勝利と実験
お昼を終えて全員が作業に戻ったけど、他の生徒はおろかラレールさんも集中力が切れたようでおしゃべり等しながらやってるみたいだった。ちょっと石を見てすぐに休憩場にいく生徒も多い。
そんな中でもおれが夢中で魔石選出を続けていると、違和感のある波動の石を見つけた。
「んん? なんか変な感触だな」
レゴちゃんに聞こうと思ったが、レゴちゃんは少し先へ移動していて声を大きくしなくちゃいかん距離にいた。
ちなみに制服が汚れるのも構わず、ハンカチを敷いた地面に座り込んで作業してるんだがそんなのおれだけだった。
とりあえず目を閉じて手のひらに握りなおして石に意識を集中する。
「……完全にイチゴ!」
脳内に見える赤いフルーツ画像、嗅覚をくすぐる甘くて爽やかな香り。この石を触れば触るほどイチゴのイメージが広がってくる!
ぎゅうと握れば、持ってるのは本当のイチゴなんじゃないかと思えてくる。
「食べられそう……」
手が石を勝手にふい~と口元に運んで、
「食べたら腹をいためるぞ」
「ふぁっ!」
手首をぐっと掴まれて物理的にとめられた。
驚いて振り返るとクラスメイトの男子生徒がいた。
「あー……えっと、どなた?」
「ロベール。それは香り石といって人を惑わして食べさせようとする魔石だな、とても珍しいけれど使い道はないし危険だから破棄されるやつだ、産出は圧倒的に南側が多いがそれを含め授業でもまだやってない、よく見つけ」
「待って、お待ちになって。早口だわ」
簡潔に名乗ったロベールが矢継ぎ早に説明してきた。
なんなんだこいつは。
「…………」
すごい。急に無言。あとめっちゃ見てくるけど、これはおれの話を待ってるんだよな?
「あーえーと、これは魔石ですのね? 食べさせようとする悪い魔石?」
「魔石に良いも悪いもない、使い方次第だと僕は思っている、ただ今回はうまそうに見えたのか君が口にいれたからとめた」
あーぶない! たしかにロベールに止められなきゃ石食べるとこだったな。
「ロベール様、ありがとうございます。わたくしはカエノメル、カルダモン男爵家のものですわ」
「知ってる」
そう言って去っていくロベールは小石の山を築いていた。
あれロベールが選出したやつだよね。おれのと小石山と比べるとやや小規模、か?
「はーい。みなさん、手をとめて作業を終わりにしましょう」
先生の合図で生徒たちが集まる。
「魔石の特徴はわかったかしら。それらの小石も魔力を注ぎ続ければクリスタルになります。持ち帰りたい人はひとつだけになさいね。
では迎えの来ている人はそのまま帰宅して、それ以外の人は学校にもどりましょう」
あっさりと授業が終わった。
作業場を見渡すとおれ以上に小石の山をつくったやつは居なそうだ。ラレールさんもわかっているのか、目が合うとプイと顔を逸らされた。
「ふふっ! やっぱりカエノメルさんがいちばんでしたね」
「ありがとうございます、レゴ様」
「すごい集中でしたものね。一緒に帰りましょう」
「はい!」
ニコニコしてるレゴちゃんもお迎えは来てないらしく、おれたちは手を繋いで学校の乗り合い馬車まで歩いた。
家に帰って来たおれは、香り石をベッドの上に置いて眺めていた。
ひとつ持ち帰って良いとのことで持ってきた石だ。直径三センチほどで魔石らしくゴツゴツしてる。
「お嬢様、新しい趣味ができたのですか」
現在、ダンドワさんにマッサージをしてもらってる最中だ。
採掘場で静かにはしゃいだせいで思ったより疲れてたみたいで、ふくらはぎとか痛いし魔力疲れもあってだるい。
いつものように全裸になって全身を揉んでもらってる。
「何かに使えないかなーって考えてるの」
「香り石、でしたか。お嬢様の説明では人を誘惑するのでございますよね? 侍女としましては破棄していただきたいものですが」
「ぎゅーってしなきゃ大丈夫。いい香りだからもったいなくて」
なんかに使えそうな感じが気になる。
仰向けにされて股間を広げられるけど、女の子の体だからか柔らかくて痛くない。前世でこんなんされたら叫んでたぐらいなのにな。
「んーきもちぃー」
「随分むくんでいらっしゃいます。オイルでお揉みしますか?」
「んんーめんどくさいなー」
香油なんて普段は使えないから無臭のオイルなんだけど、油くさいん……
「それー!」
「はっ…!?」
「オイルにこの石入れてみたい!」
匂いつくかもじゃんね! 思いつくと実験みたいでワクワクする。
戸惑うダンドワさんを急かしてオイルの瓶を持ってきてもらう。
「ば、爆発などはしませんか?」
「熱を持つ魔石もあるけど、香り石は火属性を感じないから平気!」
口の細い瓶だったので、オイルお皿に出してそこに香り石を浸すことにした。
爆発の不安が拭いきれないダンドワさんがベッドからいちばん遠くへお皿を置き、マッサージを受けながら待つことしばし。
「確認してみるね」
ぴょんとベッドから降りてお皿の様子を見に行く。
(色変化ナシ。重さ……変わらず)
お皿を顔に近づけて鼻から空気を吸う。
「……おいしそうな香りしてる!」
オイルからはイチゴの甘くて爽やかな香りがしていた。
指先でテクスチャをたしかめるも問題なさそうだ。
「ダンドワさん、これでマッサージしてー」
「は、はい」
オイルをダンドワさんに渡してベッドに寝そべる。
王子に呼ばれた舞踏会の準備ですらうすーい香りのオイルしか使えない我が家で、こんなにしっかり香る香油を使うのなんて初めてだ!
はじめは躊躇いがちだったダンドワさんも、次第に慣れたのか遠慮なく体を揉んでくれるようになった。むしろいつもより熱心なくらい。
香り石たのしい! もっと集めたいなー。




