第68話:『マツボックリ・ショック。 ―公園の拾い主(マイナー)、次世代通貨を掘り当てる―』
ドングリ時代の終焉と、マツボックリ仮想通貨の夜明け。
複雑な構造を持つマツボックリは、パパのデバッグによって「絶対に改ざんできない物理通貨」へと昇華されました。
公園で必死に拾う大人たちを出し抜き、リィナはチート級のマイニングを披露。
しかし、お母さんにとっては、どんな高価な資産も「しっかり干して管理するもの」でしかありませんでした。
「……あーあ、ドングリ相場、完全に死んだわね」
リィナはスマホのチャートを見ながら溜息をついた。
あまりにお母さんとパパが庭でドングリを「増産」しすぎたせいで、ドングリの価値はハイパーインフレを起こし、今や「ステーキ1枚=ドングリ2トン」という、もはや持ち運び不可能なレベルにまで暴落していた。
代わって闇市で取引され始めたのが、希少価値の高い『マツボックリ』である。
「……パパ。マツボックリ、今1個で家が建つらしいわよ」
『リィナ。……マツボックリはその「ハッシュ構造(傘の重なり)」が複雑だから、偽造が難しいんだ。……(印:ブロックチェーン化)×(印:自然界の暗号)。……よし。今、近所の公園にある松の木が、世界最大の中央銀行になったよ』
「よし、リィナ! 公園にマイニング(拾い)に行くわよ! 晩ごはんをランクアップさせるわ!」
お母さんが「業務用ゴミ袋」という名のウォレットを手に立ち上がった。
公園に着くと、そこにはスーツ姿の証券マンたちが、血走った目で地面を這いつくばっていた。
「あった! マツボックリだ! これで借金が返せ――」
「待て、それは俺が先に目をつけた……!」
殺気立つ大人たちを横目に、リィナはベンチに座って指を鳴らした。
(印:重力操作)×(印:自動追尾)×(投げ銭:松の木への栄養剤)。
「――【全自動マイニング:フォールアウト】」
パチン、と音がした瞬間。
公園中の松の木が激しく揺れ、極上のマツボックリだけが、意思を持っているかのようにリィナのゴミ袋へと吸い込まれていった。
「ひ、卑怯だぞ! どんなツールを使っているんだ!?」
驚愕する投資家たち。
「……ツールっていうか、……実家が創造主と最強主婦なだけなんだけど」
リィナが袋いっぱいのマツボックリ(銀河系3つ分に相当する資産)を肩に担いで帰ろうとすると、お母さんが落ちていた「まだ開いていないマツボックリ」を拾って厳しく言った。
「リィナ! これはまだ『未決済(開いてない)』じゃない! ちゃんと乾燥させてから換金しなさい!」
九条家のベランダは、その日のうちに「時価総額数京円」のマツボックリ干し場で埋め尽くされた。
第68話、ありがとうございました!
マツボックリの傘を「ハッシュ構造」と言い切るパパの理論(笑)。
ベランダに数京円が干してある光景は、シュールを通り越して神々しいですね。




