同じ星の下で生まれた同志
こちらの作品には、企画の指定キーワードが使われています。
前編・後編合わせてになりますが、全てのキーワードを使っています。
◯キーワード
【結婚式場】
【ビール(他のお酒でも可)】
【自動車(種類は何でも)】
【杖】
【鉢植え(鉢だけでも可)】
【ブーツ(靴でも可)】
【鎌】
【虹】
【15時】
【電話(スマホ・ケータイも可)】
【信号機】
【シャツ(種類は何でも可)】
【色鉛筆】
◯登場人物
ショウタ 29歳
漫画・アニメ・ゲーム好き
にーさん 29歳
漫画・アニメ・ゲーム・パソコン好き
うっちー 29歳
年末に結婚予定
タカフミ 29歳
イケイケ細マッチョ
カスミ 29歳
関東のお洒落女子
僕が、君と知り合ったキッカケはそう。
よくありそうな偶然だった。あ、でも普通に日々を過ごしていたら絶対に知り合うことはなかったと思う。
毎年木枯らしが吹く季節になると、思い出すんだ。寒くて震えているのか、それとも何かを思い出して震えているのか……
あれから何年経ったんだろう。
◇ ◇ ◇
「秋になったら、たまに死にたくなるんよな〜」
そんな縁起でもないことをぼそっとつぶやいたのは、横にいる男性である。
「にーさん、何いうてんの〜! 秋になって死にたくなる人ばっかりになったら、大変やんか。生きよう生きよう」
僕はにーさんをそうやって励ます。
にーさんって歳上なのか、って感じだけど。ただのニックネームだ。
同い年というか……実際のところ生年月日も同じなんだけど、見た目が歳上っぽいということで、にーさんと呼ばれている。
「まぁ……毎年そう言いながら結局生きてるんやけどね。美味しいもん食べて、美味しい酒飲んで、なんとかモチベーション保ってるんやわ」
保ってるんかい!
そうそう、同じ生年月日の男二人がどういうシチュエーションで話してるんだろう、と思うよね。
SNSアプリで、完全紹介制のタイプ。でも実名ではなくてニックネームで登録をするんだけども、その時に付き合っていた彼女に紹介してもらって登録をしたんだ。
そのアプリは出会い系みたいなので使われてもいそうだけども、要は小学校どこに通っていたとか、どこどこ出身だとかそういうグループみたいなのがあって、各々そういうグループに参加して、他愛もないやり取りをするというものだった。
そのグループのひとつに生年月日が全く同じ人達の集まりというのがあった。
僕はリアルの友達が全くいなかったわけではないんだけど、なんとなく興味本位でその生年月日が同じグループに登録した。
あ、登録っていっても簡単に入ったり抜けたり出来るようなものだけどね。
初めはオンライン上で掲示板みたいなところで、なんでもないやり取りをみんなでしていた。
同じ生年月日の人間は、男女合わせて百人くらいいたと思う。へぇ〜! という感じ。
その中で、関東やら関西やら色々な地域に住んでいる人達がいるわけで。
僕はその時に初めてオフ会というものに参加することになる。僕は関西に住んでいたから関西でのオフ会だ。
男女含めて七人くらいだったか、その中にいたのがにーさんだったというわけ。
二十代後半という年齢だったから、それぞれ仕事もしているし、リアルの付き合いもあったりの中、たぶん気楽に話せるというのもあって、ちょくちょく仕事上がりに、にーさんと二人で飲みにいったりしていた。
僕もにーさんも、なんでも飲むけどもだいたいはビールだ。
「仕事上がりのビールはやっぱサイコーやなぁ〜! そうそう、ショーは結婚っていつするとか決めてるん?」
ショーは僕のニックネームだ。本名はショウタである。
「どしたん、にーさん。いきなり結婚の話なんかして」
「あぁ、うっちーが年末に結婚するって言ってたんよ。結婚式場どこにしよかって、旦那さんと探し中やって言うてたわ」
うっちーは女の子で、元々にーさんと仲良かった子らしい。その同じ生年月日グループでは僕は新参だったから、僕が入った時には、そういう仲良しグループみたいなのもあったのかもしれない。
「そうなんや〜、まぁ三十手前になったら女の人は結婚を意識しだすもんなんかな〜?」
「あぁ、なんか死にたくなるわ〜!」
それって口ぐせなのかな?
