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俺のロボ  作者: 温泉卵
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時は流れて動き出す

 昔、たぶん戦国時代とかの話だろう。三日月に艱難辛苦を求めた男がいたらしい。普通に考えればおかしな奴だが、きっとそいつは人生ハードモードでもクリアできる自信があったんだろうな。

 乗り越えられるなら、壁は高い方が面白いに決まっている。

 

 ツノゼミンミンは未だかつてない強敵には違いないが、奴の攻撃はすでに見切った。

 だが、避けているだけでは勝つことはできない。


 こちらの攻撃を当てるとして、問題は相手がリンクスより素早いことだ。逃げられると追いつけない。つまり、近接戦闘に持ち込むことは不可能ということだ。


 まあ、不可能を可能にする男、それがこの俺、ザック・バランだ。

 ……いや、今のは口にしなくて良かった。ベティちゃんに聞かれたらますますハードルが上がるところだった。

 

 それもいいか? ビッグマウスは必ずしも悪いことじゃない。大口を叩いてどんどんハードルを高くして、自らを追い詰めていくスタイルもあるだろう。

 三日月に願った男も、そうだったのかもしれない。

 

 追い詰められてやっと頑張れるというのは、自己管理能力に問題があると言えなくもない。夏休みの宿題を最終日に必死でやる小学生かよ?

 だけどまあ、人間ってそんなもんだよな。


 俺はどちらかと言えば夏休みの宿題は早目に済ますタイプだったが、提出期限前日にヒイヒイ言ってた記憶もある。

 ブラック企業では、前倒しで仕事を片付けてしまうと、次々に新しい仕事が滑り込んで来たんだ。生物学的に生き残るには、絶妙のペース配分が必要だった。


 そうだな、カッコつけるのは成功してからでいいだろう。そもそも自分を飾る必要があるのか? ベティちゃんはどんな時も協力的だったし。


 勝敗なんてのは時の運だ。気負ってどうにかなるなら、熱血するのもいいだろうが、戦場で冷静さを失った奴はただのカモだ。


 自然体、平常心、明鏡止水だ。

 いや、こんなことを考えている時点で、無我の境地には程遠いんだがな。


 

 今の時点で判明しているのは、インチキくさいミンミンの超加速には、ブーストダッシュでは追いつけないということ。

 床は超ツルツルでグリップが心もとないので、超頑張って走って追いかける作戦も駄目だ。

 

 ならば、おまけバリアーを足場にして空中を走ればよくないか? ギリギリまで近づいて、一気にスパートをかけよう。

 チャンスは最初の一度きりだろうな。二度目からは、警戒して距離をとるだろうしな。


 よし、仕掛けるぞっ!!

 

 おまけバリアーを絶対座標で空中に展開し、思いっきり蹴る。同時にブーストダッシュも全開。

 失敗すると壮大にズッコケる難易度の高い技だが、俺は肝心な時にミスをするようなドジっ子ではない。

 

 一瞬だけGを軽く感じる。どうやらGの強弱は、ベティちゃんがある程度自由に変えられるようだ。

 リンクスは一気に音の壁を突破する。


 音の壁問題は、以前から悩みの種だった。パワーでゴリ押しすることもできるが、エネルギーのロスが勿体ない。

 解決策として考えたのが、おまけバリアーで作る風防だ。いろいろ試行錯誤した結果、機体前方に錐のようなノーズコーンを出現させるだけでも、かなりの効果があることがわかった。

 名付けてスリップストリームアタックだ!

 

 超音速での突撃とか、カウンターを食らえば超ヤバイ。

 そこは覚悟を決めて、飛び込むしかない。

   

 Xキャリヴァーがツノゼミンミンの胴体を貫き、駄目押しのようにビームブレードが展開するのを、俺の意識はスローモーションのように眺めている。


 ここまでは想定通りだ。

 

 いや、おかしいぞ? 手ごたえがない。これだけの速度の斬撃なら、剣にもリンクスにも相応の反動がくる筈なんだ。


 ミンミンをすり抜けてそのまま直進。みるみる壁が迫る。激突する前に、ブーストダッシュで急制動をかけてジャックナイフターン。


 奴はノーダメージじゃないか。俺が斬ったのは残像か?

