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月桂樹の唄  作者: 松山 京平
秋風編
11/73

10頁 ~西へ~

 学校に着いたのは朝の5時50分。集合時間の10分前だ。

 グラウンドにはすでに多くの生徒達が集合していた。


 深紅に染まっていた朝焼けは、いつしか白と紺(こん)色を混ぜたような優しい色合いに変わっていた。

 学校前の道路を歩いていると、フェンス越しに観光バスが6台グラウンドに停車しているのが見える。

 俺の通う夕凪台(ゆうなぎだい)中学には専用の駐車スペースが殆どない代わりに、こうして大型バスなどが直接学校のグラウンドに入れるようになっている。


 校門からグラウンドに入ってバスの停まっている方へと足を進めると、深夜に小雨が降ったのか、グラウンドの土はじんわりと少し湿った感じがした。


「よっ、瑠伊(るい)、身体は大丈夫か?」

「佑馬(ゆうま)おはよう、まだちょっと良くないかも。無理して出てきた」

「おいおい大丈夫かよ? ヤバかったら言えよな?」


 本当は佑馬と一緒に登校するつもりだったけど、昨夜からの身体の痛みで、もしかしたら休むかもしれないって、電話で連絡したんだよな。今は痛みが治まってきて気分は楽だ。


「宮川君、ここだよ!」

「おはよう、北条」


 6組のクラスメイトが搭乗する予定のバスの横で、運転手らしきの人が大きい荷物をバスに詰め込んでいる。そのすぐ近くに、北条を中心とした俺達のグループメンバーが全員集合していた。


「じゃあ後でな、瑠伊」

「お、おう、佑馬もがんばれよ!」


 俺はバスのおっちゃんに、着替えなどが入った学校指定のショルダーバッグを渡すと、おっちゃんはバスの側面のトランクにやや乱暴に放り込んだ。

 佑馬が俺に気を使ってくれたのかは分からないけど、俺が北条に挨拶をするとそそくさと退散してしまった。


 ちなみに佑馬は、この修学旅行でついに藤倉に告白するつもりだ。


 俺は中間テスト明けの学校の帰り道で、佑馬からその話しを聞いた。

 俺的には修学旅行前にさっさと告った方がいいんじゃね? って思ったけど、あのときの話の雰囲気じゃ佑馬に言えそうになかった。

 だけど、もしも旅行前に佑馬の告白が上手くいけば、修学旅行中は藤倉と2人きりで色々と楽しめそうな気がするし、ぎこちなかった関係から、2人の距離をぐっと近づけられる気がするんだ。

 それに万が一旅行前に振られたとしても、旅行が始まる頃にはもう済んだことだと諦(あきら)めがついて、旅行中、変に心動かさせるような事も無く、思う存分失恋旅行を満喫できる。


 けれど、この修学旅行中に告白して振られでもしろよ、きっと旅行終わるまでずっとお通夜みたいな気持のままだぜ? 振られた事がある俺が言うんだ。間違いないって。

 まぁいつ告白しようが、振られた時点でダメなんだけどな。


 というか、そもそも修学旅行で告白するってさ、いかにもロマンチストが考えそうな事で、どちらかというとリアリストな佑馬には似合わないな、って感じがするんだ。何というか、佑馬らしくない気がする。

 とはいえ、もう修学旅行は始まったし、今さら色々考えても遅いんだけどな。


 「俺に出来る事があれば協力するぜ」と、俺はあのとき確かに佑馬には言ったけど、佑馬は「全部自分1人でやらせてくれ。瑠伊は遠くから応援してくれればそれでいいから」と返されたんだよな。


 佑馬は、自分でこの恋に決着をつけるつもりなんだ……。



 佐田(さた)佑馬(ゆうま)。

 小学1年の頃からの幼なじみにして俺の悪友。俺がこれまでやってきた些細(ささい)な悪行には、いつも隣に佑馬がいて、佑馬がやってきた悪行にはいつも俺が絡(から)んでいた。

