来いよ、まだ始まったばかりじゃないか
「いいぜ。その目に焼き付けてやるよ、俺の可能性を!」
対して信也も怯んでいない。強い意思が彼の胸でも燃えている。この学園を支配する絶対者を倒し、立ち上がるのだ。人の価値と可能性にランクは関係ないと。
二人の戦意がぶつかり、この場の空気が引き締まる。激闘の気配が電撃のように飛び散った。
「おい」「まさか本当に?」「すげえ。会長とイレギュラーが戦うぞ!」
二人の戦いに回りの生徒も騒ぎ出す。もしかしたらこの戦いで学園が変わるかもしれない。
先に動いたのは信也だ。片腕を伸ばしアークを告げる。
「俺はランクAアーク並行世界・自己融合発動!」
ランクですべてを決められるこの学園を変えるために。信也は恵まれた異能でランク至上主義に立ち向かう。
パラレル・フュージョン。無限に存在するというこの宇宙とは別の宇宙、並行世界。その並行世界にいるもう一人の自分の能力をコピーする異能。それは無限の可能性を得たに等しい。その時に必要な自分をコピーすればできないことなんてない。汎用性においては最優のアークだ。次元の操作。これこそがランクAの力。
「俺は並行世界にいるもう一人の俺をコピーする! 来い、ソードマスター!」
信也の全身が発光する。一瞬の輝きの後、信也の姿は騎士風のパワードスーツを着た姿となっていた。
赤のアーマープレートが何枚も組み合わさり胸部などの可動部では開閉できる仕組みになっている。それは西洋の騎士ではなくSF的、未来的な造形だ。腰には一本の剣が差してあり信也は籠手を着けた手でそれを引き抜いた。赤い柄の剣も機械的であり構造からなにかしらの仕掛けがあるのが分かる。しかし信也がコピーできるのは能力と姿まで。基本的な知識や経験までは分かるのだがそれ以外は分からない。この構造はあまり使われてこなかったようでコピーした信也にも分からない。
しかし、これで十分。
この姿が並行世界の自分で最強の騎士。その威容はさきほどまでの信也であって信也ではない。内からにじみ出る闘志が歴戦の戦士であることを告げていた。
「なるほど。報告は聞いていたが直に見るとでは違うな。並行世界にいる自分をコピーするか。いい能力だ。お前はそれほどの力を持っていながらランクの優位性を否定するのか?」
「この能力を持っているからこそだ」
「?」
未来が小首をかしげる。そんな彼女へ信也は叫ぶ。
「この能力は並行世界にいる自分をコピーする。俺自身にはなんの取り柄もないが、別の自分には多くの素晴らしい力を持った自分が何人もいるんだ。諦めず、自分の道を極めた人たちが。人間には誰しも可能性がある! この力がその証明だ!」
取り柄のない自分でもこうして素晴らしい自分が存在している。剣を極めた者。銃を極めた者。魔道を極めた者たちが。こうした自分になれたかもしれないという可能性がこの異能には秘められている。
人間の可能性。これがその証。
「天王寺! 見せてやるよ、人間の可能性を。ランク至上主義がそんなに好きなら、最高のランクAでお前を倒してやる!」
ランクAはピラミッドのトップだ。異能学園においてそれは王者の資格。誰もこれには敵わない。
「……最高?」
だが、不敵な笑みが未来に浮かぶ。
「貴様、その力が最上位のランクだと思っているのか?」
「なに?」
疑問に表情が歪む。天王寺の言っている意味が分からない。
なぜならランクAこそがアークのトップ。それ以上は存在しないはず。
しかし未来は信也を侮蔑するかのように言う。
「滑稽だな。お前はなにも知らず自分が頂点にいると思っていたわけか」
嘘には聞こえない。本当に天王寺はランクAを超えるランクがあると言っている。
「確かに、アークにはまだ発現していない仮説上のランクがある。だがそれ以前に、お前のランクはアークの最上位ではない」
知らない。聞いたこともない。だがでたらめにも聞こえない。
「馬鹿な!? アークのランクはAが最高のはず。それよりも上のランクがあるのか?」
「では見せてやろう」
「なに?」
信也の疑問が驚愕に変わる。半信半疑のランクAより上のランクを、天王寺未来が持っているのか?
「これが、この学園の頂点に立つアークだ」
未来は自信を覗かせて言う。腕を前に伸ばし、己のアークを発動した。
これこそアークアカデミアを支配する最上のアーク!
「私はランクA+、『並行世界・次元跳躍』を発動!」
「ランクA+(プラス)!?」
ランクA、プラス。初めてきく分類だ。なにが違うのかまったく分からない。
「お前の言っていることはあながち間違ってはいないが正しくもない。ランクAにはプラスと呼ばれるランクがある。それはランクAが持つ特殊性にある」
「特殊性?」
「そうだ」
未来が力強く頷く。




