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第12話:初めてのダンジョンクリア

 中ボスは狼か。パッと見て分かる巨大な狼が、部屋の真ん中で堂々と寝ている。その周囲には、先の二部屋と同じく魔物が徘徊し、数は少ないが中ボス戦の邪魔になるので、


「アサツユさんはバフをかけたら雑魚から釣ってください。ワタロットさんはバーサークなしで」


 とソフィアさんが指示を出し、盾を構えて自己バフを発動。


「了解です!」とアサツユ。俺も「オッケーです」と答えて剣を構える。


 中ボスを起こさないよう、雑魚だけを通路に誘き出す。近くはショートボウで、遠くは水魔法――氷の槍で、確実に釣るアサツユ。


 狩ること暫し。雑魚は片付き、残る中ボスはまだ寝ている。


「何か良い物、出ないかな」と呟く俺に、


「レアは期待しないほうがいいよ」とアサツユが言った。


 ソフィアさんが先頭に立ち、


「中ボスは私が釣ります。片目を潰せたら儲けもの。アサツユさんは魔法を準備して待機、口を開けたところに思い切りブチ込んで。ワタロットさんは爪に注意して足元を狙ってください」と素早く指示を飛ばした。


「でっかいのいくよー!」


「足元狙いオッケーです」


 と了解する俺たち。バフをかけ直し、ソフィアさんはクロスボウを、アサツユは氷の槍を準備する。


「行きます!」


 と号令するや、ソフィアさんの狙い澄ました一矢が巨大狼の左瞼に突き刺さった。


 目を覚まし、吼える狼。しかし、まだ飛び出すタイミングではない。


 狼は頭を激しく左右に振り、先頭のソフィアさんを片目で視認すると、大きく口を開けて威嚇し、鋭い牙で噛み付こうと襲いかかってくる。


 ――今だ!


 俺は後方から駆け出し、すれ違いざまにバスタードソードを振り抜いた。


 硬てぇ! なんとか狼の右前足を切断したが、剣を持つ手がジンジン痺れている。両手持ちじゃなきゃ弾かれてたかもしれないな、これは。


 振り向き、静かな狼を見ると、柱大の氷の槍が喉に突き刺さり口を塞いでいた。なるほど、呻き声すら出ないわけだ。足を一本失った狼は、前傾姿勢を制御できず倒れこみ……。


 そこへ走りこんだソフィアさんが盾で突撃(シールドチャージ)! 左目に突き刺さったままの矢へダイブする。脳まで矢を押し込まれた狼は全身が痙攣した後、動かなくなった。


「お疲れさまでした。二人ともグッジョブですわ」


 と立ち上がり、にっこり微笑むソフィアさんに、


「お疲れさまでした!」とアサツユと俺は声を揃えて返事した。



 最初の指示からどこまで想定内だったのか分からないが、終わってみれば瞬殺だった。なんていうか……。ソフィアさん、かっけぇ!


 これは相当修行しないとソフィアさんを守れそうにない、と思っていると、


「《良質な獣皮+》が出ましたわ」


「いきなりレアを引くとは幸先いいねー」


 とレア素材のドロップに盛り上がる二人。


「俺のビギナーズラックだな」と言うと、


「それじゃお昼はワタロットの奢りだね」とアサツユ。


「まあまあ。まずは五階のボスを倒してから分けましょう」とソフィアさん。


 レア素材が出たのはいいが、俺にはその価値がイマイチ分からない。先に生産を進めている二人に聞いてみた。


 素材の買取価格は、普通の《獣皮》は銀貨一枚。《良質な獣皮》は銀貨三枚。今出た《+》付きのレア素材は銀貨十枚になるのだとか。


 《獣皮》は加工すると今着ている革装備や硬革装備ハードレザーになるわけだが、材料に《良質な獣皮》を使うことで普通品よりも防御力の高い《良質な硬革鎧》などの良質品が作れる。


