31頁 ~裏側~
旅館の玄関から聞こえてきた不気味な声と2つの人影。
その正体の1つが野太い男の声だと理解した瞬間、これはヤバいやつだと俺は本能で理解した。
いかにもな雰囲気が漂うおかしな2人組。
俺はまるで芸能界のスキャンダルを追う低俗な雑誌記者にでもなった気分だった。
2人の人影のうちの1人は男。
その男はぶくぶくと太ったスーツ姿の中年男で、趣味の悪い紫色のシャツに金色のネクタイ。腕には金色の時計、そして両指10本全てにギラギラと光輝く下品な指輪をこれでもかというほど身に着けている。
こうして遠くから観察して見ても、それはそれは時代遅れな成金男って感じだ。
まさか今時こんな成金のテンプレみたいなヤツが実際にいるなんて思いもしなかった。三流ドラマの成金でもこんなヤツいないって。
対してもう一人の女の方は随分若く見える。
若いというか、俺らのクラスにも普通に居そうな中学生ぽい女の子って雰囲気。
和風の高級旅館に場違いなメイド服のような白のパフスリーブに赤黒チェックのベストとスカート、それからニーソックス。まるでアイドルのステージ衣装だ。
顔もそれなりに可愛いとは思うけど、アイドルとして見るなら、テレビのひな壇の隅っこ一瞬だけ写るような、何の個性も魅力も感じられないアイドルといった感じだ。
顔から判断する限り、少なくともうちの学校の生徒じゃないだろう。
女子全員の顔なんていちいち覚えてないけど、あれほど可愛い顔なら、一度見たらなんとなく覚えてるはずだろうし。
突然、中年男は少女の肩に腕を触れて強引に抱き寄せると無理やりキスをした。
げっ! き、キモい……。
なんて気持ち悪い光景なんだろう。
可愛い顔してあの女、よくあんなのとキスできるな……。
しかも眉間にしわが寄ってるくせにやたらと積極的だ。頭おかしいんじゃねーか。
そして中年男は唇を離すと少女の胸や太ももをいやらしく撫でまわしながら言った。
「覚悟はできとるんやな?」
「はい、好きにしてください……。このままじゃ私、デビューできないから」
「よっしゃ、ええ子や。心配せんでええ。わいが気持ちようしたるさかいな」
な、なに? これ?
「デビューした子らはな、みーんなわいと気持ちようなったんたや!」
こ、これって……。噂に聞くアレなの?
「なんや、心配せんでええ。嬢ちゃんもええ気持ちになるさかい」
「は、はい。よ、よろしくお願いします……」
「ほな行こか。こんな寒いトコ、いつまでもおったら身体壊してまうで」
「はい……」
中年男と少女は玄関には入ろうとせず、横の小道から奥へ向かう。
やっと行ったか……、と思った瞬間だった。
「おい! そこにおんの誰や!?」
中年男は急に振り返ると、こちら側を見て叫んだ。
ひぃぃぃぃっ!!
やばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよ……!
中年男の声が辺りに響くと、急激に心臓の脈拍が速くなり始めた。
腋の下が冷たい……。
いつの間にか身体中からドロリとした汗が無意識に噴き出していた。
あああ、おしまいだ、もうダメだ……。
そう思った瞬間、突然物陰から怪しげな黒服にサングラスをかけた男たちが現れて、俺を無理やり引きずり出すと、中年男の前に跪かされて、頭を踏みつけられた。
『なんやこのクソガキは。まあええわ。秘密を知ったからにはタダで返すわけにはいかへんな、連れていけ!』
『ははっ!』
とかいう展開になって黒服の男たちにフルボッコにされて東京湾へ……。
ああ……。こ、こ、こんな時まで妄想が! どど、どうすればいい?
