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29話 ACT8-3

「「はぁ、はぁ、はぁ」」


 満身創痍のリンカはもちろん、シキも疲れがどっと出て地面に横たわる。


「ありがと。最後の攻撃がなかったら私も危なかった。最後の【マジックアロー】の手刀ロングソード、すごかったわね」


「リンカこそ、ありがとうな。連続スキル攻撃でケルピーのHPゲージをあそこまで減らせてくれなかったら俺の最後の攻撃で仕留めることはできなかった」


「ふふ」


「なんだよ?」


「いえ、私達、なんだかんだいいコンビじゃない?」


「そうだな。初めて一緒にバトルしたとは思えないくらいにいいコンビネーションだったな」


「よかったわ。もっとコンビネーション高めていきましょうね」


「そうだな」


 シキは起き上がりリンカに手を差し出し起き上がらせる。

 さきほどまでケルピーが横たわっていた場所に、ケルピーの蹄の素材が落ちている。

 拾おうとするシキはもう一つ、ケルピーの蹄とは違う何かを見つける。

 光っている粒を手に取るとイヤリングだった。

 水精の涙【装備スキル:ウォーターカッター】と表示されているアクセサリーのイヤリング。


「それなに?」


「水精の涙っていうイヤリングみたいだな。俺の装備品にあわせた素材集めばかり手伝ってもらってお礼ってわけじゃないけど、よかったらもらってくれ」


 水精の涙を差し出すシキにリンカはわかりやすく喜ぶ表情をする。


「それじゃ、遠慮なくいただくわ。よかったらつけて」


「え??」


「え??じゃないわよ。プレゼントしてくれるんでしょ。ほら、つけて」


 イヤリングをつけてあげるとかってあるのだろうか?指輪やネックレスじゃあるまいし。

 仮に指輪やネックレスだったとしてつけてあげるという行為を普通の友達や知り合いの間ですることなのだろうか?

 シキは頭をぐるぐるさせながらも、「ん」っと目をつぶり顔を少し前に出すリンカの耳にイヤリングをつける。


「それじゃ、失礼します」


「お邪魔します。とか失礼します。とかそういうのばかりね」


「いや、だってよ」


「ふふ。私、負けないから」


 イヤリングをつけ終わるタイミングで言われた「負けない」発言にシキはどう反応していいかわからずに「あ、あー」と微妙な返答をしてしまう。

 シキはリンカの「負けない」の言葉の真意を確認することはしなかった。


 シキとリンカはHPMP回復薬を飲み各ゲージを万全な状態に戻し、ところどころを出てくるモンスターと戦いながら《ウエストイースフォレスト》を抜け草原を来た道に沿って戻り《イースの街》に着く。


 《イースの街》に戻るとHPやMPとはまた違う体調ゲージがどうも調子悪いということでリンカは部屋に戻る。

 最大出力の影響だろう。シキも体調ゲージを確認すると万全ではなかったもの集めた素材をいち早く武具にしたかったので鍛冶屋に向かった。


 鍛冶屋のオヤジ店主のに当初もらったリストとあわせて素材を渡す。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ジャイアントベアーの毛皮、ポイズントードの皮

→ジャイアントベアーフード

レッドボアの皮、牙

→ボアレザースーツ

レッドボアの皮、ポイズントードの皮

→レッドボアレザーアーム

ケルピーの蹄、ポイズントードの皮、フォレストスピナーの糸、レッドボアの骨

→ケルピーブーツ

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 どの素材がどの武具にになるのかを記載されたメモを渡され、次の日に来るよう言われ鍛冶屋を後にする。

 鍛冶屋から集会所兼アパートメントに戻る最中にシキは自分のステータスをじっくり見る。

 レベルは31まで上がっていた。

 フレンドチャットでリンカと連絡をとり、今日はそのまま休むかどうかを確認すると少しだけ体調ゲージがよくなってきたので酒場で食事をして今日はそこで終わりにしましょうとリンカから言われ、酒場で待ち合わせすることにする。

