第十五話
朝。
藜組は大忙しだ。
葛葉を正式に藜組幹部として迎えた事を傘下の者達に通達したり、葛葉の名字変更の手続きをしたり、葛葉の引越の準備をしたりと、女中や執事等の召使いが屋敷内を駆け回っている。
そんな中、俺と葛葉は俺の部屋に居た。
「んじゃ、制御の仕方を教える」
緊張した面持ちで頷く葛葉。
「そンな緊張しなくて良いぞ? まず俺が九尾狐を少しだけお前の中に戻す。それを力でねじ伏せろ」
「ねじ伏せる?」
「あァ。九尾狐はお前を傷つけないようにと、ある程度は手伝ッてくれるだろうが……。それはあまり期待しない方が良いだろうな」
葛葉は首を傾げる。
「最初の制御の時は、中に居る奴の意思に関係なく力が暴れだすンだ。まァ、戻すのは本当に少しだけだから暴走する事はないだろう。万一暴走しても、俺が止めてやる」
「……なんか、経験したことあるような言い方ね」
「あァ、言ッてなかッたか。俺の中には吸血姫が居る」
「え!?」と目を見開いて驚く葛葉。
「この事は爺様や白雪にも言ッてないから、言うなよ」
「う、うん……」
__……さて。
「やるか。……もう一度言うぞ。“お前の力で”ねじ伏せるんだ」
「私の、力で……」
自身の掌を見る葛葉。
「分かった」
「良い目だ。ンじゃ、行くぞ」
葛葉の首筋に噛り付く。
今度は声を抑えた葛葉。
少しずつ、九尾狐を血と共に葛葉の中へ戻して行く。
__この位で良いか。
首筋から牙を抜く。
「どうだ、できそうか?」
「頑張る。…………」
目を瞑り、集中する葛葉。
__凄ェ集中力。
__初めてとは思えないな。
『そうね。流石、九尾狐のお気に入り』
不意に、葛葉の周りに青白い火の玉が出現した。
「お」
『成功したみたいね』
葛葉がゆっくりと目を開ける。
いつの間にか、葛葉の姿が変わっていた。
艶やかな黄檗色の髪は九尾狐と同じ藍白に。目元、額に紅い紋様が浮かび上がっていた。そして尾てい骨辺りから生える髪と同じ色の一尾。
「わっ。びっくりした……」
「その火の玉、操れるか?」
葛葉が意識を集中すると、火の玉がゆらゆらと動く。
「差し詰め、狐火と言ったところか」
「そっか。狐だもんね」
「あァ。……ンじゃ、尾も動かせるか?」
尾を指差すと、葛葉は首を傾げて後ろを見る。
「えっ……。えぇ!?」
「なンだ、気づいてなかッたのか。とにかく、動かしてみろ」
葛葉は尾を触ったり掴んで動かしたりして感覚を掴む。
「よっ」
小さな声と共に尾が少し動く。
少し練習すると、思うように操れるようになった。