 いや、これは、当たり判定そのものが発生していなかったよな。

 

 くそ、結局ゲームだったんじゃないか!! ツノゼミンミンだけでなく、この空間そのものが、全てが現実じゃなかったんだ! 一杯食わされた!!



『力は見せてもらった。そなたに相応しき剣を与えよう』

 

 中性的なマシンボイスが厳かに響き渡る。

 なるほど、テストは終了しましたってことか? 幻で騙されたのは気にくわないが、これで合格なら文句は言わないさ。さっさと剣をくれよ。


 それにしても、ミンミンはちょっと神経質な声色なんだな。総務のお局様を思い出す。

 

『我は剣の歌い手なり。記憶の断片よ甦れ、我らに道を示すのだ』

 

 あ、クラっときた。この感覚は何度も経験済みだ……また憑依するのか?

 

 やっぱり憑依だったが、ドロイドではなくリンクスそのものになってしまったようだ。

 なかなか新鮮な感覚だな、これは。


 だが、自分の意志では身動き一つできない。夢を見ている時なんかに、こんなこともあるよな。金縛りと違うのは、リンクスが勝手に動いていることだ。

 

 これは、オリジナルリンクスの過去の記憶を、夢の中で追体験させられているのだろう。説明も何もなかったのに、何故かそう思える。

 ツノゼミンミンの特殊能力なのか、それとも遺跡自体にそういった機能があるのか。どうやら銀河連邦との戦いの情報を、フラグメントから引き出そうということらしい。

 

 冷静になってよく見ると、リンクスのデザインは今とかなり違う。より生物っぽいデザインで、見た目以外にもいろいろ仕様に差があるようだ。

 遠い昔の機体にも関わらず、今のリンクスよりずっと高性能っぽいな。

 

 両手剣を手にして、どこかの宇宙を飛んでいるようだ。おそらく、これから銀河連邦に戦いを挑むところなんだろう。

 

 周囲にはスキュータムっぽい機体が併進している。遠くの方まで見渡すと、点のようなのが沢山動いている。あれが全部スキュータムか? 物凄い大軍だ。どうやら全て友軍のようだ。

 

 前方から小型円盤の群れが飛来すると、一斉にビームの応酬が始まる。ほう、あれが敵なのか。銀河連邦か?

 

 あっという間に、双方にかなりの被害が出る。

 下手糞! 下手糞!! 敵も味方もド下手糞だ!! どいつもこいつも、何故避けようとしない? 初心者かよ?

 

 ダメージを負ったスキュータムは、次々にログアウトしていく。いや、ゲームじゃないなら、転移で離脱したのか? どっちにしろ、やられても逃げる手段はあるみたいだな。

 

 両手剣しか持っていないリンクスは、まったく戦闘に参加できないでいる。宇宙では、剣は役に立たないかもしれない。

 

 敵円盤の来襲は、五月雨式にダラダラ続き、味方はどんどん減っていく。


 やがて、超巨大な宇宙要塞みたいなのが見えてきた。

 人工物であるのはわかるが、結構いびつな形をしている。まるで宇宙に浮かぶクロワッサンだ。


 スケール感がいまいちわからんので、そんなに大きくはないだろうと思っていたら、近づくと超でかかった。

 視野角一杯に広がっても、まだかなり距離がある。小惑星クラスか? まあ、月よりかは小さいんじゃないかな。

 SFの世界には地球より大きな宇宙要塞だってゴロゴロ登場するし、この程度では驚かないさ。

 

 サイズの割には火力は全然たいしたことない、砲座の数が少ないんだろう。時折、思い出したようにごん太ビームを撃ち上げてくるだけだ。

 シューティングゲームならヌル過ぎだとクレームが来るレベルだ。

 

 まあ、キングサイズのビームに薙ぎ払われて、スキュータムが一度にごっそりやられていくけどな。

 回避しないのが悪い。

 

 なんとか宇宙要塞にとりついた時には、周囲に味方はいなくなっていた。

 いや、離れた場所に降りた奴らもいるんだろうが、とにかくバカでかい相手だからな。合流するのは難しいだろうな。

 