 レアイベントクエストの時もシキは《ウーズのコア》をサラに調合しに行ってもらうまでの間に少し横になっていた事をシキは思い出す。

 VBCの目指す世界は人間の実体のデメリットをアバター(仮装実体)においてはなくしているが、AH(アストラルホライズン)のゲーム仕様においては体調ゲージが用意されることで人間の実体とはまでいかないにせよ体調ゲージと呼ばれるパラメーターにより体調が良い悪いといった状態を作り出していた。

 そこにゲーム性の何を求めたのかは見えてこないが。


 そんなことやレベル31でのステ振りをどうしようか考えつつシキは酒場で待つリンカと合流。


 今日の酒場のオススメメニューはビーフシチュー。


 ビーフシチューを頼んだシキとリンカは口に入れた瞬間にとろけてしまう牛のほほ肉とパンのコンビネーションに舌を唸らせながら今日1日の総括を肴に食事を楽しんだ。


 レベル30を超えると上級職になれるため、レベル31になったシキはついに基本職ウィザードを卒業することになる。

 魔法系統の基本職ウィザードのの上級職に当たるジョブは、モンスター使いのスキルを持つサモナー、回復系魔法スキル中心のプリースト、攻撃系魔法スキルを持つソーサラーとある。


「上級職は何を選ぶの?」


「ソーサラーでいこうと思っている。ウィザードの時の攻撃魔法と格闘技術の組み合わせが多い事を考えると攻撃王道の上級職かな。と」


 リンカはさきほどウィザードにおけるサラとのくだりを聞いていた事もありソーサラーを選ぶ事も魔法系統ウィザードの上級職を選ぶ事についても特に言及はせずに、上級職における特殊なスキル発動について興味を示し始める。


「ソーサラーでの特殊なスキル発動も似たような感じなのかしらね?」


「そうじゃないか。こればかりはやってみなければわからないところもあるけど、俺の場合シンプルだからな。リアル世界での武道経験がそのままプレイヤースキルになっているからどこまでいっても格闘技術との相性になるんじゃないか」


 魔法攻撃力を上昇させる【ファイアーボール】

 敵の攻撃力を減衰させる【アイスフォール】

 相手の動きを確率で封じ込められる【フロストボルト】

 MPではなくHPを消費させて攻撃する【ブラッドマジック】

 半径5m以内に仮装魔法陣を展開し、陣内で魔法攻撃を行った場合威力が増加する【マジックスクエア】


 ソーサラーのスキルを確認し自分の攻撃パターンとの組み合わせをイメージしておく。

 元々【マジックアロー】と近接戦闘の組み合わせ自体もバトル中に感じた”違和感”を無くそうとした結果偶発的に生み出された。

 マリアの言うスキルとスキルの組み合わせでなく、シキの場合は格闘技術の攻撃とスキルの組み合わせであるからこそ、そのシーンを事前にイメージトレーニングしておくことが大事であるように思えた。


「そうね。特殊なスキル発動を生みだすキッカケは意外に身近にある小さな動きにヒントがあるのかもしれないわね」


「かもな。リンカのインスピレーションのキッカケに少しでもなれればだな」


「ありがと。そういえば上級職は教会にいかないとなれないのは知ってる?」


「知らん」


「・・・。えらそうに言わないでよ。あなた、本当マニュアル読まないのね」


 AH(アストラルホライズン)では最初の基本職おいてはレベル5を超えた時点で選べるようになっているが上級職においては教会で神父に自身のレベルと希望とするジョブを伝えることでジョブチェンジを行う手はずとなっている。

 鍛冶屋の後教会に行きジョブチェンジした後《時と補正のエリア》に向かう予定を組んでおく。


 リンカもシキに付き添って素材集めをしていたことでレベル35から37になりマリアから求められているレベル40までが射程圏内に入っていた。


 ステ振りの事をシキはリンカに相談するも現時点で特に手動割り振りをどこかのステータスにしなければいけないほどバトル時における逼迫があるわけでないので、《時と補正のエリア》でのレベルアップ後に改めて全体ステータスのバランスや自身の動きのパフォーマンスから判断すればいいのではないかという事になる。

 一旦今日の時点ではステ振りについては保留(ペンディング)とし、食事をすませた二人は次の日に備え、各々の部屋に戻り休息をとる事にする。


次は明日の19時に投稿します。

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