 ピンポンダッシュしたり、いたずら電話かけたり、クラスの男女1人ずつに偽のラブレターを書いて体育館裏に待ち合わせさせたり。本当にその程度のいたずら。

 あ、思い出した。その後そいつらは本当にカップルになりやがって……。ちっっくしょう、爆(は)ぜろ! バカップルめ……。


 なんだか今日は俺ダメだな。いつもと違ってどこか感傷的で悲観的な感じだ。

 身体にほとばしる鈍い痛みが俺にそうさせているのかは分からない。

 けれどまるで、痛みの1回1回が、俺の残りの命を1秒1秒削り取っていくかのようで、心臓が鼓動する度に、あるいは痛みを感じる度に、俺の心臓はあと何回鼓動するのだろうか……と、つい思ってしまった。


 あーもうやめだ。やめ。

 なにセンチメンタルになってんだよ俺。「身体がおかしい僕、可哀そうでしょ?」と、みんなに同情でもして欲しいのか? 構ってちゃんなのか俺は?

 違うだろ。

 俺は自称孤高のロックシンガーだろ?

 せっかくの修学旅行なんだから自分の葬儀を考えるような馬鹿な事はやめようぜ?

 自意識過剰かもしれないけど、俺がこんなんじゃグループのみんなも暗くなるだろ?

 ちょっとぐらい辛(つら)くてもハイテンションで行こうぜ! なぁ瑠伊。


「る……、宮川君、だいじょうぶ? ぼーっとしてるよ? 体調悪いの?」


 考え事をしていると、北条が俺の顔を覗(のぞ)きこんで心配そうに言った。


「あ……。うん、まだ気分良くなくてさ、でも大丈夫だから」

「わかった、何かあったらいつでも言ってね? 力になるからね」

「ありがとう、心配かけてごめんな」




   ◇   ◇   ◇




 集合時間が過ぎ、全クラス滞(とどこお)りなく出発準備が完了すると、バスは一路、冷たい秋風を切って新横浜駅にまで走る。


 賑わうバスの車内。

 俺はバスの真ん中辺りの窓際席で、身体中で暴れる鈍痛にじっと耐えていた。

 そして隣にはなぜか高飛車の高村様のお姿が。ご自慢のロングヘアーを手櫛(てぐし)で梳(と)きながら俺の顔をじっと見つめている。

 おっかしいなぁ……確かバスの隣は佑馬だったと思ったんだけど。


「あら、貴方(あなた)がそんな辛(つら)そうな表情をするなんて初めて見たわ」

「実際辛いしな」

「聞いたわ。調子が良くないんですってね? 無理せず休めば良かったのに……。本当1学期の頃から他人(ひと)に迷惑をかけるのが得意なのだから」

「そうそう、そういうことは大得意だぜ? てか、誰にも迷惑かけないやつなんてこの世にいないだろ? もしそんな奴がいたとしたら、そいつは誰も知らないような無人島で孤独に死ぬに決まってる」

「はぁ……。前から聞きたかったのだけど、貴方のそのねじ曲がった言い草は何なのかしら? どうしたらそんな捻(ひね)くれた言い回しができるのかしら?」

「そりゃエロい本いっぱい読んだからに決まってるだろ」


 そんな事聞かれてもわかんねーよ。

 ネットに毒されて影響されているのは自覚してるけど、まともな答えなんて無いよな。


「エ……エロ? さ、最低だわ、貴方」

「ありがとう。でも高村様も人の事言えねーよ」

「あら、私は下品な貴方とは違って至って普通よ? 真面目だし、気品があるし、それに実際可愛いし」


 平常運転だな、高村様。

 だけど高村様は俺的には「可愛い」よりは「美人」の方が当てはまると思うぞ。ランク付けするならBランクだな。

 ちなみにランクは上からS・A・B・C・D・Eの順にランク分けされる。

 てか、高村のラノベのテンプレキャラみたいな性格は、俺が中二病に毒されたのと同じように、アニメか何かに影響されたからなんだろうか? それとも素なのか……6組最大の謎(ミステリー)。


