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勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 三話「再生者 弐」

  0


 俺こと、三滝兼政みたき かねまさ小鳥遊華蓮たかなし かれんに纏わることをクナイという女性から一通り聞き、『再生者リプレイヤー』という存在を知る。

 そして、クナイさんから商談を持ち掛けられる。


  1


 「商談、と行きましょうか」

 俺と華蓮を見つめ、クナイさんは言った。

 「商談ですか」

 俺は言葉を復唱する。

 商談、何かを売られるのか、買い取られるのか。

 俺はこの話から考えられる商談の材料をチェックする。

 そして、有力候補として、小鳥遊華蓮の存在が思い浮かび、

 「華蓮、ですか?」

 確認として訊く。

 「そうですね、確かに小鳥遊華蓮の回収というのは案としてありました」

 と、クナイさんは言う。

 その言葉に俺の隣に座る華蓮も何を話しているのかなんとなくわかったらしく、ギュッと俺の服の袖をつかんできた。

 それを見て、クナイさんは少しだけ頬を緩め、

 「ですけど、今のところはあなたにしかなついていないみたいですからね。さすがに無理に引き離すようなことはしませんよ」

 と、言った。

 では、何なのか。

 材料として上がるモノがない。

 そんな疑問に満ち溢れた目線をクナイさんに向けると、少し笑いながら、俺を指さした。

 「君だよ。君を買い取ろうと、我々は決めました」

 「へ?」

 その言葉に俺はただただ、阿呆みたいな声を上げるしかなかった。


  2


 商談の材料とは俺、三滝兼政自身だった。

 「我々は君を四千万で買い取り、『再生者による犯罪対策課』に引き入れるという事で、現在、四千万の前払いで百万程持ってきております」

 そういいながら、クナイさんは自らの荷物として持ってきたジュラルミンのケースを取り出しロックを解除し、それを開けて僕らに中身を見せた。

 大きさとして、大きいと満場一致で答えれるであろうケースにぎっしりと詰まった札束を見た。

 正直初めて見る札束の山に呆然とするだけだった。

 そして、一通り見せた後、再び閉めロックを掛ける。

 「どうでしょうか。売られに行きますか?」

 クナイさんは意地悪そうな笑いを含めた表情で俺を見た。

 その意図はわからなかったが、俺はただ唯一、わかる事だけを言う。

 「クナイさん、俺は売られるほど、愚かな生き物ではないです。俺は華蓮になつかれているとクナイさんは言いましたよね。なら一層、そんな事、出来ないじゃないですか。それに、俺は華蓮かのじょを守ろうって決めてるんです」

 俺のその答えにクナイさんは笑った。

 それも大笑い。

 最初の爽やかさなど微塵もないくらいの大笑いをした。

 「はははははははははははははははははははははは。…正解です、三滝君。大正解」

 その笑い声に再び唖然とする。

 そんな俺にクナイさんこう言う。

 「あなたは正解です。そして、合格です。実はあなたを試しました。もし自分を売るなんていたらこの任務も効力切れでしたし、札束でボコボコに殴ってから何も払わずに帰ろうと思ってました」

 良かったです。

 そう言った。

 そして、続ける。

 「なので、四千万の半分の二千万ですが、あなたの口座に振り込んでおきます。そして―――」

 俺に手を差し伸べ、

 「これから、よろしくお願いします、新参おなじあなのむじなさん」

 そして、俺はすべてを理解し、受け入れ、こっれはもう逃げれない話を聞いてしまったのだと、この申し出は絶対に断れないのだと。

 理解した、そして、受け入れた。

 彼女の手を握り、

 「よろしくお願いします」

 握手を交わした。


  3


 時間は進み、夜。

 クナイさんは反田さんとの連絡を取り、いろいろな細かいことについて、後日、反田たんださんを交えて話しあうことになった。

 その報告の後、クナイさんは「夕飯でも作りますよ」と現在、何か作ってくれている。

 手の空いた俺は華蓮と話していた。

 「カネマサ、これからどうなるんだろう」

 「そうだな。もうどの道逃げれないからな。あのとき、断ることもできたのだろうけど、その先が恐らく、言えないようなことだろうからな」

 「…そっか」

 華蓮は少し何かに怯えるような仕草を見せた。

 俺はそんな彼女の頭に尾案と手を置き、撫でた。

 「でも、俺は華蓮をまもれればなって思って引き受けたんだ。お前が心配するようなことにはならないよ」

 そういって、笑う。

 そして、彼女もつられた様に笑う。

 今はそれでいいのだと。

 俺はそう思った。


  4


 時間は大幅に過ぎ、華蓮とクナイさんのいる生活が十日経過した。

 周り人間からこの十日間の間、色々な連絡があったが何とかそれを落ち着かせ、安定して生活を送っている。

 そして今日、四月十四日。

 反田さんが家に来る。

 玄関のインターホンが鳴り、俺は玄関のドアを開け、その先の反田さんが俺を見るなり、

 「どうですか?女の子に囲まれる生活は?クナイさんは二十歳らしいですし、華蓮ちゃんは十歳位でしょう、いいですねぇ。おっと、もし遅れました。お久しぶりです、三滝兼政君、反田一たんだ はじめです」

