第35話:『運営、涙の公式謝罪。 ―「もう好きにしてください」―』
ついに運営が完全降伏。
彼らが恐れたのはリィナの力だけでなく、パパによる「効率的な支配」と、お母さんの「圧倒的な生活感」でした。
神の権限すらも「パパのPCのフォルダ」の一つに収まってしまった今、この世界はもはや誰にも止められない九条家の箱庭となったのです。
「……ちょっと、誰か来たわよ。パパ、名刺交換してきて」
リィナがソファでポテトチップスを食べていると、空中要塞のゲートに白い旗を掲げた集団が現れた。
かつてリィナを「削除」しようと躍起になっていた、あの運営チームの生き残りたちである。彼らは全員、目の下にひどいクマを作り、魂が抜けたような顔をしていた。
「……あ、あの。九条リィナ様。および、ご両親様……」
リーダー格の男が、リィナのパパの前に進み出て、深々と頭を下げた。
「お願いです……もう止めてください。これ以上、異世界に『KPI(重要業績評価指標)』や『四半期報告』を持ち込まないでください! パパ様が作成したExcel(魔力計算シート)のせいで、メインサーバーが過呼吸を起こして爆発寸前なんです!」
パパは眼鏡を指で押し上げ、冷徹な視線を向けた。
「おや。私は単に、神々の労働リソースを可視化しただけですよ? 運営の皆さんも、残業続きで大変でしょう。どうです、我が要塞の『完全週休二日制(ただし魔力は100倍納品)』の管理下に入りませんか?」
「ヒィッ!? ……お、お断りします! 我々はただ、この世界を『返して』ほしいだけなんです! あなたたちのせいで、ゲームのジャンルが『ファンタジー』から『超過酷な経営シミュレーション』に変わってしまった!」
運営はリィナの足元に縋り付いた。
「リィナさん! あなたをバグ扱いしたことは謝ります! 伝説の武器も、課金石も、全部差し上げます! だからお願いだ、その恐ろしいご両親を連れて、現実世界へ帰ってください!」
リィナはお母さんを見た。お母さんは特売の卵を冷蔵庫に詰めながら言った。
「あら、何言ってるの。こっちはWi-Fiも通ってるし、冷暖房完備。それにこのサトウさん、お掃除がとっても上手なのよ。引っ越すなんて面倒だわ」
「そうですよ」リィナもニヤリと笑う。「私、この『0.1秒』の永遠を気に入ってるの。……ねえ、運営さん。一つだけ『掛け算』を教えてあげる。(運営の絶望)×(私の家族の団らん)。――はい、これで世界のサーバーは、私のパパのPCに同期完了」
「そんな……!? 世界の全権限が、一介のサラリーマンのデスクトップに……!!」
運営たちはその場に崩れ落ち、白旗を振りながら泡を吹いて倒れた。
運営が「世界を返して」と泣きつく展開、皮肉が効いていて最高です(笑)。
パパのExcel管理がサーバーを焼き切るという、現代社会の闇を感じさせる無双っぷり。
これで物理的にも、法的(?)にも、リィナたちの勝利が確定しました。




