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act.109 その頃のモニカ②

 拳大程の巨大な魔石。だが、モニカには見覚えがあった。

 それは場末の魔石店で異彩を放っていたが、精々部屋の賑やかし程度の質で、中身に釣り合わない高価な代物だった。

 ライムントは、今のモニカの財政状況では手が出せない「高嶺の花」を自分が贈ることで恩を売ろうとしたのだろう。それは、とんだ勘違いだった。


「施しはいらないわ。どうしてそこまで私に構うの?」

「それは勿論、モニカ。君が好きだからだよ」


 彼は何を持って私を好きだと言うのか。ハイデンライヒの名だろうか。

「言っておくけど、私、ハイデンライヒの名は捨てたの。今はただのモニカ。それでも貴方は同じことが言えるの?」


 興味のない人間からの好意ほど、気持ち悪いものはない。騎士団の力が得られないとしても、きっぱりと決別したい気持ちが勝った。


「な、何を言っているんだいモニカ?」

 狼狽するライムントを置いて、モニカは清々しい心持ちでその場を後にした。


 それから数件の店を巡り、食料を予定の倍買い揃える。馬は一頭しか借りられなかったが、荷運びは何とかなるだろう。


「はぁ……さて……」

 エルフリーデとヴィクトリアが待つ宿の前に戻ると、再び溜息が漏れた。徒歩での旅を告げれば、エルフリーデは絶望するだろう。

「いや、しつこいライムントが悪いんだわ。なるようになれ、ね」


◇◇◇


「なんじゃと!? ライムントの力は借りられないかもしれないじゃと!?」

「シーッ!」

 憤然とするヴィクトリアを静め、モニカは先程の一件を話した。

「モニカの気持ちもわからんでもない。わらわもあやつは嫌いじゃ。妾だったら、すでに数発殴っておるじゃろうな」


 ヴィクトリアの過激な同意に、モニカは胸をなで下ろした。

「ありがとうヴィクトリア……エルフリーデにどう言えばいいか悩んでたの」

「馬を借りられたのなら問題ないじゃろう。荷物と共にエルフリーデも乗せてやればよい。ただ、王都に着くまでの貧相な食事に我慢できるかはわからんがの」

「そうだね……」


 二人合わせて苦い顔を浮かべる、夜の出来事であった。



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