第六話
少しの抵抗を感じた後にぷつりと刺さるそれを通して、血と共に妖力を注ぐ。
__妖力は妖怪等に備わる力。
__妖力を持つ者は、体力が無くなったり、傷を負うと、無意識に妖力を消費して回復する。
__まだ七歳にはなっていないから、暴走することはない。
__子供は、七歳になるまでは神のもの。
__それが、妖怪等の血を持っていてもだ。
__故に加護を受け、暴走することはない。
「……っ」
__案外キツいな……。
__子供の体に備わった妖力など、高が知れている。
__だが、止める訳にはいかない。
__せめて、葛葉が起きるまでは。
__何分、何秒そうしていただろう。
__否、一瞬かもしれない。
そんなことも分からなくなるほど、俺の意識は朦朧としていた。
__妖力の使い過ぎと血が少なくなッてる所為だな。
__そろそろ腕にも力が入らなくなッてきてる。
__それに、血が少なくなッた所為か、血が欲しくなッてきた。
「ん……、ゆき、し……?」
「ッあぁ、おきたか……」
牙を抜きいて立ち上がり、よろよろと歩く。
部屋の端まで行って座り込む。
「だ、だいじょうぶ?」
近づいてくる葛葉を止める。
「くるな……っ」
__血の、匂いが……っ!
「ち? ちがほしいの?」
間近から聞こえてきた声に、思わず振り向いてしまう。
すぐに鼻と口を手で塞ぎ、目を逸らす。
が、嗅覚が人一倍強い俺にとって、それはなんの効果もない。
俺は最後の力を振り絞って葛葉を突き飛ばす。
「わっ……!」
俺の目が紅く染まり、牙が鋭くなる。
__あァ、血が、血が欲シイ……!
ふと、目の前の娘を見る。
否、娘の首筋を見た。
そこにある二つの点から流れる少量の血。
__美味、ソウ……。
娘を押し倒す。
「ゆきし、しっかりして!」
__ゆき、し……?
途端、何かが目覚めようとしているような、錆びた扉が無理矢理こじ開けられて行くような、そんな感覚が酷い頭痛と共に我を襲った。
『主様、主様!』
頭に声が響く。
「うっ、ああああ!」
「ゆきし!」
『主様!』
__やめろ、やめろ!
__その名で呼ぶな! 我を呼ぶな!
「ッるせェ!」
「!」
『主様!』
「なにかッてにおれのからだのッとッてンだ、あァ?! さッさときえろ!」
自分の頬を殴る。