「あのなぁ、普通、自分で言うかそんなこと?」

「あら、貴方だってロックシンガーとかいつも言ってるじゃない? でも音楽の歌唱テストで聞いた貴方の歌はとてもじゃないけど聞くに堪(た)えなかったわ」

「あ、あれはだな、授業でお経みたいな歌を強引に歌わされた反抗なんだよっ」

「まぁ呆(あき)れた。貴方まるで子供ね。プロのロックシンガーを目指すって広言するなら、リクエスト曲の1つや2つぐらい言われたとおりに歌ってみせなさいよ」


 う……。


「う、うるせー! か、金払わない奴は客じゃねーんだって」

「あら、貴方はいつから客を選べる程偉くなったのかしら?」

「くっ、痛い事を……。い、今はその通りだよ高村。だがな、ロックシンガーってのはな、いつの時代でも常に挑戦しつづけないといけない存在なんだ、そしてそれは、生きているうちには決して評価されず、死んでから初めて後世で再評価されるものなんだよ!」

「はぁ……。まったく理解できないわ。まぁでも安心していいわよ? 貴方が音楽室で歌ったあのひどい歌が後世で再評価される事なんて永遠に無いもの」

「ひ、ひどいや高村様」

「でもそれが現実よ? 貴方のあの酷い歌を今でも覚えている人なんて、クラスの中ではもう私ぐらいしかいないだろうし、その私が今後あのひどい歌について誰かに得意げに語る事なんてきっと無いだろうから、この先、貴方の歌は誰にも評価されずに歴史の闇に消えることになるわ」


 ち、ちくしょう! ぺらぺらとよく口が回る女だ。そんな性格だから彼氏なんかできないんだよ!

 その平べったい胸揉むぞ!


「それよりさ、なんで高村様が俺の隣の席なの? 確か隣は佑馬だったと思うのだけど」


 散々コケにされたときのから脱出する方法。

 それは全く別の話に逸(そ)らす事だ。ほら、政治家とかがよく使ってそうだろ?


「それは佐田君に代わってくれって言われたからよ。きっと彼、貴方が思いっきり嘔吐(おうと)すると思って巻き込まれたくなかったのよ」

「さ、最低だな佑馬。てか高村様はいいのかよ? 俺がゲロ吐いても。高村様に俺の汚物が降りかかっても知らないぞ」

「平気よ」

「マ、マジかよ……」

「ええ。私、将来看護師目指しているから、貴方の嘔吐ぐらいじゃ少しも驚かないわ」


 な、なんだよ、そういう事かよ。

 てっきり「アタイ……、瑠伊くんの事が大好きだから、これぐらい平気だよっ!」ってお決まりのハーレム展開になるかと期待したのにさ。


「でも良かったわ。貴方の顔色、さっきよりは随分良くなったもの」

「あ……そういえば随分楽になった気がする」

「私のおかげかしら」

「かもな、高村様が心配してくれたおかげだよ」


 実際、いつの間にか俺の身体を苦しめていた鈍痛は嘘のように消え去り、実に快調だ。


「な、何よ、急におだてて。本当気持ち悪いわね。やっぱり貴方、家で休んでいればよかったのよ」


 め、めんどうくせぇ……。いったいどう答えたらいいんだよっ!

 そうは思いつつも、こうして高村と1対1で話したのはずいぶん久しぶりでとても楽しい。病は気からと言うけど、きっと間違っていないんだろうな……って気がした。



 やがて、バスは目的地の新横浜駅前に停まると、前の座席の生徒から順番にバスを降りて行く。そして、俺も席を立ちあがろうとすると、


「つ、辛くなったら言いなさいよね」


 と、高村は少し恥ずかしそうに俺の耳元でそっと囁(ささや)いた。

 なんだか、高村の吐息が耳にかかってすげぇエロかった……。




   ◇   ◇   ◇




 新横浜駅に降り立つと、博多(はかた)方面行の東海道新幹線へ乗り換えだ。

 新幹線の車両の一部をまるごと借り切りっているので車内には一般客はいない。


 東海道新幹線の車内の座席配置は、進行方向側を向いて左側が3席、通路、右側が2席の1列5席となっていて、誰がどの座席に座るかは事前のホームルームであらかじめ決めてある。

 別に新幹線ではグループ行動という制約はなかったので誰がどこに座ってもよかったのだけど、せっかくの修学旅行だし俺達のグループは6人一緒に固まる事にした。

 いやさぁ、元モヒカンの平沢や北条や、高村あたりが、遠まわしにそうしようって言ってくるものだからさ。


 俺達は座席番号を確認すると、3人席の片側を回転させて向かい合うように座った。

 窓際から、原田、俺、平沢の男子3人。そして対面する形で窓際から高村、北条、今井の座席順だ。


(※修学旅行のしおりの座席表より抜粋)

