あいつ、なんで会長のためにあんなに頑張ってんのかなって
それを認め深優は顔を下げる。
階段では姫宮と三木島が二人の決着を見つめている。信也が勝った。そのことに姫宮は飛び上がって喜んでいる。
すると文化ホールからアイドル部の部員が三木島に駆け寄り話をする。三木島は頷き正面を向いた。
「真田深優」
三木島から声を掛けられ深優が見上げる。
「アイドル部部長として返答するわ。……生徒会への加入はしません。アイドル部はアイドル部として独立し活動するわ。私たちの夢は、誰にも邪魔させない」
「そうだそうだ!」
隣で姫宮も賛同している。
深優は悔しそうに顔を反らした。
「暴力をちらつかせて交渉しようなんて考えで人の思いまでは変えられない。そんなやり方じゃ誰もついて来ないって、生徒会会長に伝えるんだな」
「……なにも知らないくせに」
「なに?」
信也の眉が曲がる。
深優は顔を背けたまま悔しそうな声を出す。
「あいつが、なにを考え、どんな思いで会長をしていると思ってる」
その声からは彼女の思いが伝わってくる。クールな印象の彼女がここまで感情を露にしている。
彼女は会長のなにを知っているのだろうか。
「あいつは、たった一人でッ」
深優は、信也をにらみ上げる。
「なぜだ、なぜこの時期になって現れた、イレギュラーッ」
その力強い眼差しに、信也はむしろなぜと思ってしまう。
「あんたは、なんでそこまで」
信也の知る会長とは傲慢で非情、自分のルールを他人に押しつけ自分のやり方を貫く人物。
そんな人間に人が心からついていくなんて思えない。利益や利権、そうしたものがあるならともかく。彼女は心から彼女のことを思っている。
深優は信也の問いには答えず立ち上がる。信也は剣を下げた。深優はフードを被り背中を向ける。
「今日は退く」
両手をパーカーにしまいそのまま歩いていく。寂しそうな背中がどこか印象的だった。
信也はパラレル・フュージョンを解き彼女の後ろ姿を見つめ続けた。
「信也くーん」
振り返る。姫宮と三木島が階段から降りており姫宮は片手を振って走ってくる。
「おめでとう! よかった、なんとか勝てたね」
「ああ」
まるで自分の勝利のように、実際アイドル部に関係していた勝負ではあったが、信也が勝てたことに満面の笑みで笑っている。信也も勝ててホッとしているが顔は笑っていなかった。
「信也君どうしたの? うれしくないの?」
「そういうわけじゃないんだが」
信也は姫宮からフード少女の深優が歩いていった方へ振り返る。すでに深優の姿はなく無人の道が見えた。
「あいつ、なんで会長のためにあんなに頑張ってんのかなって」
険悪な関係である信也から見ても深優が抱く天王寺未来への忠誠や思い入れは強い。信也からすればどうしてそこまで献身的になれるのか不思議だ。
「そういえばそうだよね。なんか生徒会の役員だから、とは別の理由がありそうだよね」
「あの子は」
「三木島さんなにか知ってるんですか?」
姫宮が聞くと三木島は顔を横に振る。ただ、と話を付け加えた。
「あんまり誰かとつるんだりしない一人好きだって聞いてるわ。なのに会長の言うことには従ってるって。そもそも生徒会の役員は副会長を含め四天王と呼ばれ高ランクばかりなのに彼女だけはランクD。素晴らしい能力だとは思うけどランク自体は高くない。それなのに役員になっているのも腑に落ちないのよね」
「やっぱりなにか理由があるのかな~?」
姫宮は顎に手を当て小首を傾げている。
彼女と会長の関係。もしかしたら自分たちはなにか見落としているのかもしれない。
彼女との戦いで生まれた謎に、信也はしばらく考え込んでいた。




