プロローグ - 旅立ち、再び
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
曇り夜空の下、一つのレストランで、誰かと誰かが話している。
「ちょっと!何するのよ!」
「ふん!知ったこっちゃないね!」
「うぎゃああああああ!!」
と、テレビが鳴いている。
レストランだというのに、店はがらんとしている。
「え、今ので終わりですか!」
「そうです。だから最初に言いました。」
「最悪の終わり方ですね。」
「そう。最悪な終わり方なんです。」
最初の頃は知り合い程度の仲の良さだった、ハルカと店長のコハル。
今は夕食を食べながらヘンテコな話をして盛り上がれるほどの仲だ。
「そういえば、明日ようやく晴れるらしいです。」
コハルが言うと、ハルカは目を輝かせる。
「そっか。なら明日出発ですね。……寂しくなりませんか?」
「そりゃあ寂しくなりますよ!でもハルカには目的があるんですよね。」
「そうです。メルさんに会うためにここまで修行してきたんですから!」
三ヶ月と二週間。ハルカは自転車とバイクの中間みたいな乗り物(イスターという。)を練習し続けてきた。
その特殊な構造から、かなり苦労した。
ペダルを漕げばエンジンがかかり、数キロメートル走ったら止まってしまう。
自転車にしか乗ったことがないハルカには厳しい修行だった。
しかしハルカはマスターしたと言っていいほど、上達した。
だから明日、旅立つのだ。
「明日、何時に出る?」
「朝すぐに出ようと思うです。」
「りょーかい。」
○
「やっぱり寂しいです。」
「でしょうね。」
コハルは寂しそうな顔をしている。
ハルカもよく見ると同じ表情をしている。
「ハルカさん。やっぱり明日にしましょう。」
「ダメです。明日からまた雨が降るんでしょう?」
「それはそうですけど……。」
コハルは駄々をこねる。
が、ハルカは最愛の人を目指すため、断る。
「それじゃあ、そろそろ行きます。」
「いってらっしゃい。」
「また、帰ってきます。」
少しだけ成長したハルカは、青空の下、イスターを漕ぎ出す。
向こうには分厚い雲が浮かんでいるな、と思いながらも手を大きく振り、精一杯声を出すコハル。
2人はその日、再び旅立った。
故に、人は旅立つのです。
違う場合もありますが。




