31 畑作り編⑤ コーンの収穫!
本日のリタの仕事は畑の手入れ。
早朝の水やりを終えてから、剪定鋏を片手に野菜の余分な枝を落としていた。
麦わら帽子越しに空を見上げて、畑を見回す。
「フッフッフ。こうせばでっけえ実になるなぁ」
容赦なくバサバサ枝を落として、トマトのまわりは切った枝でいっぱいになる。
「リタ、どうしてこんなにたくさん切ってしまうのです?」
ルーシーが、不思議そうな顔をしてそこら辺に散らばる枝を拾いあげる。
「実に栄養を行きわたらせるためらよ。ほれ、この実の付いていない枝も栄養を取ってしまうからな、この枝が取る分の栄養も実にまわるようになるんらよ」
「なるほどー! ルーシーもお手伝いします。見分けるコツを教えてほしいのです」
「ええよー。まずは実の付いていないものを──」
リタからレクチャーをうけたルーシーも一緒に枝を切り、支柱が傾いたものは刺し直してきっちり結びつける。
集めた枝はぴーたん用のごはん桶に並べた。
枝がけっこう美味しいらしく、ぴーたんは嬉々としてむさぼる。
『クックック。このトマトの葉とやらは、ゼルフェインがこれまで食してきた葉の中でもとりわけ美味い』
「なんでらろっかね? 肥料で育っとるから葉も栄養満点なんかね。雑草よりは栄養を吸っとるんは確からわ」
とりあえず収穫できるようになったコーンも一つ剥いて、ぴーたんのご飯として提供する。
ぴーたんはシャクシャクいい音を立てながらコーンを秒速の勢いで食べる。
『ぬぬぬ! このコーンとやら、甘くてうまいぞおおおおおお!! 小娘よ、もっと我によこすのだ!』
「そんなにうまいけ。育てた甲斐があるねぇ。領主様も喜んでくれるろ」
リタも剥いたコーンを一つ、半分に折ってルーシーと分けて食べる。
「うん、うめぇわ!」
「わぁ! シャキシャキして美味しいですーー! 畑一面コーンでもいいくらいです!」
もともと草食系の種族なので、ルーシーもコーンをいたく気に入った。
「この株のぶんは収穫しても良さげらっけ、みんなで食べようて」
「わーい!」
リタは早速厨房で塩ゆでして、昼食のオトモとして道路建設組の方に運んだ。
エーデルフリートとゴードンは豪快にかぶりつく。ものを食べられないけど、ミィもエーデルフリートの肩でコーンの粒を食べるふりをしてぴょこぴょこ跳ねている。
「へー。俺の国にコーンポタージュとかあったけど、採れたてのコーンってこんな感じなんだ。うまー!」
「ほほう。塩味だけでもうまいな」
シンディとエリオットは端から親指でそいで少しずつ食べる。
「自然の甘みで美味しいわねぇ」
「あぁ。美味しいな。領主様に渡すのが楽しみだ」
サラもフレイアも採れたてのコーン舌鼓を打ち、味に感動する。
「美味しいねぇ」
「監獄島でも育てていたが、それより甘みが強くて美味しい気がする」
みんなの評価は満場一致で美味しい。自分たちで育てたから感慨も深い。
「おれも野菜が美味しく育って嬉しいわ。夕飯のスープに入れようかね」
「リタ、リタ! ルーシーもスープ作ります。にんじんもたくさん入れましょう!」
「そうらな。ルーシーはスープが大好きらねぇ」
スープを食べることができないムーはリタの足によじ登って抗議している。
「みゃおーー! にぁー!」
「はいはい。ムーには焼き魚を用意するすけな」
「にゃー、なーーー」
休憩を終えて道路の先端からあたりを見渡せば、丘の下に海が見えている。ただの獣道だった場所が、もうすぐ一本の道路でつながる。
この島に流れ着いた日には想像もつかなかった光景だ。
リタは両手を広げて笑う。
「来月には完成しそうらな。道ができたら荷物の輸送も楽になるし、楽しみらわ」
シンディも初期メンバーだから、島の変わっていく様子を見て懐かしそうに目を細める。
「本当に、ここに来た日が嘘みたいね。道が完成したら自分たちにご褒美を用意したいわ。領主様も、報酬を用意すると仰っていたし」
「俺、娯楽が欲しいってお願いした! トランプかチェス。雨の日って何もできないからさ」
エーデルフリートは得意げにブイサインをする。
「パーティーゲームを選ぶあたりデルらしいわねぇ」
「ルーシーは雨の日でも物干しできるサンルームがほしいとお願いしました!」
ルーシーのお願いはかなり現実的だ。この島にも雨季はあるし、雨が降っても洗濯を干せる場所があるなら助かる。
「シンディは何かお願いしてるかね?」
「魔導書をお願いしたわ。デルの呪いを解くのに役立つ情報が載っているといいわね。あとはエリオットの勉強にもなるし」
「呪いを解くための魔導書を頼むのがデル本人でなくシンディ……」
呪われている本人であるエーデルフリートはカードゲームやチェスを所望している。
みんなの視線が集まり、エーデルフリートはバツが悪そうに視線をそらした。