「あーあ。そんな事しちゃっていいのかなぁ? 樽原さん」
だが、俺の心配を余所に、旅館の出入り口から堂々と出てきたのは、金髪に染めた身なりの良さそうな男だった。
その口調は見た目に反して飄々としていて、全然やる気のない感じだった。
「なんや剣か。ワレ、こないなとこに何しに来とんじゃ?」
「何しにって言われてもなぁ。俺、一応この旅館のお客さん。常連ってやつね。そうそう、俺ってさ、一昨日いきなり引退発表したもんだから今日もマスコミにつけられてるんだよね。だから俺の側で悪い事すると見つかっちゃうぞ?」
「ク、クソッ! 調子に乗りやがって……」
「はい、スマイルスマイル♪」
カシャッ! カシシャシャッ!
剣はデジカメで中年男と少女の写真を撮りまくった。
「おっ! またいいのが撮れた♪ 樽原さん、さっき撮ったこいつなんかはブチューって感じで威力絶大だよなぁ。ほらっ」
剣はデジカメの液晶画面をこれ見よがしに樽原とかいう中年男に見せつけた。
「い、いやっ!」
デジカメの画面を見た少女は一瞬で青ざめた。
「剣……、お前消されたいんか?」
「おお怖い。でも樽原さんって時代遅れだよねー。その手はもう古いって」
「な、なんやと?」
「樽原さんってニュースとか全然見てないでしょ? もうずいぶん前に法律が改正されたの知ってる? 今は公安が金の流れをちょちょいと追うだけで、あんたのご自慢のペットくん達が次々に網にかかる時代なんだぜ? あ、そう言えばいつも一緒にいるペットくん達はどうしちゃったの? もしかしてみんな居なくなったんじゃないの?」
「剣、てめぇ……」
「あ、何ならここで試しに『ハロー久しぶり』ってご自慢のペットくん達に電話したらどうだい? ついでに『つるぎくんがいぢめるよー』ってさ」
「くっ……糞がっ」
「ていうか樽原さん、ここ最近、電話かかってこないだろ?」
「……」
「今頃ペットくん達は尻の穴まで調べられてこってり絞られてるんじゃないかな?」
「ぐぬぬ……」
「あ、そうだ! 俺もう引退しちゃってもう一般人だしさ、これ週刊誌にでも投書してやろうか? いくらぐらい貰えるんだろうな、こういうのって」
「……な、何が望みや? 金か? 女か?」
な、な、なんだ? これは……。
「まさか。俺がそんなつまらない餌に食いつくとでも思ってんの?」
樽原の顔が油汗でテカり出す。
「わ、わ、悪かった剣くん。義父に便宜を図ってもらえるようにするさかい、この事は内密に頼むわ! せ、せや、この娘なんかドヤ?」
「ひっ!」
樽原は一緒にいる女を剣に差し出す。
「あー便器なんていらないから。だけど樽原さん、俺、頼みたい事があるんだよね」
「な、なんや?」
剣は樽原に迫り、いわゆる「壁ドン」する。
「簡単。俺のやる事の邪魔だけはしないでもらえるかな?」
にこりとしながら優しく諭すように言う剣。
だけどその優しい口調が逆に底知れない恐ろしさを感じさせた。
剣はそう言いながら、ポケットから財布か何かを取り出すと、樽原に名刺ようなものを手渡した。
「……わ、わかった」
「ありがとう、樽原さんって優しいなぁ」
剣は手を壁から離すと樽原から離れる。
「おい嬢ちゃん、今日は帰れ」
「は、はい……!」
「これ、足代や。ええか、今日の事は誰にもいうたらあかんで」
「は、はい……」
樽原とかいう中年男は少女に万札らしき紙幣を手渡すと、少女はペコリと樽原と剣に深々とお辞儀をしてそそくさと旅館から駆け出て行った。
「何? 捕まえた魚逃がしちゃうの?」
「やかましわ!」
「せっかくだから抱けばよかったのに。どうせお義父が全部もみ消してくれるんでしょ?」
「剣……。てめぇ、こんな事してると、いつか足元掬われるぞ?」
「ご忠告ありがとう。でも樽原さんみたいな偉い人が俺みたいな小物を相手にする暇なんてないでしょ?」
「はっ! ほざいてやがれ!」
中年男は吐き捨てるように言うとブクブクに太った身体をタプタプさせながら、旅館の脇道から奥にある宿泊部屋へと向かっていった。
………
……
…
はぁ~~~~。 やっっっっっっっっっっっっべぇ!
