30 畑作り編④ 畑拡張!
道作りが進む一方で、食料の確保も欠かせなかった。
サラとフレイアは畑の拡張作業をしていた。
肥料を混ぜつつ、クワとスコップで畝を作っていく。
手伝うつもりなのか、ミィがせっせと種を運んでいる。
「おおーい。道の方は一段落ついたから、こっち見にきたわー。どんな様子らね」
「リタ。こんな感じなんだが、どうだ? いつも監視する側だったから、作る方にまわると勝手が違うな」
フレイアが手を広げて畑を示す。
見るからに柔らかそうでいい畑になっている。
「二人ががんばってくれた甲斐があるねぇ。ええ野菜が育ちそうらわ」
リタの太鼓判をもらってサラは嬉しそうだ。
「はっはっは。あたしも伊達に何年も畑の刑務をしてないさ。先日ヨイ様から送られてきた種を植えよう」
「どれどれ」
袋を開けてみたら、たしかにグレアス王国では流通していない野菜の種だ。
リタは見たことがある気がして記憶を辿り、思い至る。
袋に添えられた手紙には、カボチャという名前の暖かく乾燥した環境で育つ硬質な野菜です。と書いてある。
「カボチャか。ええなぁ。長期保存がきくしうまいし、おれは好きらよ」
「そうか。美味しい野菜なのか。それは楽しみだな」
種を植えつけていると、そりを引いたぴーたんがやってきた。そりにはルーシーとミィ、ムー、水をくんだバケツが乗っている。
『くっくっく。このゼルフェイン・オロゴン・ヨーゼフがそなたたちか弱き眷属のために水を用意してやったぞ。ありがたく思うんだな』
なんとも居丈高なセリフだが、やっていることは犬ぞりである。
リタはソリからバケツをおろしてじょうろに水を汲む。
「ぴーたんは相変わらずらなぁ。水はありがたく使わせてもらうよ」
「ルーシーも水やりのお手伝いをします」
「助かるよ、ルーシー。今日はフレイアとサラが料理当番らろ。おれとルーシーで水遣りしとくすけ、先に戻っていなせ」
「ありがとうリタ、ルーシー。そうさせてもらうわ」
サラとフレイアが先に帰り、リタとルーシーは手分けして畑の水やりをする。
ミィもコップ一杯くらいなら運べるから、ちょこまか動いて水やりを手伝ってくれる。
良質な肥料のおかげで野菜は日に日に大きくなっていて、青々した葉を茂らせる。
とくにトマトとコーンは収穫間近。
「トマトとコーンを食べるのが楽しみらな」
「はいです!」
「料理する前に、我にも分け前をくれ。畑仕事に貢献しているだろう」
ぴーたんがフンフン鼻を鳴らす。
ぴーたんのうんちは肥料になっているし、毎日こうして各所のお手伝いをしてくれているのだから、食べる権利はある。
「ええよぉ。ぴーたん用に何か作ろうかね」
「その言葉、しかと聞き届けた! 忘れるでないぞ!!」
「もちろん。うまいもん作るわ」
それから収穫までの数日、ぴーたんがいつも以上に張り切ったのは言うまでもない。





