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魔法使いさんと妖精さんと  作者: otsk
魔法使いさんと新しい宝物と
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妖精さんからの報告 ROUND2

「なし崩し的に外に放り出されたわけですけど」


「そもそも姫を無防備なところで寝かせてる時点でアレなのに俺たちまで外に出てよかったんだろうか」


「色々と不安なヒナちゃんだけの護衛で今日は半日だけですけど外を歩いてきたんですし、まあ最悪マスターさんいますし」


 あの人はあくまで喫茶店のマスターというだけでマスターと呼んでるだけなので特段何か戦闘術に秀でてるとかそう言うことは聞いてない。


「もっと言えばイカリさんもいますし」


「そういやあいつ魔法を使えるって聞いてるけど使ってるとこ見たことねえな」


「そりゃ、一度一酸化炭素中毒になろうとして火事騒ぎ起こしてるらしいですし、変にトラウマになったりしてるんじゃないです?」


「逆に考えりゃ制御できるだけのレベルではあると言う話でもあるが」


「アルスさんと一緒で仮に出てますちゃちなレベルなのかもしれませんね」


「お前、なんで俺たちが外に追い出されてるのか理解してないだろ」


「え?罵り合いができるようにじゃなかったでしたっけ?」


 こいつと死ぬまでに何回喧嘩する羽目になるんだろうか。

 俺が歳をとって喧嘩をする元気もなくなったらコイツどうするんだろうな。俺ほどこいつの売ってくる喧嘩を買う奴もいないだろうに。

 たぶん、沸点が低いやつなら一も二にもなく羽をちぎられてそう。


「前にも聞いた気がするがその羽って千切れたりしたらまた生えてくるもんなの?」


「さあ……残念ながら虫の羽が再生した話は聞かないので同じようなものじゃないですかね。人間における髪とかとはまた別物のようですね。……まだ千切ろうとか考えてるんですか?」


「自由に再生するならストレス発散にはなるかなって」


「まあ、そういう人に見つからないようにステルス能力があったり、人が届かない位置に飛んだりできるんだと思いますよ」


「魔女狩りがあったように妖精狩りとかもあったのかねえ」


「そうは言いますがアルスさん。前提条件が崩れてます」


「何の前提条件だよ」


「別に妖精なので人の倫理観とかに従う必要ないんですね」


「軽く恐ろしいことを言うなや。でも、よくよく考えりゃそうだな。身の危険を感じるのなら、魔法でもぶっ放してそいつから逃げればいいわけだし」


「ただ、アルスさんやヒナちゃんがきまぐれに私の羽をもいだりするようなことがあれば相当まずいですね」


「……お前って羽がないと飛べねえのか?」


「飛ぶ時に一応羽ばたいてるからいるんじゃないですかね?」


「お前の設定って結構あやふやだよな……」


「そもそも人の妄想の産物かもしれないので細かいところはあやふやなぐらいでちょうどいいのかもしれませんよ?」


「昔はお前の生態を解明するとかそんなのも旅の目的にあったりなかったりした気がするが……まあ、そんなことはどうでもいいか」


「ブラックボックスを突くのはやめておいた方が得策ですよ」


 自分で自分をブラックボックス扱いしていくのかよ。


「お前のことはまあ昔から曖昧だからいいとして、俺がお前に聞こうと思ったのはヒナとティオラちゃんだよ。何事もなかったか?あるいは変なこと口走ってなかったから?」


「まあ、先ほども申した通りヒナちゃんが若干アルスさんに似てきているということぐらいです」


「……結局そういうのって、血筋だなんだよりは生活環境によるものだよな」


「……未だに後悔されてるんです?」


「ヒナが俺についてきてくれたことは嬉しいし、俺もちゃんと育ててあげようとは思ってるさ。だけど……ちゃんと王族として暮らしていける未来もあったんだ。無理矢理にでも押し付けておくのが正解だったんじゃないかって、それはいつでも思ってる」


「らしくないですね」


「自分の人生なら自分で勝手にけじめつけて、お前が悪いで済ませられるけどな。ヒナっていう1人の女の子の人生を変えることになったんだ」


「でも、結局それも選んだのはヒナちゃんですし、アルスさんを選ばなかった世界線のヒナちゃんがどうなってたかなんて誰にも分かりませんから。いや、まあ人格形成に一役買ってしまってる私の責任ですね、すみません」


