勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 四話 「初仕事」
こんにちは、含水茶吹です。
今回も二つで一話の構成ですが、ここで一章のターニングポイントなのでタイトルが前編後編と違う仕様になっております。
恐らく三話続けて理解が難しく、下手すると意味不明になってしまうような文を書いているところがありますが、一応伏線をぶち込むとそうなってしまうというジレンマがありますので、そこも含めて、温かい目で見てくださる嬉しいです。
次の話のあとがきは前回と同じように前後編のふたつのお話についてのお話と、ターニングポイント後の方針について語ろうかと思うので、そこもよろしくお願いします。
恐らく五話は三日後以内に投稿します。
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俺こと、三滝兼政は見た目、十歳ほどの『再生者』、小鳥遊華蓮都と共に国家機密の組織である『再生者による犯罪対策課』に入隊し、『一般人の代表意見発表者』という役職に就いたのだった。
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勢いよく話が進み、やっとそれらに理解が追いつき、現状を理解し始めた、今日この頃。
俺が華蓮と出会って、一カ月が経った。
華蓮に加え、護衛として、クナイと呼ばれる女性が居候と言うべきなのかわからない立ち位置で家にやってきて、生活もかなり変化した。
家事全般は俺とクナイさんが作業分担で行うようになったり、華蓮の部屋がないので僕の部屋を使っていたり、クナイさんはソファを寝床にしていたり、夕方まで女児向けアニメやらがつけっぱなしになったり、電気代が増えたり、水道代が増えたり、増えた分の生活費がなぜか数割割引になっていたり。
かなりどころか、百八十度、変化した。
唯一、変わらないとすれば、最近、春休みが開け、学校が再び始まり、新学期のクラス替えで、一年の友人とまた同じクラスになりそいつら話す時、位だろう。
そして、現在。
俺は学校の授業を普通に受けていたのだった。
授業も一年のころとは変わって難易度が上がって、できる奴とできない奴がはっきりと別れ始めていた。
そして自分の立ち位置が学生で、もともとは普通のどこにでもいるはずの一人なんだと、認識した。
決して、『再生者による犯罪対策課』の特別枠を務めるような今迄を送ってきたわけではない。
だけど、小鳥遊華蓮という少女ト出会い、守ると決めてしまったからこうなってしまった。
偶然と自業自得でこうなった。
こうやって、心にゆとりが出来てからわかる世界もあるのだなと思った。
そんなことを頭の中でぐるぐると巡らしながら、ノートの端をシャーペンで塗りつぶす。
黒鉛が幾度となく塗り重ねられ、光を奪うかのように表面が光りだす。
そして、その上にほんの少しづつ、黒鉛のカスが乗り出した。
それでも、まだ俺はシャーペンの動きと思考を止めなかった。
今を受け入れた俺自身を客観的に評価しながら思った。
子供には嘘が吐けない性格はアレがあったからよくわかっている。
アレがあったからこうなった。
そして、今。
普通とはいいがたい所はあるが生活が出来ていて、現に生きている。
だから、今を享受する。
それでいい。
それでいいのだ。
俺が決めたことに忠実に生きているだけなのだから。
俺はそんなことを思い名がラ授業を受けていると、授業う終了を告げるチャイムが鳴り、気付けば、昼休みに入っていた。
最近、大体こんな感じに時間を過ごす。
変わらないのは友人の存在だけだったらしい。
過ごし方が変わっていた。
漫画みたいなことが現実に、それも、身近な存在としてある事実が俺をそうさせている。
そんなことはわかっていた。
だけど、アレの事もあり、元から俺の思考は狂っていたのかもしれない。
受け入れてしまう性格。
そして子どもには嘘を吐けない性格。
それが俺自身だった。
あとは空っぽなのかもしれない。
…。
…、……。
俺は自分の頭を抱える。
「おい、兼政、そこで食っていいか?」
と、そんな時ふと後ろから声をかけられた。
顔を上げ、売り向くとそこには、僕の古くからの友人、西本暁浩がいた。
彼とは中学からの中で親友と言っても過言ではない人物である。
そして、常に人の中心に立つ才能の持ち主で男女問わず彼の指示は大きい。
そんあ彼は、僕の後ろの空いた席の机の天板をバンバンと叩きながら、そう聞いてきた。
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彼のそんな彼の言葉に俺はそっけなく、
「適当にすわりゃいいんじゃねーか?」
と一言返すと、彼はその言葉通りにニヤッと笑いながら椅子に座った。
そして、一言。
「兼政、なんかあった?」
その一言で俺は息が止まった。
そして、いままでの全部を走馬灯のように思い出し、深呼吸を無理やりにでもして、動揺した心を落ち着かせた。
そしてその問いに、出来るだけ平然とした態度で、
「あぁ、別に、なにもねぇよ」
と、返す。
それに対し、西本は「そうか」とだけ返し、持ってきていたのだろうか、弁当箱を広げ、それをパクパクと食べ始めた。
それを見て、思い出したように、コンビニで買った弁当を彼同様に広げ、食べ始めた。
そんないつもの昼休みの途中。
担任の先生が急に俺の前に現れ、俺にこう告げた。
