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ほんとだって! 逆に聞くが俺があんたを狙う理由ってなにがあるんだよ

「え?」

「ん?」


 花壇の前で屈んでいた彼女が立ち上がる。

 その人物にビビッと震えた。


 真田深優。生徒会四天王に数えられるフードを被った彼女がそこにはいた。

 体育館の裏とはいえここは広い。日は当たるし花壇もいくつか並んでいる。そこには数々の花が並び花弁を開かせていた。


 こんな場所があること自体信也は知らなかった。体育館の裏なんて特別用がなければ来ない場所だ。だから花壇があることも意外だったし、なにより彼女と出会うことが驚きだ。


 不意の出会いにびっくりしてしまうがそれは深優も同じだったようで目を大きくした後すぐに警戒態勢になる。


「なんのようだッ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 今にも襲いかかってきそうな気迫に両手を前に出す。そんなつもりはない。そもそも再会したのも偶然だ。


「俺にそんなつもりはない! ここに来たにはたまたまだ!」

「…………」

「ほんとだって! 逆に聞くが俺があんたを狙う理由ってなにがあるんだよ」

「……まあいい」


 それで彼女も引いてくれた。前かがみになっていた姿勢を戻しけれど眼差しの鋭さは変わらない。構えは解いたが警戒心はそのままだ。

 彼女としても敵として戦った信也が突然現れたのだ、警戒して当然かもしれないが信也にとっては不運な出会いでしかない。


「ならなぜ来た」

「それは~……」

「?」


 理由を尋ねられるのも分かる。だが言いたくない。傷心していてクラスメイトに追いかけられているなんて恥ずかしくて言えるわけがない。とはいえ言わなくては警戒心を強められるだけだ。


「はあ」


 そんな目で見られたら観念するしかない。


「一人になりたかったんだ。まさか先客がいるとは思わなかったけどさ」

「……だろうな」


 信也に敵意がないことを確認して深優の警戒心が下がっていく。信じてもらえてなによりだ。


「あんたはこんなところでなにしてるんだよ? 俺を待ち受けていたわけじゃなさそうだし」

「そんなことするか。それに見て分かるだろ」


 深優は花壇の前に屈み花の手入れをしている。土に生えてきた雑草を一つずつ丁寧に抜いていく。


 普段は抜き身のナイフのような鋭さを発しているのに今の彼女にはそんな雰囲気はまるでない。ただ真面目に花の世話をする女生徒、丁寧で真っすぐな、そんな印象を受ける。


 信也はそんな彼女の姿を見てから周囲に目を向けた。いくつもの花壇には様々な花が植えてある。どれも丁寧に手入れがされており綺麗なものだ。花には詳しくないが感心する。


「こんな場所に花壇なんてあったんだな。知らなかったよ」

「だろうな。用がなければ普通は来ないからな。それに園芸なんて地味だろ、特にここでは」


 園芸部に悪いイメージがあるわけではないがマイナーな印象なのは否めない。部活動で華があるといえばやはり運動部だ。それに比べ園芸部は大人しい感じがする。そういうのは子供にはたいてい受けが悪い。加えてここはアークアカデミアだ、クラブ活動もほとんどが異能を使って行われる。ただしここは普通だ、人が集まる理由がない。


 深優は信也には目もくれず黙々と作業をこなしていく。とはいえここには自分を除いて彼女しかいない。一人で世話をするには広すぎる。


「一人なのか?」

「見ての通りだ」

「すごいな」

「どういう意味だ」


 横目でジロリと睨まれる。


「悪い意味じゃないって。これだけの広さをたった一人で世話してるんだろ? 普通に考えてすごいだろ? 素直に感心してたんだ。……なんだよその顔、ほんとなんだぞ」

「どうだか」

「ほんとだって! なんだよ、俺が皮肉や嫌味しか言えないってやつだって思ってるのか? ……まあ、そういう印象を持たれても仕方がないけど。でもこれは本当だ」


 心外だが仕方がない、自業自得というものだ。今までいろいろ言い過ぎた。


「それよりも意外だよ、まさか花とか園芸に興味があるなんてさ。もっと体育会系かと思ってた」

「だろうな」


 自分のことはともかく彼女のことだ。もともと多くは知らない人柄ではあったがこれは少なからず驚きだ。

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