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お小遣い制ではない

一年生の騒ぎは二年の学棟にまで伝わっていたらしく、聞きつけたシフリール先輩はわざわざ授業の途中を抜けて探してくれてくれたらしい。


「その香り石から作った香油というのが今回の原因なんだね」

「多分ですけど、じん……友達の反応からはそうとしか思えません」

「うーん。そうなると君の家では異常行動がなかったのは気になるな」

「そこなんですよねぇ……」


裏庭にあるふたつのベンチにそれぞれ座って話す。

これくらい離れると影響はないっぽいんだけど、それを言うとダンドワさんとかメイドのラデュレさんはどうなんだってことになる。性別で効果がかわるとか?


「では、カルダモン。いまわかるのは作用が解明されておらず、影響は不特定多数へあるということ」

「はい。さらに対象の意識の変化もよくわかってないです」

「そう、そしてそれはとても危険なことだね」

「あ……」


そうだ。おれはいわゆる惚れ薬ではないか=売れるってすぐ思ったけど、めちゃくちゃ危ない魔法の可能性もあるじゃん。


「けれど売るのなら魅力のある商品にはなるだろう」

「そうでしょうか……」


危険なことって意識したらもう自信ない。世の中にひろめて万が一えらいことになったら……。

悪い想像に落ち込んでるとシフリール先輩がふと笑った気配があった。


「そう落ち込むな。俺の友の知り合いに石に詳しいものがいたはずだ。助言をもらえるように頼んでみよう」

「助かりますっありがとうございます!」

「ハハッ! カルダモンは素直だな」


ガタッと立ち上がって頭を下げる。声を出して笑ったシフリール先輩になんだか安心しておれも微笑み返せた。


「商品化については香油の解析が終わってから考えようか。もちろん、それまで作り方など他言しないと誓おう」


今日はもう帰ったほうがいいということで、まだ誰もいない廊下を先輩に警護してもらいながらエントランスに行き馬車を呼んでもらった。何から何までお世話になりました……。


感謝を込めて深々頭を下げておれは馬車にのりこんだ。



急いで家に戻りお風呂に入る。

あがってからダンドワさんに体臭をかいでもらって香油の影響はなくなったことを確認した。


授業のある時間に帰ってきたけどお父様は仕事に行ってるらしくていない。


馬車でラデュレさんに、お風呂で体を洗ってくれるバルベロさんに香油のことを説明した結果、あることがわかった。


「じゃあダンドワさんも“そう”だったんだ……」

「はい。黙っていて申しわけございませんでした」

「謝らないでぇーなんか恥ずかしー! というか、わたしこそごめんなさい!」


ダンドワさんに見守られ、バルベロさんに髪を拭われながら羞恥に足をバタバタさせる。

そう、結果はみんなおれにドキドキしてたんだって。でも衝動を理性で押さえつけたらしい。


さっきも体を洗ってもらってるとき、たしかにバルベロさんはものすごく熱心だった。触りたいとか抱きしめたいとかいう気持ちが湧き上がるみたいだ。そのときのおれはオイルによって自分の体、とくにおっぱいの大きさに変化ないか左右比べて見てただけだけど。ちなみに変化なかった。


うちで働いてくれてる人たちを誘惑するとかこれはもうアカンやつだ。生まれる世界が違ければセクハラだよ。


「ですがお嬢様、なぜ急に商売などお考えになったのですか?」


ダンドワさんのもっともな質問。

貴族のお嬢様が商売に興味をもつなんて異例すぎるだろう。基本的に不自由なく暮らしをして興味といえばおしゃれと噂話、あとは結婚相手くらいなのがふつうの令嬢だ。

でも、でもさ、


「わたしのために、結構お金使わせちゃってるのよね」


王都にいるのも、夏に魔石使っちゃったのも、おれに使用人寄越してくれてるのも我が家にとってはそれなりに家計に響いてるはず。このまえ持ち帰ったモンスターの青い皮だってきっと鎧の補修に使うんだよ。定期外の“大掃除”したからだ。


「いまできるお金の稼ぎ方はこれかなって」

「そのようなことを……!」


驚いたように口元を覆うダンドワさん。


「あっ、ちゃんとお父様にも相談するから。うちの事業になったらいちばん良いもんね」


ほんとうに商品化できるかわかんないけど、やれるだけやりたい。


「素晴らしいお志ですわ!」


ダンドワさんが感極まるよこでバルベロさんも涙目でコクコクうなずいてる。


「おおげさだよ〜」


恥ずかしくなっちゃうな。

この世界の人たちって反応がストレートだからすげえ照れる。でもそれが羨ましくもあって好きだ。


「そうだ! まえにダンドワさんが言ってくれとおり、触手ちゃんが捕縛に役に立ったよ!」


話を変えるのに、思い出したことを伝えた。


「まぁ! それはようございました。なにをお捕まえになったのですか?」


「ローズマリー様!」


ばたーん!

おれに仕えてくれてるふたりが笑顔のまま気を失った。

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