「三滝、お前の保護者が来ている、今日は早退しなさい」
その一言に、俺と西本含め、教室の空気が止まった。
そして、先生が教室の出入り口を指さしているのに築きそこを見ると―――、
反田一さんがいた。
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僕は彼の存在に気付き、荷物をまとめ、教室を出て、反田さんにまず一言浴びせた。
「俺の人生崩壊させたいんですか?」
それに対して、反田さんは、
「はははははは、そんな気微塵もありませんよ。今回は入院している親戚の容体が急変した~、っという事で通してあります」
と、いつも通りの、快活な笑いと共に返した。
それもまた演技でもないことを理由として作ってくれたもんだ。
そんなことを思いつつ、
「なんでこんなことしたんですか?」
と質問すると、反田さんはよくぞ聞いてくれたというような表情をしながら、言った。
「初仕事の客が来るんですよ」
その言葉に一瞬ポカンとしたが、それがすぐに自分の現在の立ち位置と共にやるべきことに切り替わる。
「判りました。ですけど、今度からこういうことやめてください。お客さんは緊急ではない限り学校の圧とかに調整してくれると嬉しいです」
と、クレームを言いつつ、反田さんと共に学校を後にする為、歩き始めた。
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校門前には見知った車があり
クナイさんが僕らを迎えに来てくれていた。
その車内で、僕は今回の客の資料があるという事でその資料に目を通していた。
仕事の内容
相談の応答。
依頼主
南波 双木
年齢
十九歳
現在職業
アルバイター
相談内容
社会の目などに関しての事。
備考
・少々、心配性な面もあり、会話中しつこいと思える部分多々あり。
・受け答えはしっかりと出来、敵言わない模様。
・怖がりな面が垣間見えるのが時々あり、少し優しめの口調が執拗かと思われる。
それには事細かく、とは言えないが相談の相手をするにあたって、必要不可欠で最低限の部分が書いてあった。
おそらく反田さんが書いたのだろう。
病院で呼んだ手紙とよく似た字が並んでいた。
俺はソレを読んで、反田さんに少し訊ねてみる。
「…俺、どう相談の相手すりゃいいんですかね」
そんなざっくばらんとした質問に反田さんは、ヒントのように答える。
「そうですねぇ…。私としてはですが、あなたがクナイさんや華蓮ちゃんと暮らして、どう思ったのか、それをもとに発言すればいいじゃないでしょうか。罰に、ハーレム構築中みたいなこと言ってもいいんですよ」
俺はその反田さんの一言に、そうかと、納得しながら、
「誰がハーレム作るんですか、んなことしません」
と、ツッコミを入れた。
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そこから少し経ち、帰宅すると、さっさと制服を着替えた
その後、リビングで華蓮を着替えさせ、僕はソファに座り、その横にクナイさん、僕の膝の上に華蓮、そして適当な位置に反田さんが立っていた。
反田さん曰く、依頼者は午後一時三十分に来るといっていた。
現時刻、一時二十五分という事は、残り五分という事か。
人に依るが、いつ来てもおかしくない時刻である。
俺は緊張により少し宙に浮いた気分になっていることを自覚する。
その緊張が華蓮にも伝わったのか彼女もそわそわし始めた。
それを見てクナイさんは小さく笑い、
「方の力を抜いて、深呼吸。…三滝君、子供を膝に乗っけて仕事する人なんていないんだから、そう思えば気が楽でしょ?」
と、肩を叩いて、アドバイスを言ってくれた。
それにより、ほんの少し気が軽くなり、笑いが薄っすらと込み上げた。
そして、俺は華蓮の頭にトンと手を置いた。
その手を華蓮は小さな両手で掴み不思議そうにこちらを見た。
「カネマサ、どうしたの」
彼女の質問に俺はこう答える。
「いや、なにもないよ」
彼女に対して笑顔を忘れずに。
そうしてウイルと、玄関の呼び鈴がなりインターホンに何者かの映像が映し出される。
それを見て反田さんは
「来ましたね。インターホンやラ、お茶汲みやらは私がやります。なので、クナイと三人で頑張ってやってください」
と言って、インターホンに出てから、すぐさま玄関へ向かった。
その姿を見て、俺はいよいよだと、覚悟を決めた。
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反田さんが連れてきた青年は、少し痩せ形ながらも、ヒョロヒョロとはしておらず、芯を持った感じの人物だった。
俺等は立ち上がり、彼に挨拶をすると、彼は小さく「こ、こんにちは」と細い声で返した。
俺は彼に、座ることを促すと、彼はすんなりと俺等とは対面に位置するソファに座り、その後を追うように反田さん以外、ソファに座った。
取り敢えず、俺は会話を切り出してみる事にした。
「初めまして、俺は三滝兼政って言います、気軽にどう読んでくれても構いません。よろしくお願いします」
と、握手の手を差し出しながら、自己紹介をしてみると、
「こ、こちらこそ、は、初めまして、南波双木、といいます。僕もどう読んでくれても構いません」
と、またか細い声で自己紹介しながら、俺の握手に答えた。
そして、ここから、僕が事件に巻き込まれていく、などとは誰も予知していなかった。