 要塞の外殻は小山程ある鱗で覆われている。鱗の継ぎ目に開口部があるので、侵入は簡単なようだ。

 一応クワガタみたいな大顎のついた芋虫が、番兵をしている。銀河連邦軍の陸戦兵器かな? 見た目は中ボスっぽいのに、見掛け倒しで超弱い。カニメカと比べても数段格下だな。

 リンクスが両手剣で楽々倒していく。こいつ、剣の腕はまあそこそこみたいだな。それにしても、敵が弱過ぎる。

 

 驚いたことに、内部にはジャングルに覆われた地表が広がっていた。ところどころに立っている巨大な石柱が、天井を支えている。

 

 リンクスは天井から地表へと降下していく。


 石柱付近には砲座が配置されていて、ビームが飛んで来る。

 リンクスは避けようともしないので、たまに当たる。馬鹿なのかコイツは! せめて切り払えよ。

 ああ、イライラするなあ。俺にコントロールを回せよ!!

 

 ジャングルの木々の下に着地すると、攻撃されなくなった。敵は植物を大事にしているようだな。


 ボロボロになったオリジナルリンクスは、木の陰にしゃがみ込んで動かなくなった。どうやら、自己修復能力で回復してから進むようだ。

 

 修復スピードも今のリンクスより上のようだが、それでも数時間動かずじっとしている。俺は超退屈だが、待つことしかできない。


 全回復したら、再び動き出す。


 ジャングルに覆われてはいるが、ここの地表も巨大な鱗で覆われている。継ぎ目の部分にはやはり開口部があり、ここもクワガタワームが防衛している。相変わらず超弱い奴らだ。

 

 地下に抜けたつもりが、またまた天井に出る。で、眼下にはやはりジャングルが広がっている……エンドレスかよ。

 

 どうやら、この宇宙要塞は外見だけじゃなく、内部構造までクロワッサンに似ているようだ。

 無数の階層区画が積み重なって構成されているわけだな。ミルフィーユ型ダンジョンとでも名付けようか。


 要塞のサイズから考えると、何千層、何万層あってもおかしくない。やはり深い階層程、出てくる敵は強くなるんだろうか?

 

 三階層目で少し変化があった。コブのように膨らんでいる石柱を発見、どうやらリアクターのようだ。あれがオリジナルリンクスの攻撃目標らしい。

 メインリアクターは、絶対もっと深い階層にあると思うんだけどな。

 

 剣を構えて突撃するリンクス。コブの周囲の砲座からイマイチやる気のない攻撃が飛んで来る。

 避けようともせず突き進む、それでもあまり当たらないのは敵が下手糞過ぎるからだ。奴ら、見越し射撃を知らんのか?

 

 何発かビームを食らったが、直撃はなかった。リアクターにたどり着き、両手剣を突き立てる。

 おいおい、リアクターは壊したら即離脱が鉄則なんだがな。でないと爆発に巻き込まれるぞ。

 

 案の定、閃光に飲み込まれ四散するオリジナルリンクス。


 転移は間に合わなかった。かろうじて記憶の欠片だけがワープして、故郷の星にたどり着いたようだな。それがフラグメントクリスタルってことか。

 

 オチがついたところで上映終了。自分の肉体に戻る。

 

 

「……もうどこからツッコんでいいやら。お前らもっと真面目に戦争しろよな」


 オリジナルリンクスだって、あれでも精一杯頑張ったんだろう。それはわかる、わかるんだが、あーもうとにかくじれったい。俺の言いたいこともわかれよな。

 

『クラゲ好きどもの戦列艦の三階層まで突入し、リアクター破壊に成功。大戦果ではないか』


「いやいや。どうせならもっと深く潜って、メインリアクターを狙わなきゃ意味ないだろう」

 

 オリジナルリンクスが差し違えたのは、おそらくあの宇宙要塞に何万とある、いわば予備電源のようなものだろう。あんなもの一つを破壊しても、敵はちっとも困らないぞ。

 せめてバックダッシュで、リアクターの爆発に巻き込まれないようにしろよ。

 ミンミンに言っても仕方ないことか、ううむ。

 オリジナルリンクスも、黙ってないで何か言えよ? あ、ベティちゃんと融合したんだっけ?