なんなんだよ、これ?
いわゆる枕営業の現場? 芸能界の裏側? 裏世界の光景?
ていうか剣って、どう見ても引退表明した俳優の剣雪斗だよな!? あ、あんなヤツだったのかよ。
ていうか、芸能界マジヤベェ! いったい何が起きてるんだ?
「もう出てきていいよ」
えっ!?
もしかして俺の事バレてた?
ど、どうする……瑠伊?
どうしようか迷っていると、旅館の出入口から一組の男女がやって来た。
「で、どう?」
「はい、ばっちり押さえました!」
剣の問いにガタイの良い大男が、体育会系特有の通った声で返事をする。
「よしよし。だけど声は抑えような、新人君」
「は、はい……」
「これからいかがいたしますか?」
女の方が凛とした声で剣に問いかける。
「あーそうか。ここの部屋は中学生に譲っちゃったんだっけ?」
「はい、マスコミに嗅ぎつかれたようですのでキャンセルの手続きは済ませております。ですが今夜の宿泊場所は、やはりどのホテルも取れそうにありませんでした」
「カプセルも?」
「はい、全滅かと」
「マスコミは?」
女はスマホを手に何かを確認した
「たった今『K』が食いついて来たようです。間もなくこちらへやって来るかと」
「そっか、1匹ついて来ちゃったか。じゃあ知り合いのとこ行くと迷惑がかかるね。うーんと、じゃあ漫喫行こうか?」
「まんきつ?」
「そう、漫画喫茶。朝まで個室で漫画読み放題なんだぜ? しかもシャワーまでついてるし、すごいとこだろ?」
「……しょ、承知しました」
「うん。よしじゃあ行こう」
剣と取り巻きの男女は、ぞろぞろと玄関前から外に去っていった。
「あれ? 『週刊☆げいのう!』の梶浦さんじゃないですか? また張り込み?」
塀越しに剣の声が聞こえる。
「ええ、今回はあなたの……」
「大変だねー。別にそんな面倒くさい張り込みなんかしなくてもいいのに。俺ら今から漫喫行くけど一緒に来る?」
「あ、ではご一緒させていただき……」
話し声はだんだん遠くなっていった……。
剣雪斗が漫画喫茶ねぇ。
それはともかく、さすがにもう大丈夫だよな?
サングラスかけた黒服とか隠れてないよな?
俺はニンジャにでもなった気分で周囲を警戒しながらそっと玄関から旅館に入ると、やっとの思いで宿泊部屋に着いた。
「あ、宮川、思ったよりも遅かったね、何かあったの?」
部屋に入ると、俺を見るなり平沢がそう言ってきた。
「い、いや、ちょっと夜風に当たってたんだ」
フッ……。芸能界の裏側という漆黒の夜風にな……。
洋子ちゃんは奥の6畳間の別室で浴衣姿になっていた。
もう風呂を済ませたのか長い髪が少し湿っていて、浴衣姿と相まってとても色っぽい。
一方で、隣にいる今井はまだ制服姿のままだ。
「あら、お、おかえりなさい」
「高村様、もうお風呂入ったの?」
「そ、そうよ。覗きたかったかしら?」
「う、うん。見たかった」
「……ば、馬鹿なんだから」
なるほど、みんな一緒には入らなかったのな。
原田はとっくに風呂に入ったらしく、10畳間のど真ん中で布団を敷いてぐっすりと眠っている。まぁ、朝練で早かったみたいだし、俺を背負って運んでくれたりで疲れているんだろう。そっとしておこう……。
「あのさ、お風呂って1人ずつ順番?」
「そうですよ。ジャンケンで順番を決めました。宮川君は居なかったので最後です」
「そ、そっか」
「宮川君、混浴が良かったですか?」
「そりゃあもちろん!」
大反対に決まってんだろ!