↑窓|今井 北条 高村|通|座席 座席|窓↑

↑窓|原田 俺  平沢|路|座席 座席|窓↑




「平沢君、貴方何いきなりスポーツ紙なんか開いてるのかしら? ものすごく邪魔なのだけど?」

「だ、だって今週末の競馬のG1が気になるんだし……」

「貴方未成年でしょ? こんな所でスポーツ紙なんか広げて昭和なの? 競馬とか馬鹿じゃないの? 頭大丈夫? なんならいい病院紹介してあげましょうか? それとも黄色い救急車でも呼んであげましょうか?」


 新幹線の車内でスポーツ新聞を広げる平沢に、高飛車な高村の小言がさっそく炸裂。それにしてもひどい言われようだな平沢。

 てかさ、旅行早々いきなり騒動とかやめてくれよ。俺、こう見えて病人なんだぜ? ストレスで喀血(かっけつ)とかしたらどうしてくれるんだよ?

 ……まぁ、とにかく止めよう。


「おい、先生に怒られるぞ平沢、今は止めとけって……ん?」



──剣《つるぎ》雪斗(ゆきと)(37)俳優引退。



 平沢が開いているスポーツ紙の一面に、でかでかとそう書かれていた。


「えっ? 剣雪斗って引退するんだ。何で?」


 俺は2人の騒動を止めようとしたが、ついうっかり呟(つぶや)いてしまった。

 あー無駄に話題振っちまった……。

 流れる外の景色を楽しんでいた今井は、俺の呟きにピクリと反応してこっちに振り向いた。


「宮川君は今朝テレビ見て無かったのですか? 今朝の芸能ニュースはこればかりでしたよ?」

「天気予報ぐらいしか見てない」

「そうなのですね、雪斗様の引退でネットもすごい事になっていて、ファンの女性がみんな悲鳴をあげていましたよ?」


 えらく食い付きがいい今井。ただのお嬢様だと思っていたのに。


「へぇー。……ところで今井ってさ、芸能界に興味あったの? そうは見えないのに」

「い、一応私も人並みには興味がありますよ? でも、雪斗様は別格なんです!」

「ふぅん。てか今井さ、さっきから『雪斗様』『雪斗様』って呼んでるけど、今井は剣雪斗のファンなの?」

「ふ、ファンだなんて、そんな……やだっ、私ったら恥ずかしいわ」


 なにその面白反応、流石にあざとくないか? 別に照(て)れるほどでもないだろ。



 剣雪斗と言えば知らない人はいないぐらい有名な俳優だ。

 全盛期の頃は、そりゃあもうすげぇイケメンで、俺の母さんなんかテレビに剣雪斗が映るともう嬉しそうにテレビに齧(かじ)りついちゃってさ。

 今はイケメンがそのまま年取ってダンディな中年になったって感じだけど、何年か前の映画『プリズム』は、原作と主演男優の二刀流で、その年の国内の映画賞を総ナメにしたんだよな。

 まったく、超イケメンで才能があるとか、本当世の中は不公平だぜ。



「あ……、いや全然恥ずかしくないって。ただちょっと意外だなって思っただけだよ。俺だってアルグロの大ファンだし」

「アルグロ? 貴方まだあんな暑苦しい奴らの事が好きだったの? 1学期の頃と全然変わらないわね。正直あり得ないわ。ついでに宮川君も」


 高村様め、話に割り込んだかと思うとアルグロと一緒に俺もディスりやがった。


「ひ、ひどい……」

「あら、ようやく自分のひどい趣味に気付いて絶望でもしたのかしら? いいのよ? 我慢せずにお泣きなさいな、見苦しく、みんなの前で、無様(ぶざま)にね」

「よ、陽子ちゃん、何もそこまで言わなくても……。あ、でも、アルグロは流石にないですよね。だって、全然知的じゃ無いですもの」


 今井のフォローと見せかけた追い打ちの一言。高村どころか今井にまでドン引きされてしまった。

 てか、なんでここまでフルボッコに言われないといけないんだよ!

 特に今井、俺は興味も無い他人の、しかも中年の元アイドル趣味をわざわざフォローしてやったんだぞ? なのになんで一緒になってドン引きするんだよ。アルグロ最高だろ!?


