第36話:『自由研究の終焉。 ―神々と魔王、ドリルに敗北する―』
世界を統べる九条家の次なるミッションは、リィナの「夏休みの宿題」。
しかし、異世界の常識で日本のドリルを解こうとした結果、算数は魔法理論に、理科は創世記に書き換えられてしまいます。
知能指数カンストの神々ですら、「A君とB君の不可解な行動」には勝てませんでした。
「……リィナ。世界の全権限を握ったのはいいけれど、これ、どうするつもり?」
お母さんがリビング(空中要塞の指令室)のテーブルに置いたのは、薄汚れた青いファイル――『夏休みの宿題セット』だった。
運営を屈服させ、パパが世界のKPIを管理しても、この「紙の束」だけは厳然としてリィナの前に立ちはだかっていた。
「……計算ドリルに、漢字練習、そして自由研究。……パパ、これ『掛け算』で消せない?」
「リィナ、それはダメだ。偽造はコンプライアンス違反だし、何より『教育』のプロセスを飛ばすと、将来のキャリア形成に……」
パパの正論を無視し、リィナは背後に控える「異世界最強チーム」を指差した。
「あんたたち。神様と魔王なんだから、これくらい秒で終わるわよね? サトウ、あんたは算数。テラ、あんたは理科と自由研究。アルヴィスは……字が綺麗そうだから漢字ね」
「「「御意にございます!!」」」
数分後。
そこには、かつてないほど真剣な表情で鉛筆を握る、世界の理たちがいた。
「……ぬ、ぬぅ。この『15km離れた地点から向かい合って出発するA君とB君』……。なぜ出会う直前に魔法を使わんのだ!? 非効率すぎて計算式が爆発する!」
サトウ(元魔王)が、算数の文章題の非論理性に暗黒魔力を暴走させている。
「リィナ様……この『アサガオの観察日記』ですが、私が少し加護を与えたら、一瞬で宇宙樹まで成長してしまいました……。これ、提出しても大丈夫ですか?」
テラ(元・神様)が、校舎より巨大になった植木鉢を抱えて震えている。
「主よ……漢字の『鬱』という字に、呪詛が18層ほど込められているように見えます。書くたびに周囲の生命力が吸い取られますが、これが日本の教育なのですか?」
アルヴィス(処刑卿)が、血のような達筆でドリルを埋めていく。
リィナはそれを見ながら、冷めた目でパフェを口に運んだ。
「……最強の連中が集まって、中2の宿題に手こずるとか、この世界のレベルデザイン、どうなってんのよ」
結局、一晩かけて完成したのは、「提出した瞬間に学校が異次元に消滅しそうな」物理法則無視の宿題セットだった。
算数の文章題にマジレスする魔王、最高にシュールですね(笑)。
アサガオを宇宙樹にしてしまう神様の自由研究……先生が見たら気絶どころでは済みません。
リィナの周辺は、平和になればなるほど「別の意味でのバグ」が加速していきます。