「……いや、結局融通が効くからって、学校にいる間のヒナの面倒見てくれてるのはお前だしな。四六時中俺が見れてるわけでもないし」


「やけに素直ですね」


「俺はこうやって気分転換にどっかに行こうって連れてくることぐらいしかできねえしな」


「もっとも、ヒナちゃんはそれを望んできたじゃないですか?」


「…………そうだったな」


 俺についてくるメリットをヒナが聞いてきた。

 俺はそれに、色んな景色を見ることができるって答えた。

 ヒナが望むだけの景色の何割を叶えてやれたんだろうか。


「学校に通わせるのと、旅に出させるのとどっちのが子供にとっては良いんだろうな」


「いや、そんなこと私に聞かれましても。セラさんに聞いた方がいいんじゃないですか?」


「あいつは真面目ちゃんだからな。そら学校に通った方がいいって言うに決まってるだろ」


「なら、今はそれが正解ってことで良いじゃないですか」


「ヒナはどこでも友達出来そうだし、魔法使えるから人より頭がいいんだよな」


「ヒナちゃんは特殊例すぎますけど」


「ただ別に学校でやる勉強が嫌だっていうことはないんだよな。教科書一通り読めば内容理解しそうだけど」


「……ここしばらくヒナちゃんについて学校に行ってますけど、結構学校に行く理由もそれぞれみたいですよ」


「そんなもんか?」


「特にヒナちゃんは勉強をするというよりは、誰かとお話することを楽しみにしてるみたいです」


「誰かと……そうだよな。ヒナはキクノさんと二人暮らしで、そもそも他に人がいることすら分かってないようなもんだったしな」


「今はヒナちゃんにとっては学校はとても優しい空間だと思いますよ。少々ガキ大将ですが」


 それはお前が止めろよ。


「というか崇め奉られてます」


 もっと敬う対象が近くにいたはずなんだが。


「その子も一緒になってやってます」


「いや、まあティオラちゃんがいいならいいんだけどな」


 事情を知らない大人が見たら戦慄ものだろ。

 てか、ヒナは一個下だろうに。


「まあ、結局のところ可愛いですからね。ヒナちゃん。まだ小さいですから完全にクラスのマスコットです。それが回り回って神聖化されてます」


「そろそろヒナが宗教団体の教祖になってないか俺は不安だよ」


「彼氏彼女らは本望ではないでしょうか?」


 もっとマシなものに生きる理由を見出してくれ。

 ヒナが生きる理由なのは俺とセラぐらいで十分だよ。


「なあ、シオンって酒飲めたっけ?」


「アルコール摂取したところで人間と違って酔わないですけどね」


「ッケ。これだから未確認飛行物体は」


「いやそれはUFOでしょ。私一応生命体であることは声高に言いますよ」


「じゃあ未確認生命体」


「でも、それも人間から見ての話ですからどこまでも自分たち本位ですよね人間って」


「そら、なぜか生存競争で勝ち抜いて生物界のヒエラルキーで頂点に立ってしまったからな。人間以外は等しく下等生物なんだろうな」


「烏滸がましくないですかね?」


「そう思うなら妖精さんが頂点に立てばいい。別に誰も止めやしないと思うけどな」


「頂点に立ったら私たちが人間を管理しないといけないんですか?」


「そら上に立つものの宿命だろ。管理しなかったら叛逆の一途だぞ」


「じゃあ今のままでいいです」


 こいつはそういうやつだよな。

 自分が自堕落に生活できる世界があればいい。

 そのためにちょっとだけ働く。


「出会った頃はもう少しだけ殊勝な心構えを持っていたような気もするが」


「目的はあれど、結局その時にならないとどうすることもできませんからね」


「……まあお前が早くお役御免になるように頑張ってやるよ」


「別に私のお役でもないんですけどね」


「精霊様に言われてんじゃなかったのか」


「どうせ叶いっこないことを押し付けてるだけですよ。永遠に終わらないものを探させてるんです。残念ながら、私は妖精界ではお邪魔虫のようですからね」


「その原因を自分で省みたことがあるか?」


「省みて妥当な判断かなと思ってます」


「こんな自堕落な奴が妖精界で優秀な奴なんて、そら上の連中は頭抱えるわな」


「どこでも残念なことに出る杭は打たれるんですよ」


「お前の場合引っこ抜かれてどっかに投げられてるだろ」


「まあ、だから何年経ってもほっつき歩いててなんの成果を上げてなくても、どやしてくる上司も、探しにくる仲間もいないんですよ」


「単純な個体数の話じゃなかったのか?」


「まあ、地球上に存在するという意味ではわざわざ私を探しにくる理由もそんな労力をかける必要もないと言えばそれまでですが。無能な怠け者に時間を割くぐらいなら、もっと働いてくれる有能な子を囲っておいた方がいいに決まってますね」


「……お前、魔法については有能って話じゃなかったか?」


「それこそ"魔法について"だけですよ。他はからっきしです。協調性もない、教える能力も足りない、生活能力皆無。だから、アルスさんに縋って生きてるわけです」


「妖精さんの世界はそういう一点突破的なもので生きていける世界じゃなかったのか」


「まあ、本来別にそんなに有能じゃなくても大丈夫ではあるんですよ。人間だって足りないところだらけでも生きてるじゃないですか」


「まあ……そうだが……」


「こちらとしては致命的なのが協調性がないことなんですよね」


「今に始まったことじゃねえな」


「これでもだいぶマシにはなったんですよ」


「人間世界に溶け込めてるようで何よりだ」


「人間世界というか子供世界というか」


 ……何時ぞや聞いた話だが、誰かわからんが学校のガキ大将を締めてこいつがトップに居座ってた時期があった気がする。

 要するに年齢こそ俺の一個上とかほざいているが、精神年齢はいつまでもガキのままなのだろう。

 ヒナにはなぜか、少しばかり大人ぶろうとしてるいるが。


「……じゃあ、今なら別に戻って上手くやれるんじゃないのか?」


「だとしても、戻る気はさらさらありませんけどね。せっかくの可愛い妹分を手放すは惜しすぎますからね」


「なんでそこまでヒナにぞっこんなんだお前は」


「可愛いから以外に理由は必要ですか?」


「……いつか追及するからな」


「来るといいですね。その、"いつか"」


 別に今追及してもよかったが、店の中がなんだか賑やかになりつつあったので、恐らく寝ていた姫様たちが起きてきたのだろう。

 取り立てて何か手伝えるわけでもないが、娘たちといつも一緒にいられるわけでもない俺が一緒にいられる時間なのだから、その時間を妖精さんに費やす必要もない。

 さて、次はいつになることやら。



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