「ふふっ、エッチなんですね、宮川君は」
「男ならみんな同じこと考えるって」
「平沢君も?」
「ぼ、僕は宮川と違うから」
「おいこら平沢、嘘つくんじゃねーよ! このムッツリ野郎が!」
「ほ、本当だって」
「はいはい。ところでさ、北条が見当たらないんだけど」
「めぐみちゃんなら今お風呂です。覗いたら警察に通報しますから」
い、いきなり警察なのか。先生に言うんじゃないんだ……。
ていうか、ものすごい警戒されてるな俺。
「そ、そっか。じゃあ俺も先に寝ようかな。昨日早かったんだ」
「そうですね。皆さんも疲れてるでしょうし明かりは消しましょうか。原田君も眠っていますし」
「うん。そ、そうだね、夜更かしして宮川がまた倒れたら困るし」
「みんな、心配かけて悪かったよ。それからありがとうな……」
そういえばこの宿泊部屋、10畳と6畳の2部屋あるのに間仕切りがないんだよな。
女子と一つ屋根の下で宿泊とか、他のやつらが聞いたらきっとハンカチ噛んでうらやましがるだろうな。
◇ ◇ ◇
っ……。
痛い……。
頭が痛い。頭蓋骨がメリメリと締め付けられるような嫌な鈍痛。
それに胸とお尻がまたパンパンに張って気持ち悪い。身体の方は昨夜と同じ感じだ。ということは、また膨張したのだろうか……。
毎晩こんなのが続くと、いつか風船のように破裂してしまいそうだ。
それに寝汗をかいたせいか、また雌っぽい甘い香りがプンプンする。
他の女子の匂いはあまり気にならなくなったと思ってたのに、自分の匂いは強烈に気になるな。
なんだよ、これ……。
ん? 口の中に違和感が……。
奥歯を舌先で軽く撫でると、ゴロゴロとした固形物が剥がれた感触と血の味がした。
布団にもぐってそっとそれを吐き出すと、それはやはりというか、俺の奥歯だった。
これで抜けたのは2本目だ。他の歯もこの前よりグラグラしている気がする。まるで自分の足より大きなサイズの靴の履いているようだ。
きっと遠くない将来、俺の歯は全て抜けて落ちてしまう気がした。
時間が分からない……。
だけどおそらく深夜なのだろう。みんな寝息を立てて眠っている。
また変な時間に目が覚めてしまったみたいだ。
とりあえず風呂に入ろう。
この匂いをこれ以上撒き散らすのはヤバい気がするから。
俺は着替えの入ったかばんを手に持って静かに移動すると、浴室の扉をそっと開ける。
扉の奥はいきなり露天風呂じゃなくて小さな更衣室だった。更衣室には洗面台にドライヤー、壁には大きな鏡が張り付いていた。
備え付けの棚の扉を開けると、未使用のバスタオルと浴衣が積まれていた。
そういえば風呂は全然チェックしてなかったよな。いったいどうなってんだろ?
更衣室から露天風呂へつながる扉をそっと開けると、石を積みあげて作ったようなお風呂と小さな洗い場にシャワーが1つ。
お風呂は大人2人ぐらいまでなら一緒に入れそうな大きさ。
露天風呂と言っても四方を高い木製の壁に囲まれているので殆ど室内みたいだ。
天井の隙間からわずかにのぞく星空が、ここは露天風呂であると主張しているようだ。
ちなみに女子の誰かが入浴中だったなんていうラッキースケベを期待したが、残念ながら、そういう場面には遭遇できなかった。ちくしょうめ。
露天風呂に誰もいない事を確認すると、俺は更衣室に戻る。
みんなが眠っている和室側の扉に鍵が付いているのを見つけると、俺はすぐさまロックをかけ、鍵がちゃんとかかっているか静かに、かつ入念にチェックをする。
よし、大丈夫だ。
これで「逆ラッキースケベ」は無いだろう。てかあってたまるか!
これで俺は自由の身。
他人の目を気にすることなく堂々と全裸になれる。ああ、なんと素晴らしい事だろうか!
