいのビンに入れて三本用意した。ポロンさんがコルクを抜いて香りを確認してる間に店内をながめる。
がっつり貴族向けではないから椅子とかなくて立ちっぱなしになるけど狭くはない。ガラスの貼られたショーケースや丸テーブルのうえに品よく商品が陳列されていて前世のセレクトショップみたいだ。
「どうかしら?」
「……わたしにはオレンジの香りに思えました」
「ポロンさんはオレンジが好き?」
「ええ、そうですわ」
「家をでる前にわたくしも確認したけど、わたくしにはイチゴに感じるの」
「領主さまからのお話の通りなのですね、ふしぎですわ……この香りが相手に好意を感じさせる、と」
ねー。ふしぎだよね。研究してみたけど結局好きな食べ物の匂いになるってことしかわからなかった。魔石が人体に入ろうってする作用だろうって結論。魔石からしたらプチ惚れ薬の効果は副作用みたいなもんだ。
ポロンさんがビンのふたをキュ、と絞める。
「ではカエノメルお嬢様、こちらはいくらでお売りになられますか」
「うーん……それが迷ってるの。お小遣い稼ぎにしたいんだけど大量にはムリだし、とりあえず銀貨、に、ニ枚って考えてるわ!」
銀貨は前世の価値で二千円強くらい。一本四千円ちょっとって材料考えるとすごいボッタクリなんだけど、勢いでいけないかな!?
「二枚ですか、…………」
ポロンさんが目を閉じて考え込む。
ぐぅぅ、緊張するぜ。
「この量ではお試しには少し多いですし、半量にして銀貨二枚半はいかがでしょうか。中ビンはうちで余っているものを提供いたしますわ」
「それでお願いしますっ」
うわぁー商人さんってすごい! つまりペットボトル一本で銀貨五枚=一万円超えだぁ! さすがプロ、値上げを躊躇わないんだね!頼りになるぅ。
それから付き添いのダンドワさんも交えてマージンとかセールスのターゲットとか話し合い、書面にしてもらった。商品もなんか高級なものが多いところに置いてもらうことになって、ポロンさんが実際にいろいろ飾りつけて置いてみたらすごく高そうに見えた。ほんとに商売する方ってすごいぜ……。
「ポロンさん、今日はありがとう! これからよろしくお願いします。また様子を見に来ますね」
「良い商品ですもの、わたしもやる気が出ますわ。おまかせください!」
ポロンさんが店先まで見送りにきてくれ、おれはウキウキしながら馬車に乗り込んだ。
「ヒヒヒ! 良いお小遣いになりそうだわ」
「お嬢様、笑い方。……ローズマリー様のところへ向かうにはまだ早いようですが、一度お屋敷に戻られますか」
香油が商品になったから刃丞に渡しにいく約束してるんだ。
いまは午後の授業が始まったくらいだから、何するにしても微妙な時間。
「そうだなぁ、……あ、そういえば聖夜祭のときに食べた真っ赤なお饅頭って売ってないかしら?」
見た目にもファンタジーな赤い饅頭。肉まんかと思ってたんだけど意外にもピザまんの味だった。
「あれは屋台で購入しましたので、通常はないかと思われます。つくった者を調べますか?」
「あー屋台だったっけ……出店って季節物だからいないかぁー。調べなくていいよ、またお祭りあったら探してみましょう」
「かしこまりました。ではカフェにいかれますか」
「そーするー」
お小遣い入ったら家でピザ作れるか聞いてみよう。
未来にちょっと期待しながら、大通りからちょっと外れたお安めなカフェで時間をつぶすことにした。




