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西の街

朝日が登った頃僕らはすでに都心部に向けて動き出していた。昨日のことを考えて魔物になった人間略して魔人との戦闘はなるべく避けることにした。ここに魔人が少なかったから良かったものの都心部に行けば行くほど数は増えていくだろうからそこで一人でも倒せば異臭によってどんどん集まってきてしまうからだ。

都市に近づけば近づくほど、魔物は多く戦闘が避けられなくなってきた。


「ルビンどうすんだ戦わないと進めないぞ」


目をつぶって頭を回転させる。このまま直進は不可能。魔王の所在はわからない。魔物も進めば進むほど強くなる。いっそここら一帯を破壊するか……いやだめだ。魔王を倒せたかわからないうえにまだ生きている人がいるかもしれない。正直思いつかない。そんな時だった。ドカンと何かが爆発した音が聞こえた。爆風と音から西側だろうか。


「音のしたところに向かおう。誰かいるかもしれない」

「それしかないか」


方向を変え走り出す。たしかカーネル連合国は東と西で宗教対立が起きていると聞いた覚えがある。

国民の殆どは生まれる場所や親によって入る宗教が決まっているらしく選択肢が与えられていない。

少し不安なところでもある。状況によっては勇者ということ自体が敵対を生むかもしれない。そのため身分を明かすのはやめ調査隊と名乗ることに決めた。爆発が起きたであろう場所には大聖堂が建てられており人の姿が見られた。


「あれ魔人じゃないよな」

「生きている人もいるみたいだ」


話を聞こうと親子に近づくと走って逃げられてしまった。すると後ろから修道服を着た男が笑顔で話しかけてきた。


「ここの人ではないですね。私が知りませんから」

「はい。レムスタンの調査員です。近くで爆発音を聞きまして」

「なるほどでは大聖堂へ案内します」


大聖堂は異常なほど綺麗で真っ白近くで爆発があったとは思えない。掃除も隅々まで行き届いている。

奥の部屋に案内され椅子に腰掛ける。男は部屋を離れしばらくすると教祖様と呼ばれている人物を連れてきた。柔和な笑みを浮かべて座ると修道服を着た男を退出させてすぐに口を開いた。


「あなた方は勇者様ですね」


男は表情を一切変えずに続けてきう言った。あなたはマロニエ様ですね。カーネル連合国でもその名は有名です。それにあなたはアサミ・バーバラ様ですね。バーバラ家には薬を作るのに薬剤のことでお世話になっていますから。もちろんお二人のことも存じておりますよ。


「そこまで知られているのなら何があったかお話してくれますか」

「勇者様が聞きたいことは何も知りません。私達のことをきっと神が守ってくれたのでしょう誰一人亡くなることはありませんでした。」

「魔王や魔物のことでなにか知りませんか」

「東側では大きな被害があったと聞いています」


それ以上有益なことは聞けなかった。しばらくこの街での滞在許可をもらえた。それにしてもこの街は外に人がいない。誰も彼も窓からこちらの様子を見ている。宿屋を探したいが看板はどこにも出ていない。

ここまで広いのに魔物の気配一切ないのも気味が悪い。


「あの場所宿屋じゃないかな」


アサミが指をさしたのはやけに派手なところだった。他の家が杉の木色なのに対して赤い装飾品が家全体に飾られていてあまり好みではないが儲けている事が伝わってくる。


「あれが宿屋か」

「ほらあの窓見てみ」


近づいて覗いてみると複数人の大人が昼間からお酒を飲んで騒いでいた。カウンターにはお酒とグラスが綺麗に並べられている。飲食店ではありそうだが宿屋なのだろうか。とにかく入ってみよう。


「すみません。宿屋を探しているんですけど」


客も店員も開いたドアに驚いた様子で目を開く。一瞬の沈黙の後大人たちは再び笑顔ではしゃぎだし、店員は笑顔で接客を始めた。


「はい。ここは宿屋ですよ。何部屋にしますか」

「二部屋でお願いします」


二部屋にしたのはこの場所で一人一部屋は不安だからだ。カーネル連合国だということもあるがあまりにも不気味だ。案内された部屋はベット2つが横に並んでいるだけでほとんどが埋まっている。外にいたときは装飾品で気が付かなかったがこの部屋に窓はない。下の人に話でも聞こうと降りるとマロエニ達が先に降りて話をしていた。


「こんな昼間からお酒を飲んでいるですか」

「あぁそうさ外を見てればわかるだろ商売したって儲からない」

「じゃあどうしてお酒をこんなに飲む余裕があるのか教えてもらえないかな」

「まぁこれ自体が仕事みたいなもんだ」

「おいやめろって」


隣の男が上機嫌な男に静止の声をかける。早速聞き出しているみたいだな。僕らは他のやつに話しかけよう。アレンにアイコンタクトを送ってカウンターに座る。


「マスター僕らにお酒をください」

「ワインかビールどっちが良い」

「今日はどんと騒ぎたい気分でねビールで頼むよ」


なれた手付きでビールを注ぐマスターにあれンが話しかける。


「あんたもここの宗教に属しているのか」

「もちろんですとも。この街にいる人は皆ルカロス教徒ですよ」

「どんな教えをといているんだ」

「そうですね。色々複雑ですが性善説を信じているくらいの認識で構いません。東の宗教マルクスとの決定的な違いですから」


それからマスターはこの2つの宗教の成り立ちを話しだした。元はカーネル連合国の国民が希望を持つために開いた一つの宗教だった。それがカーネル連合国全土に広がりやがて色々な解釈が生まれた。当時は文字ではなく言葉で伝承していくことが一般的だったために語り手によって少しずつ中身がずれていった。最初に西と東で大きく別れたのが性善説と性悪説。今になってはどちらの考えが元なのかわからない。


「教祖は神が守ったとか言ってたが神を信仰しているのか」

「……言い辛いですが」


神の信仰とは名ばかりで実際は民から税収を多く得るためで元の考えも人間の力を信じることが根幹となるものだった。あの豪華な大聖堂も税収からだと教祖を否定しているようだ。


「マスターの考え方だとこの店の装飾品は合わないですね」

「俺の趣味じゃないからな」


これで終わりだと仕事に戻ってしまった。引き上げようここは闇が深そうだ。マロニエ達にも話して僕らの部屋に集まる。二人と得た情報を交換した。マロニエは聞きたい部分を聞けなかったそうだ。飲むことが仕事それ以外はもう一人の男に邪魔されたとのこと。明日にはここを離れて東に向かうことできまった。

翌日マスターが消えた。荒らされた様子はなく、ただマスターだけが消えていた。下の階にいたのは酔っ払った男を静止した男が膝を抱きかえて端でうずくまっているだけだった。





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