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大丈夫だよ、リーダーになったからといって全部を任せるつもりはないわ

 翌日、信也は姫宮と並びアークアカデミアへと続く通学路を歩いていた。学校の敷地に面した歩道。天気のいい日差しが降り注ぐも信也の表情は暗い。


「信也君どうしたのさそんな暗い顔して。テレビのリモコンが定期的になくなるの心配してるの?」

「姫宮、まだ朝の七時半だぞ? 今からそれ心配するやついないだろ」


 すると二人の横を同じ学生が通り抜けていく。


「テレビのリモコンってどうして定期的になくなるのかな~」

「…………」

「…………」

「ごめん」

「いいってことよ」


 姫宮は信也の肩をぽんぽんと叩く。


「それで? 本当はなにを心配してたのさ」

「昨日のことをちょっとな。ほら、アイドル部に来た生徒会の人。あの人のことを考えてたんだ」

「あー」


 それで姫宮も思い出す。あの場に居合わせた姫宮も彼女のことはよく覚えている。


「なんかすごい人だったよね。気合の入り方っていうかさ、凄みが違う感じがして。信也君もビビってたもんね」

「仕方がないだろ、トラの目をした女子高生が目の前にいたんだぞ、そりゃビビるよ」


 思い出すが彼女がみつけてきたあの迫力は怖かった。刺されるような気迫が彼女の目にはあった。


「たださ、分からないんだよな。どうしてあそこまで生徒会のために頑張れるのかって。義務感とか責任感とかあるにはあるんだろうけど、そういうのであそこまで感情的になるかな? 彼女にはもっと別のものを感じるんだ」

「それは私も思ったかな。それにあの人、真田深優さんだっけ。会長がどんな気持ちでやっているとか言ってたし。個人的な事情があるんじゃない? 会長と親しいとか」

「あの人と、ねえ」

「まあ、私もよくは分かんないけどさ」


 姫宮も自分で言っていて自信はない。天王寺未来という気難しい女性と仲良くなれるかと言えばそれは疑問だ。


 しかし彼女が生徒会のため、もっといえば天王寺未来のために働いているのは確かだ。


 その事実に信也は認識の矛盾を感じている。


「俺、知らないこと思ってる以上にあるのかな」


 生徒会がどういった組織なのか。なぜランク至上主義にそこまで固執するのか。その謎はしかし登校中に分かるはずもなく二人は自分たちの学校にたどり着いていた。

 そこで廊下から自分たちの教室が見えてくるわけだが扉の前に大勢の人が立っている。まるで誰かを待っているようで十人ほどの生徒たちがいた。


「なんだろあの人だかり」

「さあ、なんだろうな」


 二人で教室前に近づいていく。と、そのうちの一人が信也に気が付いた。


「おい、来たぞ」

「俺?」


 教室に着くなり取り囲まれてしまう。 みな熱心な顔で信也を見つめ、ついでに囲まれてしまった姫宮もどういうことか戸惑っている。


「えっと、俺になにか用ですかね?」

「ああ、朝っぱらか押しかけてすまないね。俺は園芸部の部長をしているんだ」

「部長?」

「ここにいるのはみんななにかしらの部長だよ」


 そう言われ見渡してみる。男子生徒や女子生徒が並ぶが全員上級生だ。中にはアイドル部の三木島さんもいる。


「神崎信也君。実は君に頼みがあってね。僕たちは生徒会の強引なやり方に反対している部活連盟なんだ。そこに君も参加して欲しい。僕たちのリーダーとしてね」

「え!?」

「信也君がリーダー!?」


 まさかの提案に目を丸くしてしまう。冗談かとも思ったがみんな真剣な表情で疑いは一瞬でなくなる。


「聞いたよ、昨日もアイドル部を強引に参加させようとした生徒会を追い返したんだって?」

「君も生徒会のやり方には反対なんでしょう? 私たちの仲間にならない?」

「でも突然リーダーなんて」


 ありがたい話だが突然リーダーという大役にどうしても気後れしてしまう。


「大丈夫だよ、リーダーになったからといって全部を任せるつもりはないわ」

「そうそう。どちらかというと君がリーダーであるということが重要なんだ。ランクAの君が反対派の先頭に立ってくれるだけで心強いんだよ。恥ずかしい話、ここにいるみんながすごいアークを持っている人たちばかりということじゃないからさ」

「なるほど」


 リーダーというのも形だけのもので要は御輿になってくれというものだ。ランクAが看板となれば反対派の人たちも心強い。


「お願いできないかしら」


 三木島からも改めてお願いされる。

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