早速、俺は服を脱ぐいで全裸になると、シャワーで入念にかけ湯をしてから露天風呂に浸かる。
積み上げられた岩の風呂のすぐ横にある小さな岩山からは、チロチロとお湯が流れ続けている。いわゆるかけ流しってやつなんだろう。なかなか贅沢な感じがする。
………
……
…
露天風呂があまりに心地よかったせいか、俺は長時間どっぷりと湯に浸かっていたらしい。
長時間……と思ったのは、板壁の向こうから小さな話し声がずっと続いていた事にようやく気が付いたからだ。
「私あの時、宮川君に告白したわ」
「そっか。きっとそうなんじゃないかなって思ってた」
それは北条と、洋子ちゃんの声だった。
「怒らないの?」
「うん……」
「そう。私、貴女から宮川君を奪おうとしたのよ?」
「洋子ちゃんならいいよ……。それに、あたしはまだ誰とも付き合ってないから」
北条……。やっぱり俺の事を……。
「呆れた。貴女、どこまで能天気なの? それともよほど自信でもあるのかしら?」
「自信なんて全然だよ。それでどうだったの? 告白。返事はもらえた?」
「……分からないわ」
「えっ?」
「ただ、私、宮川君の事については、もう私からは何も言えない。『誰にも言わない』って宮川君に言ったから……」
「そ、そうなんだ……」
「でもね、私の結果がどうであれ、そもそも告白もする勇気もすらない北条さんには関係ない事だわ。だって北条さんは卒業式までそうやってずっと指をくわえて見ているだけですもの」
北条、そのままで指をくわえて見ているだけでいいんだぜ。
俺に告白する事なく、普通に楽しい日常を過ごして、そして……
──さよならだ。
「そ、そんな言い方しなくても……」
「北条さん、私ね、宮川君に付き合えないって言われたわ」
「えっ?」
「それでも私、宮川君の事は諦めてないから。……だから北条さん、この際だから言うけと、宮川君から引いてくれないかしら」
「い、嫌っ……それだけは絶対に嫌っ!」
「そう……。だけどね北条さん、貴女が今まで通りいくらアピールしても、宮川君は決して振り向いてくれないわ」
「ど、どうしてそんな事言うの?」
「貴女じゃ絶対に宮川君を幸せにしてあげられないからよ」
「そ、そんなことないもん! 酷いよ洋子ちゃん……。何もいきなりそんな言い方しなくったって!」
「事実よ」
「……!」
今にも一波乱起こりそうな空気が、壁を突き抜けてここまで伝わってきた。
「洋子ちゃんならできるの? 宮川君の事、幸せにできるの?」
「……」
「な、なんだ。洋子ちゃんもできないんだ……」
胸が……心が……痛い。
洋子ちゃんは俺の事を知ってるから……何も言えないんだろう。
「はは、ははは……。ぱ、馬鹿にしないでよ。よ、洋子ちゃんはただ振られただけじゃない! それが悔しくてわたしに八つ当たりしてるんでしょ!?」
「ええ、悔しいわ。自分の無力さに絶望すらしてるもの」
「そ、そうね、洋子ちゃんと宮川君は、ぜ、全然お似合いじゃないもの!」
「北条さん、私これでも貴女の事を友達だって思っているのよ」
「あら、み、見損なったでしょ? クラスの他の子みたいに、わたしの事、軽蔑してもいいんだよ?」
「北条さん、恋愛って独りでできると思う?」
「え?」
「恋愛は必ずね、自分以外の誰かがいないとできないものなのよ?」
「……」
「もしも明日、好きな人が突然居なくなったら、もう想いを伝えることも、告白もできなくなるのよ?」
「それって……」
「もう遅いわ、めぐみちゃん、もう寝ましょう」
「よ、洋子ちゃん!? ちょっと!?」
「神様なんて……いるのかしら」
洋子ちゃんの呟きを最後に声は途絶え、縁側の戸がぴしゃりと閉まる音が響いた……。