『後からなら何とでも言えるのである。散華していった戦士への侮辱は許さぬぞ』

 

「戦士の名誉大いに結構。だがな、戦争は勝たなきゃ意味がないんだよ。失敗から戦訓を学べよ」 


『ふむ、恐ろしい考え方をする奴よのう。地球人か……宇宙最強の戦闘民族ではないのか? その力を恐れたクラゲ好きどもが、母星ごと消去したという、あの伝説の……』

 

「そういうのはマンガの話だな。なんであんたが知ってるんだ?」

 

 だいたい、宇宙クラゲを愛でる者って何者だよ? 銀河連邦の蔑称だろうということは、なんとなく想像がつくが。

 あれだろ、フランス人をカエル喰いと呼ぶみたいなものだ。中華料理のカエルは美味かったけどな。

 

『伝説は真であったか。宇宙最強の戦士に我が剣を授けよう』

 

 こいつ、人の話を聞いちゃいねえ。まあ、剣が貰えるなら別にいいか。

 どうやら最初の一本は本物をくれるようだ。複製には大量のマテリアルを消費するので、これは助かる。

 

「念願の真・Xキャリヴァーを手に入れたぞ」

 

『違うぞ。その剣は銀河切り裂くシロガネの……』

 

『真・Xキャリヴァーでいいんです』

 

 ベティちゃんまでツッコミに加わる。AIが二人で喋ると姦しいな。


 だいたい、こいつらAIの癖にネーミングに拘り過ぎだろう。名前はカッコイイに越したことはないが、シンプルで呼び易いことも重要なんだぞ。もう、真・Xでよくないか?

 

 真・Xキャリヴァーの攻撃力は、ベティちゃんに見せてもらったカタログスペックより上だった。耐久はやはりイマイチだけどな。

 刀身全体をオーラのようなものが纏っているが、ビームブレードは発生しないのか。そうなるとリーチはXキャリヴァーより短いな。

 

「リアクターを破壊するのなら、リーチを伸ばせる仕様がいいと思うがな。ああ、剣ごと飛ばせばいいのか」

 

『ビームブレードは伸ばせますよ。エネルギー消費が激しいので一瞬だけですが』

 

『剣の舞は常人には使いこなせぬ。技の欠片を授けるゆえ、まずはこの小剣で訓練するがよい』

 

 AIがステレオで囁くので、もう訳がわからん。俺は聖徳太子じゃないぞ。

 

 どうやらあの剣を飛び回らせる技を、ミンミンは剣の舞と呼んでいるようだ。

 剣の舞の制御プログラムが入ったフラグメントと、練習用のダガーを気前良くくれた。こいつって態度は偉そうだが、いろいろくれるからいい奴だな。

 

 プログラムをインストールしたものの、飛ばし方は特殊で、ベティちゃんではどうにもならないらしい。

 ミンミンは操作するものではないというが、そんな代物をどうやって操作するんだ? 禅問答だな。

 

 念動力? サイコキネシスって奴か? どうにも胡散臭いが、ドロイドに憑依とかできる時点でいろいろおかしいんだし、観念するしかない。

 

 とりあえずダガーでお手玉をしてみる。練習用なので攻撃力ゼロみたいだから、失敗しても安全だ。


 このダガーが空を自由に飛ぶんだよな? 飛び回る剣をさんざん回避していたから、なんとなくやり方はわかる気はするんだがなあ。


 あれだろ? 縁みたいな紐でピューって繋ぐんだろ? 縁を結ぶ……縁結びか。

 縁結びの神社なら知ってるし、縁切り寺も知ってるな。そういうのとは違う気がするんだが、とにかく神秘の力が必要みたいだ。

 

 お手玉しているうちに、ダガーが妙な方向へすっ飛んで行く怪現象が起き始める。

 うん、これがサイコキネシスじゃないか? 


 一度コツを掴んでしまえば、そう難しいことでもない。すぐに飛ばすだけならなんとかなるようになった。

 むしろ、ピタリと空中に静止させるのがなかなか難しい。

 

『さすがは伝説の地球人、筋は悪くないようであるな。使いこなせれば、腕の数だけ剣を操れるようになる』

 

 リンクスだと二本までってことか? いや、保持するには腕が足りないってだけで、飛ばしてしまえばそんなの関係ないね。


 負けてたまるか。俺だって六本くらいなんとかなるさ。

 

 さっそく、ダガーを複製して増やす。練習用の装備だからなのか、必要マテリアルは超少ない。

 

 二本飛ばすくらい余裕だ。そこからさらに一本ずつ増やしていって……やはり六本操れるじゃないか。

 

『あり得ない……』

 

 ミンミンは悔しそうだな。自分にしかできないと思っていたか?

