はじめての舞踏会!
舞踏会はレキサ王子の挨拶から始まった。
招待客はおれたちと同じ魔法学校のやつらばっかなんだって。全員の顔なんて覚えてないけど、Sクラスで頭もいいピネちゃんが教えてくれたから間違いない。
ダンスホールはより一層壮麗に飾り立てられ、天井のシャンデリアは魔法で浮いて輝いている。オーケストラみたいな楽団もいて生花もふんだんに使われてしかも瑞々しい状態だ。
おれたちは刃丞もといローズマリーのそばで開始を待ってる。
待ってる間にもチラチラと視線のやりとりがあって緊張感がすごい。
もちろん王子を狙う令嬢もいるらしく、王子を上目遣いでみたり刃丞を睨む女の子も結構な数だ。
その中央で堂々と挨拶をするレキサ王子のハートの強さはさすがとしかいえないよね。
「私のはじめて主催する舞踏会だが、ぜひとも楽しんでいただきたい」
ニコリと微笑む王子の話が終わると同時にゆったりとワルツが始まった。
「行ってきますわね」
王子が近寄ってきたのに、刃丞も優雅に歩をすすめふたりでダンスを始めた。
「ああん、さすがローズマリー様ですわ」
「絵画のように美しいですわね」
「お似合いですわぁ〜」
うっとりと見つめる3人組。
おれはその間にダンスリストを見直す。
(えーと、これが終わったら……子爵家のやつだな)
「ピネ様、わたくし子爵家のスタンリー様とダンスをしたいのですが、えーと、」
知らないやつなんですって言っていいのかな?
「二年生のスタンリー様ね? あ、ほらあの窓際の前髪が長い方、わかるかしら。お会いしたことは?」
「ないです……あー、あの中二、じゃない、右目を隠すおしゃれな髪型の方でしょうか?」
「そうですわ。誘われ方はおわかりになって?」
誘われ方!? 作法があるというのか。
思わぬ難易度に目を見開いて首を振ると、ハチクちゃんとプリュネちゃんも近寄って来てくれた。
女子3人に囲まれるという幸運体験……!
「カエノメルさん、ほら、男性方は視線を動かしてますでしょう? ですから目が合うようにさり気なく見つめるの。あからさまにではなく、さり気なく、ですわ!」
ハチクちゃんが腕を絡めてきてくれて、耳元でこしょこしょ話してきた。
ふわああ、集中できないぃ。ハチクちゃんの吐息が耳に当たってゾクゾクするぅ! なんかいい匂いするし、女の子ってしゅごい!
「プリュネさん、見本を見せて差し上げて」
「はい。カエノメルさん、よく見ててね」
プリュネちゃんがス、と扇子を取り出しゆっくり扇ぎながらダンスホール奥へ流し目をとばす。
「……完了ですわ」
できたの!?
視線の先を見るとイケメンっぽい男がプリュネちゃんを見ていた。今の一瞬で奥の男を誘えたのか。まあまあ距離があるのに、おっとりして見えてプリュネちゃんすごいぜ。
「さぁカエノメルさんも。すぐに次の曲が始まってしまうわ」
「は、はいっ」
ピネちゃんに促され慌てて扇子を取り出し、グイっと体をひねるようにして窓際へ目線を送る。イメージはバブルのクールな女性だ。
(どや!?)
バチ!
大げさな動くが気を引いたのかスタンリーと目が合った。
(ど、どうしたら? ガン見してたらいいのか!?)
目をそらしたら負け、みたいなルール思い出したけどあれは不良のルールだっけ?
確信のないまま一曲目が終わってしまった。
王子と別れた刃丞がこちらへ向かってくる。のをなぜか王子も後についてやってくる。
「はふぅーメル、」
「カルダモン家のカエノメル嬢だね。つぎの一曲、お相手してくれないか」
「「 ふぁっ? 」」
おれと、おれに話しかけようとしてた刃丞がまったく同じリアクションで王子を見た。
キャーと小さく嬌声をあげてキャッキャし始めたのは3人組だ。王子の背後では、ご令嬢がこちらをギンギンに睨んでるし、声をかけようとしてくれてたっぽいスタンリーが固まっている。
「と、とう、メル」
先に我に返った刃丞が返事しろと目配せしてきた。
「こ……光栄です、レキサ王子」
差し出された手におのれの手を乗せた。
顔が完全にひきつってるのが自分でもわかる。
王子に導かれてホールの中央へいくとゆっくりと二曲目が始まった。
慣れた様子でホールドされ王子の顔が近くなる。
(はわぁー……)
イケメン。だけど男の顔が近いっていまいちだな。香水でもつけてんのかいい香りするが、ハチクちゃんとときも違ってまったく萌えん。
あと周りの目が痛くて心がつらい。
「緊張しているか? 私に身を任せればいい」
無心でワルツのステップを踏んでると、気遣うセリフが聞こえたので視線をあげると、イケメンスマイルを浮かべる王子がおれを見つめていた。
「はい、ダイジョーブですワ」
(うーわ……これキツイなー)
女子ならときめくスマイルに、おれは引きつった笑顔しか返せなかった。