「ま、まぁまぁ、ア、アラグレも雪夜様も両方かっこいいよね? ね? だから別に、そんなことで喧嘩しなくても……」

「北条」「北条さん」


 俺と今井の声が被った。


「は、はい?」


 不味い事でも言ってしまったのかと、キョトンとした表情をする北条。


「アラグレじゃなくてアルグロな。『アルティメット・グロウ』」

「雪夜じゃなくて雪斗様ですよ。『剣雪斗』」


 今井と声が被(かぶ)った。


「あ……。ご、ごめんなさい」

「それに、『そんなこと』レベルじゃねーから」

「それに、『そんなこと』レベルじゃないですからね」


 また今井と声が被った。いちいち俺の真似しやがって。


「は、はい……」

「まぁ仲裁してくれようとしたのは有りがたいけどさ、知ったかぶりは一番嫌われるから気をつけろよ北条。俺たちじゃなかったらもう殴り合いになって死んでるぞ?」

「ま、まさか流石にそれはないよね?」

「めぐみちゃん、ファンの中には名前を間違えただけでナイフもって暴れるおかしな人達もいますから、宮川君の言う事はあながち間違ってはいませんよ」

「そ、そうなんだ……」


 北条ドン引き中。

 ついでに俺も今井も、たった今、北条の中でその「おかしな人達」にカテゴライズされた気がした。


「だからね、高村はただのギャンブルとしか思ってないみたいだけど、競馬っというのはね、長~い歴史ってのがあるんだよ。競馬史の中で人と馬が織りなす数々ドラマだけじゃなく、馬以外の畜産業全体の発展のために寄与していたり、あとは本当かどうかは分からないのだけど、例えばオイルショックとか戦争か何かで国内のエネルギー産業が壊滅して、自動車や鉄道が全く使えなくなった時のためのバックアップとして馬を使った輸送も考えられているなんて話もあるんだ。まぁどれも建前だとは思うけどさ、とにかく競馬っていうのは、ただのギャンブルってだけじゃなくて、日本の馬産技術の保護と継承を目的にしている側面もあって、立派に国家に貢献してるんだよ」


 俺と今井がバトルをしている横で、平沢が熱く趣味について語っていた。

 いるよなぁ、趣味の話になると途端に口が滑らかになるタイプ。


「あら随分と博識なのね、それに興味深い話だわ。でも貴方の場合、色々御託(ごたく)を並べてはいるけれど、一生馬に富を吸われ続ける家畜みたいな未来しか見えないわ」


 ひ、ひどい……。


 座席真ん中の北条が困った顔をしながら俺と今井との間を仲裁し続けている一方で、高村の興味は俺達の話題よりも、平沢が読んでいる競馬面に移っていたらしく、高村は平沢の競馬談義をつまらなそうに聞いていた。てか、何にでも首突っ込むよな、高村様は。



 それから俺は、北条と今井とで最近話題の芸能人の話をしたり、剣雪斗が出演した映画とかドラマとか、はたまたアルグロの話とか、広く浅くだらだらと色んな話をしていた。



 ちなみに原田は新幹線の座席に着くなり、すぐに眠りについて夢の中だ。


 もし半年ぐらい前の狂犬状態の原田が隣にいたら、今頃このグループの5人全員は原田の殺意のオーラに包まれ続け、京都に着くまでずっと静かに座禅でも組んで口を閉じていただろうな。




■人物紹介■(2015年8月8日追記)


佐田(さた) 佑馬(ゆうま)


 初登場:2頁(ページ)

 市立夕凪台中学3年6組。帰宅部。成績は中。

 身長:166cm 体重:58kg

 誕生日:6月10日


 涼しげな切れ長の目をした中学生。黙っていると知的に見えるかもしれない。

 瑠伊とは小学校からの幼なじみで親友、悪友、腐れ縁。登下校時はいつも一緒で、悪事を働いて先生に叱られる時もたいてい瑠伊とセット。

 快楽主義的でエロい事に興味津々だが、瑠伊とは異なり特にこれといってハマっている趣味らしい趣味は無い。

 最近は学校に盗聴器を持ってくるなど、少々危険な嗜好に傾きつつあるようだ。


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