27話 ACT8-1
マリアと草原で別れたシキはリンカにフレンドチャットでコンタクトを取りながら《イースの街》に戻る。
「リンカ。そちらの様子はどうだ?」
「うーん。進展はなしね。少し疲れたわ」
「そうか。俺のほうは結構な進展があったので、一旦合流しよう」
「結構な進展って何かあったの?」
シキがレベル上げと素材集めをしていると思っていたリンカにとって結構な進展の言葉がピンとこないところがあったようだ。
詳しいことは会って話そうと伝えフレンドチャットをそこで切る。
《イースの街》に戻ったシキ。待ち合わせ場所は集会所兼アパートメントの酒場。
集会所に入り酒場のテーブルで項垂れているリンカを見つける。
「お疲れ。疲れたか?」
「そうね。ナンパ待ちと勘違いされたみたいでひっきりなしよ。今だってほら、チラチラチラと視線感じない?」
言われてみると至る所からの視線を感じる。
シキが今リンカに声をかけている順番とみて、終わり次第自分が、自分が。と待機しているメンツの視線なのだと思うと可笑しく思える。
「美人も大変だな」
「嫌味でいってるなら殴るわよ」
勝気な美人リンカは自分で美人と言うのはいいようだが人から言われるのはシャクにさわるようだった。
シキとリンカは酒場を離れシキの部屋に戻りそこでシキが草原で起きた事を順を追って話していく。
その前に言ってなかった事を補足しシキが特殊なスキル発動の持ち主である事を伝える。
リンカもシキと同じように特殊なスキル発動と特殊スキルの違いを理解していなかったので、改めてスキルの固有な使い方やスキルの組み合わせの事を特殊なスキル発動と呼び、全く存在しない固有の新しいスキルと特殊スキルと呼んでいる事も説明する。
ここまでは想定通りにリンカから特殊なスキル発動のことを黙っていた事について怒られるが、本題はそこではないから次の説明に移させてくれとなだめながら順を追って話をしていく。
マリアというプレイヤーに特殊なスキル発動を見られてしまった事。
マリア自身も特殊なスキル発動を持っていた事。
同じ特殊なスキル発動を持つプレイヤーをマリアが探していた事。
EGと呼ばれる帰化プレイヤーギルドが存在し、《イースの街》には支部がある事。
EG及び帰化プレイヤーはAHすべてのプレイヤーをPKし帰化プレイヤー化させようとしている事。
手始めにソロプレイヤーやギルドマスターを狙ってプレイヤーキルしている事。
マリアは帰化プレイヤーを装ってEGに潜入している事。
帰化プレイヤーは種族をヒューマン以外にし、特殊はスキル発動を持っていれば装えるとの事。
マリアからシキにも帰化プレイヤーを装ってEGに潜入してほしいと頼まれた事。
EGに潜入し、近々行われるギルドマスターの引き継ぎ場面を抑えて現ギルドマスターをPKしてギルドマスターの権利を剥奪しようとしている事。
帰化プレイヤーはキルされた後どうなるのかについてはリンカに言わない事しないようにした。
マリアが持っているギルドマスター剥奪チート機能を使ってマリアがEGのギルドマスターになり、プレイヤーとの全面戦争を起こさせその飛び火を《イースの街》からAHの全地域に起こさせる事でプレイヤーvs帰化プレイヤーの戦いの構図を起こさせる事。
決行は5日後。
それまでにシキにはレベルを今の25から40まで引き上げてほしい事。装備を揃えているなら準備しておいてほしいと言われた事。
シキも自分の頭の中を整理するように順を追ってリンカに説明していった。
シキはマリアにリンカと会ってほしい。と話しもしていて、現在帰化プレイヤーは単独行動しているプレイヤーやギルドマスターが一人でいる時のアプローチが限定されているのでリンカがこの話を聞いた後に協力の意思表示があれば個別で会いましょう。と伝えるよう言われていた事も伝えた。
い
「ほしい情報が一気に入ってくると、逆に疑いたくなっちゃうわね」
それはリンカの性格が捻くれているからだぜ。と喉のところまで出かかったが、今は余計な事をいう時ではないと心の中に止めておいて別の言葉を探す。
「仮に罠だったすればやめておくか?」
「いえ、罠だったとしてその誘い乗りましょう。私とあなた、二人とも潜入ってことであればリスクも高くなるけど、逆に私が潜入できないなら逆にあなたがピンチの時、好都合じゃない?」
意外なまでにすんなり全面協力をしてくれたリンカ。シキの予想ではあーだこーだあーだ。と言われるかと思ったが最初の印象が強すぎて素直じゃない印象を持っていただけで、場面によっては素直なリンカに少し印象が変わってきた。
シキはマリアから与えられたお題のレベル25から40までを同じく教えてもらった《時と補正のエリア》に行って短期間レベルアップを目指す話をリンカにする。
