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平凡な僕へのSOS  作者: ゆらゆらゆらり


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19/21

19強打ではなくフェイント

 体育館の2階に準備室といった感じの10畳ほどの部屋があり、そこが災害本部になっているようだ。隊長と呼ばれていた人とスーツ姿の人が数人詰めている。

 簡易で設置したのか、長テーブルが中央に寄せられ、周りに並べたパイプ椅子に腰を下ろしている。校長が席につき、僕らも促されるままに空いている椅子に腰を下ろした。

 そして、校長に指示されるままに夢で見た話を語っていった。




 隊長は勿論、初めてこの話を聞いたであろう人たちも、話の途中から半笑いで聞き流している。それでも最後まで話し続けた。


 僕が話し終えると、隊長が校長へと視線を向け、「校長。まさか、こんな話を信じているなんてことはありませんよね?」


 校長は口を真一文字に結んで考え込んでいる。いや、待っている。


 とその時、校長の胸元から音が鳴り響いた。スーツの内へと手を入れ、取りだした携帯電話を耳へと当てた。


 携帯電話を耳にし、相槌を打つ顔が険しくなっていく。眉間には深いしわが寄っている。電話を切った校長は、まるで睨むように強い視線を、隊長へと向けた。


「これはあながち、ない、とは言い切れませんよ」


 校長が電話の内容を語っていく。電話は警察からで、荒手山の東地区にある道路で地割れがあり、水が噴き出しているという。


「警察の見解は、地下水では、ということです」


 校長はノッポさんへと視線を移し、声を飛ばした。


「トシヤ。役所の災対(災害対策統括本部)に連絡して、この辺りの地殻、そうだな、最近の地震情報など確認してくれ」


 すぐに返事をして立ち上がったノッポさんが、固定電話の受話器へと手を伸ばした。


「詳しくなくていい。とにかく早急にだ」


 校長の声にうなすき、短縮ダイヤルをプッシュした。



 やりとりが交わされ、そして、「折り返し連絡してくれるそうです」


 ノッポさんが受話器を置いた後も、誰もが深刻な顔で口を閉ざしている。


 僕にとったら、そこ(荒手山の東地区)がどこなのかも分からない。だが、この様子を見れば、ことの重大さが伝わってくる。


 数分ですぐに電話のベルが鳴った。その場で待機していたノッポさんが受話器を取った。そして、何度かうなずき、言葉を返したノッポさんが受話器を置いた。


 すぐに電話の内容を全体にも聞こえるように声を張って伝えている。


 それを聞いた校長が口を開いた。


「聞いてのとおりです」見渡すように視線を巡らせ、「ここ数日、体には感じないが地震が続いているということです。しかも、東地区では地下水が噴き出している。ということは、地下で何かが起こっている。それはつまり、地表でも何が起こってもおかしくないということです」


「ですが――」


 何かを言おうとしている隊長の声を立ち切るように、校長が語気を強め、「もしも、この彼(僕)が言っていることが実際に起こり、多数の犠牲者がでたりしたら、これは大問題ですぞ。ここの誰もが〝事前〟に知っていたのですから、私やあんたらの首が飛ぶくらいじゃ、済まされませんぞ」


 ひと言ごとにボルテージが上がっていく、その迫力に誰もが飲み込まれている。


 隊長は思案するように眉間にしわを寄せ、視線を落している。そこへと校長の鋭い視線が突き刺さっている。周りの人たちの不安げな視線も隊長に向かっている。


「隊長」校長の張り上げた声に視線が上がった。「しっかりせえ! 今、この時だって何が起こるか分からんのだぞ。人を助けることこそ、君らの使命だろ!」


 隊長は唇を噛みしめ、眉間のしわはさらに深くなった。視線が僕へと向かってくる。隙間から漏れたような声が聞こえてくる。


「夢の話なんか信じられるか」


 視線は離れていく。だが、言葉とは裏腹に、何か吹っ切ったかのように隊長は声を飛ばした。


「キムラ。ただちに外回りのやつらにも連絡して、隊員全員を集めろ。避難者の安全誘導を協議する」


 ノッポさんは返事とともに、すぐに部屋から駆けだしていく。


 その姿を横目に隊長は腕を組み、自問するように呟いている。「川の氾濫の危険があるかぎり、家に帰すわけにはいかないが……となると」


 そこに校長の声が僕へと向かってきた。「公民館は確か大丈夫だと言っていましたね?」


 うなずきで応えたその時、隊長と目が合った。だが、すぐにそらされた。


 隊長は独り言つように、「そうだ。公民館は公共施設だし、多少は備蓄などもあるはずだからいいかもしれんな」


 公民館だって、ここからすぐの場所であり、荒手山の麓であることは変わらない。あくまでも、僕の夢の話なんか信じないないということなのだろう。


 そんなことなんてどうでもいい。これでみんなが助かる。これで――


 


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