「あはは、まぁあれやんか。うっちーが飲みにいってくれなくなったら、僕が付き合うやんか」
「ショーもなんかそのうちすぐ結婚しそうな気がするわ……俺だけ、なんか杖ついた老人になってもずっと孤独なんやわ……」
にーさんは何かと思考がネガティブになるらしい。決して僕がポジティブってわけじゃないんだけど。
「そんなん言わんと。まぁのものも〜!」
◇ ◇ ◇
そんな感じで日常の仕事や、色々なしがらみや、僕はたまに彼女とのデートとかもありながら、日々は過ぎていた。
ある年の秋のこと。
同じ生年月日グループに元々いたのか、新しく加入したのかはよくわからないんだけど、関東に住む女の子が掲示板に書き込みをしていた。
『関西に遊びに行くから、みんなでオフ会しよ〜!』
ニックネームはカスミ。なんとなく明るい感じの書き込み内容だったと思う。
カスミが関西に来るタイミングに、僕はちょうど暇だったので、同じく暇だったにーさんと共にオフ会に参加することにした。
オフ会って言っても都合があう人だけで集まるってだけだから、凄く少人数だった。
カスミと僕とにーさん。あとはうっちーと、もう一人イケイケのタカフミという男子。五人で大阪梅田のバーで集まることになった。
カスミは親戚が関西に住んでいたみたいで、親戚と会っていてそのあとオフ会。んで、翌日の朝に関東に帰るという予定だったようだ。
僕とにーさんはその日休みだったので、15時から先に大衆酒場で飲んでいた。ただの飲んだくれである。
「カスミってどんな女の子なんやろね〜?」
そんなことを話しながら枝豆をかじりながらビールを飲む僕とにーさん。
携帯電話を見ると、掲示板の書き込みに「そろそろ行くよー」とカスミからコメントがあった。
『今、にーさんと梅田で飲んでるから、よかったらおいで』
場所と店の名前を入れて、知らせておく。
そうそう、うっちーとタカフミは仕事後だから後で合流する予定だ。
にーさんと瓶ビール三本目に差し掛かろうとした時だったかな、
「おーい! カスミだよ〜」
元気で明るい女性が僕とにーさんの前にやってきた。
紺色のダッフルコートにバーバリーのマフラーを巻き、薄茶のフレアスカート。足元はその時流行ってたのかショートブーツを履いていた。ちなみに僕とにーさんはジーパンにダウンジャケット×2である。
「わっ! カスミってめちゃ都会っ子って感じやな〜!」
カスミはまさにそんな感じで。僕やにーさんと同い年とは思えないくらい若さ溢れる女性だった。
「オフ会まであともう少しあるけど、景気づけに先に飲んじゃおっかな〜!」
ノリも良さそうである。普段全然ノリもへったくれもない僕が言うのもなんなんだけど。
「おぉおぉ、どんどん飲んで〜!」
多分なんだけど。
オンライン上で知り合う友達との飲み会って言うのが、実際のリアルの仕事の付き合いとかではなくて、気楽な気がしたんだと思う。
リアルな繋がりの人達には吐き出せない弱みだったり、夢だったり、普段に全く繋がりのない仲間だから、気楽に話せることもあったんだと思う。
僕の場合は、ちょっぴりその時付き合っていた彼女と疎遠になっていて、あまり会うこともなくなっていたのもあったのかもしれない。
「同じ星の下で生まれた仲間に、かんぱーーい!」
控え目にビールが入ったジョッキを合わせ、一緒に飲む。
「関西はやっぱいいよね〜、なんか久しぶりに来たら和むよ〜」
僕もにーさんも、急にきた都会っ子のカスミの様子にドギマギしながら、ビールを飲んだ。
「カスミって趣味とかあったりするん〜?」
あまりそれぞれのプライベートには立ち入らないような暗黙のルールがあるにはあるんだけど、直接の会話なら問題ないかなと思い、聞いてみる。
「ん〜、これってないんだけど、スノボとかかな〜?」
スノボ!! めちゃくちゃアクティブ女子じゃないか!