 

「ヒトマネだったらサルにもできる。師匠を超えてこそ、一人前のホモサピエンスなんだよ」

 

 キメ台詞を言ったつもりだったが、地球のことをよく知らないミンミンには難しかったかな。

 ベティちゃんも沈黙している。はあ、今のはなかったことにしようか。


 七本目、未知の領域へ踏み込む。やはりイメージしづらいせいで、急にコントロールが乱れる。

 これが、パイオニアだけが知る、生みの苦しみって奴だ。

 大丈夫だ。俺の前に道はなくても、俺の後に道ができるんだ。

 

 まあ、でも、七本目はあくまで六本目の延長線上にあるテクニックだ。一本増やすだけだし、そこまで大層なものでもないと思うんだ。

 慣れだよ、慣れ。こんなものは慣れと気合いだ。

 

 なんか頭の中でピキーンと効果音が鳴り響いたり、光の鳥が飛び交ったりしまくっている。こういう感覚にも慣れてきたなあ。

 そんなこんなで、なんとか七本同時にコントロールできるようになった。

 

 かなり疲れたが、それ以上に脳のテンションがやたら上がっている。今だったら裸で空だって飛べるさ。


 ハイテンションに任せて十本同時に操ってしまう。なあに、これくらい、プロのピアニストの方が、余程凄いことやってるって。地球人類の限界を、舐めたらいかんぜよ。

 

 これ以上増やすのは、さすがに今は無理だ。こういうのは気の持ちようだから、やはり大台を超すと厳しいよな。株価みたいなもので、精神的な壁が立ちはだかる。


 テンションが急激に下がり、一気に反動が来る。脳が、脳が痛い。

 


 とりあえずは、十本も操れれば十分だ。

 実戦で使うには、まだまだ試行錯誤が必要だろう。工夫次第で、中距離の戦いに幅が広がりそうだな。

 

「あ、そうだ。盾みたいな剣はないかな? この技は攻撃だけじゃなく防御にも使えそうなんだが」


 飛び回る剣で次々に攻撃をはじくとか、カッコイイじゃないか。

 

『……剣は、盾ではない』

 

 ミンミンが、なんか元気がない。さっきまでの偉そうな態度が半減してるな。そんなに盾が嫌いなのかな? 


 やはり剣はオフェンスのためだという固定概念に捕らわれているのだろう。

 ディフェンスでもわりといいよ? カッコイイは正義だしな。


 実物を見せた方が早いな。インベントリからクラッシャーソードを取り出す。

 

『なんだこの剣は? 確かに盾のような剣ではあるが……』

 

 興味は持ってくれたようだ。複製できるということなので、さらに防御力特化でお願いしてみる。

 

 他にもいろいろ注文をつけているうちにちょっとキレられたけれど、マテリアルを大量に渡すと機嫌を直してくれた。

 マテリアルは万能じゃないか。またカニメカを乱獲したくなってきたな。

 真・Xキャリヴァーを十本セットで使うには、今あるマテリアルだけだとちょっと足りないしな。

 

 いや、欲張っていないでさっさと地球に帰ろうか。次は転移用のプログラムを手に入れるんだったよな。それでミッションコンプリートだ。爺さんの手料理が俺を待っている。

 

 そういえば、オリジナルリンクスは転移で逃げるのに失敗して、フラグメントだけ回収されたんだったな。

 そもそも、フラグメントクリスタルって、何なんだろうな? 残留思念? 幽霊みたいなものかな?

 AIだから、破損したデータの断片ってことになるのか?

 フラグメント……カケラと言うだけあって、データの大部分が欠落してしまっているようだ。こいつが転移プログラムをちゃんと覚えていれば、余計な手間はかからなかったんじゃないか。


 寄り道したおかげで新技もできたことだし、まあいいか。

 技の名前とか、いろいろ考えないとな。

 

 

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