第八話
「久しぶりですわね、元気してました?」
「見ての通りじゃ。封印されてしもうたわ」
「……その程度の封印、貴方なら一瞬で破れるでしょうに。それほど、今回の依り代が気に入っているのかしら?」
目を細める吸血姫。
「主こそ、その小僧を大層気に入っているようじゃが?」
「だってこの子凄いのよ! 七歳で私を制御したのですのよ?! あの狂気に耐えられるなんて、凄いと思いません?」
「ほう。それは凄い。素質があるのじゃな」
品定めをするように、舐めるように俺を見る九尾狐。
「そう。素質がありすぎるの! ……あ、そうそう。貴方の依り代、暴走しないで力を制御する方法あるのだけれど……?」
「……大方、葛葉の血を妾毎小僧が吸って、少しずつ戻していくのであろう?」
頷く吸血姫。
「この子なら、貴方を受け入れられるほどの器がありますわ。悪い話じゃないと思うのだけれど?」
「……小僧、主はどう思って居る」
__…………。
「俺は、種族による差別が大嫌いだ。玉藻葛葉は、その大嫌いな差別を受けている。……なら、俺がする行動は一つだ」
吸血姫が誇らしげに微笑む。
「玉藻葛葉を藜組で保護し、その強大な力を制御する為の手助けをする」
「……迷いの無い良い目をして居る」
九尾狐は目を閉じ、考える。
「良いだろう。小僧、主に賭ける。どうか、葛葉を助けてやってくれ。あの子は気付かないふりをしているだけだ。自分を傷つけないようにな。……頼んだぞ」
しっかりと頷く。
光りが奔り、次の瞬間には応接間に戻っていた。
「雪紫、どうしたの? 急に喋らなくなって」
__戻ッてきたのか。
「何でも無い。……玉藻」
ピアスを触った状態で呼び掛ける。
「な、何よ」
「今は何処に住んでいる」
「……離れ」
「嘘だな」
目を見開き、戸惑う玉藻。
「……貸家よ」
「そうか。なら引ッ越しの準備をしろ」
「はぁ!? どういうことよ!」
俺は口角を上げ、立ち上がり、言い放つ。
「お前は今から藜組の者だ」
驚きの声を上げる玉藻。
「五月蝿ェ。んな驚く事か?」
「お、驚くわよ! ちゃんと説明して!」
俺は元居た場所に戻り、一から説明する。
「お前の中には九尾狐ッつー妖怪が封印されている。そのピアスは封印の為のものだ」
ピアスを触る玉藻。
「ンで、そいつはお前を心配してる」
「へ?」
「お前が壊れちまうンじゃねェかッてな」