僕もにーさんも、漫画とアニメとゲームが好きという引きこもり男子だったので、反応に困った。
「へぇ……スノボってなんかオシャレやんね〜」
何がオシャレかわからんけど、テキトーに言う僕。
そのあと少しだけ飲んでから、オフ会の場所であるバーに三人で向かった。
梅田の駅周りはやたらと信号機が入り乱れてるので、地下道を使って移動する。都会は人も自動車も多いもんね。
梅田の東通り商店街という所があって、その飲み屋街の途中にそのバーはあった。確かタカフミがたまに利用すると言っていたような。店で直接、タカフミとうっちーとも合流した。
「ではでは、改めまして。カスミの関西来訪にかんぱーーい!!」
本日何度目の乾杯だという乾杯をする。
「カスミちゃんって、めちゃくちゃ可愛いやんね〜! モデルさんみたい!」
うっちーが言う。そう言ってるうっちーも色白で、めちゃくちゃ美人と言うわけではないにしても、可愛い部類には入ると思うんだけどな。
「みんなこうやってそれぞれ違う生活してるわけやけど、同じ年の同じ日に生まれたって、なんか凄いやんな〜」
タカフミが言う。
「うんうん、私もそう思う! これも何かの縁だし、これからもよろしくね!」
カスミがそれに言葉を返す。
◇ ◇
まぁまぁ五人ともそれなりにお酒が入ってきている。僕とにーさんは昼間からだから尚更だ。
ちなみにこの当時はバーでジンを飲むのがマイブームになっていて、ボンベイサファイアという味が美味しかったのかは分からないんだけど、そのネーミングと水色の綺麗な瓶に惹かれて、それをよく飲んでいた。
「ボンベイロックでお代わりくださーい。ライム少し絞ってくださーい」
「おっ、ショーちん、めちゃくちゃお酒強いね〜!」
カスミもだいぶ強いと思うんだけど、ウイスキーの水割りやら、なんだか色とりどりのカクテルを飲んでいた。
僕がトイレに行くために席を立った時、カスミも同じように席を立った。
「ん、どーしたん、カスミ」
僕はホロ酔いでカスミに言う。
「えへへ〜、みんなで飲むのって楽しいよねぇ〜! また一緒に行きたいよね」
カスミもまぁまぁ酔っているようだ。
カスミは背は少し小さい方で、僕と向かい合っていると、頭ひとつぶんくらいの差だった。
なんとなくなんだけど、僕はカスミの頭をぽんぽんとして言った。
「うんうん、またいつでも飲みに行こうな」
カスミが僕の方を見て、少しびっくりしていた。でも、そのあと笑顔でこう言った。
「もぉ〜! 私、そうやって頭ぽんぽんされるのに弱いんだけど〜」
そのカスミの言葉を聞いて、僕の中の何かドス黒い欲望が、鎌首をもたげたのを感じた。それはほんの一瞬のことだったんだけどね。
「ほらほら、はよトイレ行っておいで」
カスミは、何か言いたげな気がしたんだけども、結局そのままトイレに行った。
「ショー、カスミと何いちゃついとったん?」
「いっ! いや、いちゃついてへんよ。二人の酔っぱらいがフラフラしてただけやで」
タカフミの言葉に、僕の欲望が見透かされたのかと、ドキドキした。
そのあとは、次の日も仕事だったりもあって、あまり遅くまでは行かず、各々終電までに帰宅した。
カスミも親戚の家に泊まって、それから翌朝に関東に帰るとのことだった。
その後、カスミとは連絡を取ることもなく、冬が来て、そのあと春が来た。
そして、暑い夏が訪れる。またその夏も過ぎ、少し涼しい秋がやってきた。
僕がカスミが亡くなったのを聞いたのは、そんな秋のある日のことだった。