 《+》付きの素材は、熟練した職人が加工し成功すると《エルフの硬革鎧》とか《ドワーフの片手斧》といった、冠名の付いた装備が出来るそうだ。これらは単に品質が高いだけでなく、刺繍や彫刻などが施され、芸術的価値も高い。そのため、市場では材料費以上の値が付くという話だった。


 そういえば、ワンメモには、意味不明な冠名がついた装備があったのを思い出した。ここには、そういうのはないんだな。


 色んな動物型の魔物を狩っても、手に入るのは《獣皮》とか《獣肉》で共通っぽいし。


「生産はオンラインほど複雑ではないんですね」


「装備を作るだけなら、さほど難しくありませんわ。強化システムもありますから、無理にエルフ装備やドワーフ装備を手に入れなくても大丈夫です」


 強化システム。また金のかかりそうな単語が出てきた。それは後で、お金に余裕が出来たら聞くとしよう。



「じゃあ、とりあえず先に進みますか。昼飯はそれから考えるということで」


「そだね。美味しい物のために頑張ろっと、ワタロット」


「それは韻を踏んでるつもりなのか?」


 まだ一階が終わったばかりなのに先が思いやられる。「やれやれ」と心の中でため息をつきながらも、俺たちはダンジョンを五階まで狩り進んだ。


 俺の戦士職は30レベルに達し、新しいスキルも記憶されていた。成長速度増加がしっかり効いているようだ。



 途中、醜悪な豚面をした妖魔――オークや、動物型の魔物は色々な種類が出てきた。二人の経験によれば、ボスは巨大化した動物がランダムに出現するとのこと。とはいえ、動物に対しては目を狙うソフィアさんの戦術が有効だったので、苦戦をすることなく倒せた。


 猪のボスは、壁を背にして釣ると、猪突猛進してきた猪は壁に激突。脳震盪状態のうちに目を突いて決着。


 虎のボスは、俺が後ろに回り込み、足を一本ずつ切断して動きを封じ、最後はソフィアさんが目を突いて決着。


 ラスボスの狼は最初から起きて動いていたが、中ボスと同じ作戦で勝利。レア素材《良質な獣牙+》がドロップした他、クリアボーナスとして《良質な獣皮》《良質な木材》《良質な金属片》《良質な天然石原石》が一個ずつ手に入った。


 最終的な戦利品は三人合わせて次のとおり。( )内は個数。


 ・レア素材……良質な獣皮+(1)、良質な獣牙+(1)


 ・良質素材……獣皮(6)、獣牙(5)、獣角(4)、獣の肝(3)、金属片(4)、木材(1)、天然石原石(1)


 ・普通素材……獣皮(36)、獣牙(21)、獣角(19)、獣肉(27)、獣の肝(14)、金属片(20)



 合計十五部屋を狩り終え、倒した雑魚は数えていないが、二百か三百かそれ以上だと思う。普通素材のドロップ率も百パーセントではないんだな。


 ギルドの買取価格で換算すると、全部で銀貨二百三十枚ほどになる。一人あたり銀貨七十数枚で、今の宿なら一ヶ月泊まれる金額。


 休憩もはさみつつ、狩り始めてから三時間と少し経過。時刻は十時を回ったところだ。お店も開いてるだろうし、できればお昼の前に買いたい物がある。


「これを分けたら、服とか日用品の買い物に行きたいんですけど、いいですか?」


「私は別にいいよー」と言うアサツユと、ソフィアさんも、


「私も街に用事があるので、よろしければご一緒にお買い物しませんか?」


「もちろん。一人だと迷いそうなんで、ソフィアさんに案内してもらえると助かります」


「私も邪魔しに行こうかなー」


 とユリアとは違う角度から絡んでくるアサツユに新鮮さを感じる。それもあと何日か経ったら鬱陶しく感じるようになるのかもしれないけれど。


「邪魔するなら来なくていいからな。まあ、昼まで時間もあるし。皆で買い物に行こうぜ」


「賛成ですわ」となぜかハモる二人。


 ともあれ、これで買い物に行ける。先に戦利品を分けてしまおう。


 ……。

お読みいただきありがとうございます。

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