リンカは現在レベル35らしく私も行く。との事。
シキはマリアとのやりとりと今の一連の流れにより素材集めも中途半端になっていたのもあり、残りケルピーとジャイアントベアーを倒せば今回求めている装備に必要な素材も集まるので一旦はそちらに集中したい旨をリンカに伝える。
するとリンカからは今日は一緒に残りの時間ケルピーとジャイアントベアーの討伐に使い、明日から《時と補正のエリア》に行って3日間レベルアップに集中する予定を提案してもらう。
シキはリンカの言葉に甘えて、再びパーティー申請し、イースの街》を出て東に30分ほど歩いたところにあるジャイアントベアーとケルピーが出没する《ウェストイースフォレスト》というエリアに向かった。
途中ぞろぞろ現れるゴブリン、コボルト、フォレストスピナーをシキは近接戦闘で、リンカは小剣で難無く倒していく。
リンカのジョブはソードマン、基本職ファイターの系統の上級職である。
初動の攻撃が最初に誤ってリンカの部屋にログインした時にくらいかけたソードマンの突きのスキル【スラスト】とは違い通常攻撃だったのをみてリンカがいかにその瞬間にシキを追い詰めようとしていたのが伝わる。
「何?、ジロジロみて」
「いやなんでもない・・・」
さらに《ウェストイースフォレウト》に向かって進んでいくと、巨大ヘビのグリーンスネーク、巨大狼のフォレウトウルフ、骨のスケルトンのモンスターとエンカウント(遭遇)する。
「【ダブルスラッシュ】」
空を切りつけた波動を飛ばすスラッシュのダブル攻撃をフォレウトウルフ、スケルトンにぶつけ一発で仕留める。
リンカをみると「あなたもスキルを見せるのよ」と言われているように表情から見て取れたシキはグリーンスネークに攻撃する。
「【マジックアロー】」
気の塊、【マジックアロー】を掌から生み出し、グリーンスネークに投げつけこちらも一発で仕留める。
「これが、あなたのいう特殊なスキル発動?使い方が他のウィザードと比べると違うようには見えるけど、その大きな違いはレベル25の攻撃力じゃない気がする点?どれだけ補正されてるのかしら?」
シキの特殊なスキル発動、初お披露目を見たリンカは移動しながらも何か考えているようだった。
シキは一応今見せたのが一番の技でないことを補足しておくと「なんで見せないのよ?」と怒られお目当てのモンスターとエンカウント(遭遇)したら見せる事で怒りをおさめてもらう。
《ウェストイースフォレスト》に着く。
その名の通り、森林に覆われているエリアである。
入ると霧がかかっていて視界が悪い。
入口近辺で出てくるモンスター自体は草原の時に出てくるモンスターと変わらないようだったが少しづつ奥に進むとジャイアントベアーが現れた。
「お目当てのモンスターが出てきてたな」
わかっているんでしょうね。と言っているようなリンカの視線を感じながらシキはジャイアントベアーとのバトルを始める。
巨大熊であるジャイアントベアーは、「ぐるる!!」と気性の荒い声を出しながらとても熊の動きとは思えない俊敏な動きでタックルを仕掛けてくるがシキはかわす。
再びタックルを仕掛けてくるジャイアントベアーの攻撃も再びかわし、次は自分から攻撃を仕掛けようと思った瞬間に横蹴りがシキを襲いふき飛ばれる。
瞬時に腕をクロスしてガードしたのもありそこまではダメージを受けていないが、ジャイアントベアーは知能指数が高いように見えるので安易に避けているだけだと色々な攻撃パターンを仕掛けられそうなのはわかった。
攻撃を受けたのをみて参戦しようとしていたリンカをみてシキは軽く左手を挙げる。
大丈夫だ。というメッセージが伝わったのかリンカは近づこうとした動きをすぐに止める。
再び、殺気立っているジャイアントベアーと睨み合うシキ。
「【マジックアロー】」
掌から【マジックアロー】を出し、ジャイアントベアーに向かって投げつける。
ジャイアントベアーは自分のところに【マジックアロー】の塊がぶつかる瞬間にジャンプして避けるが、そこを狙ってシキは同じくジャンプしていて、飛びミドルキックをジャイアントベアーに顔に入れる。
シキの蹴りで地面に落ち倒れるジャイアントベアーにシキはそのまま右回転をしきって左の回し蹴りでジャイアントベアーの腹にもう一発いれる。
地面に押し込められ、腹にも突きつけるような蹴りを食らったジャイアントベアー。蹴りの衝撃で一度飛び上がった後に
「【マジックアロー】」
今度はシキの拳【マジックアロー】を宿らせジャイアントベアーに向かって飛び込み殴りつける。
「グギャー!!」
ジャイアントベアーはそのまま光の粒子となって散っていった。
次は明日の19時に投稿します。