 「お久しぶりです、再会早々、苛立ちしか感じさせない自己紹介ありがとうございます」

 殴りたくなるような長ったるしい挨拶を俺にしてくれた。


  5


 「それでは我々、『再生者による犯罪対策課』の仕事やら何ら等について話すとしましょうか」

 ソファに座った反田さんは書類Bの束を俺に渡しながらそう言った。

 「恐らくクナイよりは話を短くできると思うので華蓮さんもよく聞いてください。おっと、名刺が燃える燃える」

 と、取り出した名刺が突然燃え出しそれを即刻、携帯灰皿のようなものの中に入れた。

 おそらく、突然罵倒されたクナイさんの仕業なのだろう。

 それにしても、いまにも僕に渡そうと手に持っていた名刺が燃えたのに異常な落ち着き方である。

 「はは、慣れていましてねぇ。とにかく、こういうことくらいで驚かないようにしてるんですよ。驚いているだけ仕事の時間が減っちゃいますからね」

 そう言って、快活に笑う。

 やはり、底のない人だと思う。

 「少し始まるのに時間がかかりました。ではいきなり本題でも話したほうが良さそうなので、そうさせていただきましょう」

 一度、場を仕切るように声のトーンをほんの少しだけ上げ、話す。

 それによって、少し騒がしくなりかけていた周囲が静まる。

 そこには重みのある空気が流れ、その中でへらへらと笑う反田さんだけが異質に目立つ。

 そして、反田さんは口を開いた。

 「では、まずは我々、『再生者による犯罪対策課』に入隊おめでとうございます。そして、いきなりですがあなたには重要な役割について貰いたいと思います」

 反田さんはそういってニコリと笑った。

 その笑顔は裏に何かありそうな、仮面のような笑いだった。


  6


 

 「重要な役割、ですか」

 俺は反田さんの言葉を繰り返すように呟く。

 「えぇ、そうです。あなたには我々の視点の一つ、いわゆる、第三者の立ち位置についてほしいのです」

 反田さんは書類を指さし、書類に目を通せ、と言外に促す。

 それに乗っかり俺は資料に目を通す。

 そこには『一般人の代表意見発表者』と、書いてあった。

 「見てわかる通り、書いてわかる通りです」

 そういって、俺の目をじっと見つめる。

 「貴方には、『再生者』と共に一般的な生活をしていただきます。そして、事件や、。問題が発生した場合その生活で手に入るはずであろう知識を生かして、そういた方面からの意見を取り入れようという我々の試みです。もしあなたや華蓮さんに危害が降りかかった場合、我々、私やクナイさんをはじめとした『再生者による犯罪対策課』が全力を尽くしてあなたたちを保護します」

 その話しは僕にとっても、彼らにとっても悪くないモノではあった。

 だが、

 「俺はソレをやるとして、何があるんですか?経緯も経緯ですし」

 質問するしかなかった。

 それに反田さんは答える。

 「そうですね。我々の失態であなたに被害を与えて、仕事を手伝って貰うと申し出すのは確かに立場をわきまえていない事でしょう。ですが、我々も、あなたのような出会い方をし、そして、貴重な『再生者』と共存する集団を探し出し仕事を手伝って貰わないといけないほど、切羽詰まっていまして」

 …。

 俺は黙り込み、ただ反田さんの顔を見た。

 反田さんのその表情は先ほどまでの飄々とした雰囲気からはかけ離れた、苦虫を噛むようなモノだった。

 「ですから、身勝手も重々承知で出たこの行動です。これを引き受けろとは言いませんし、我々もそうなれば潔く手を引きます。ですが、これを引き受けてくれる、そう答えるのであれば、それに見合った報酬と、状況を用意します。どうでしょうか、これは最後の判断です。クナイさんとの会話が第一班だとすればこれが最終判断です。道を、間違わないようにして下さい。これはあなたの人生です」

 その表情を張り付けたまま、反田さんはそう言った。

 わかっている。

 知っている。

 だけど、俺は、もうクナイさんに言ったはずだ、華蓮かのじょを守る、と。

 そして再び、一つの意思が沸き起こった。

 子供に嘘は吐けない。

 例え、ありえないような成り行きだとしても。

 俺は決めた。

 すべて受け入れる覚悟はできている。

 ならば答えは一つだろう。

 俺は、俺は―――、

 「わかりました。俺はその仕事を引き受けます」

 答えるだけだった。


  7


 数時間経ち。

 反田さんはもう帰った。

 俺は自分の部屋で資料に目を通し、仕事の内容を確認し、ざっとまとめる。

 俺に任される仕事の内容は一言でいうと『再生者の相談役』らしい。

 基本的に自宅での勤務で、自宅を事務所として、様々な悩みを持つ再生者の相談に応じ、その悩みに助言を与える、というものらしい。

 それにしてもこの仕事を引き受けると決めた瞬間から、再生者という言葉に特別なモノが感じなくなった。

 その理由はまだわからないが、いつかは見えてくるのだろう。

 遠くとも、近くとも、どの道知る事だろう。

 だから今はそのことについて、考えない事にした。

 それは反田さんで言う、仕事に対しての無駄な時間だから。

 自分のベットに仰向けに倒れ、資料を床にポト、と落とす。

 そして、ちいさい声でつぶやく。

 「衝立でも買っておこうかな」

 と、今やるべきことを忘れないように。

こんにちは、含水茶吹です。

長い説明回が終り、やっと、主人公が全繊維付きます。

アクション系の予定なのですが、こっからどう転がっていくのか、そういうところを見てくれると嬉しいです。

では今回のちょっとした解説やら言い訳を。

今回、二話編成の前後編という書き方をさせてもらいました。

これは、ルールとして課した、短くシンプルなモノというのに沿ったものです。

なので今後何度かそういったことがあるかもしれません。

そして、今回シンプルから少し遠のいた難しい説明となっていますが主人公が大体最後にまとめているのでご安心ください。

では次回のです。

次回は初仕事の予定です。

ここから

一章は激変し、血なまぐさくなり始めていきますのでよろしくお願いします。

では、今月はここまで、という事で来月ペンを執るために、ここで一度おいかせていただきます。

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