表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

275/276

275.治癒魔法は雄弁に語る㉗本当は……

 屋敷にいたときは、粉薬以外の毒も盛られていたのだと思う。

 わたしは毒に気づかないこともあれば、薄々と悪意を感じながらも、残らず平らげることもあった。

(だって、もったいないじゃない)

 食事の量も回数も、相変わらず減らされたままだったから、食べられるものは好き嫌いせずにいただいた。

 確証がない限り、食べ物を粗末にすることはできなかった。


 幸いだったのは、調理担当が嫌がったせいで、グロテスクな虫や魔物の部位を使った料理が出なかったことくらいである。

(まあ、あれは嫌がらせで用意するには、捕まえるのも仕入れるのも大変だものね)


 たまに食後に体調が悪くなったりもしたけれど、たいていは一晩寝れば治った。

 痺れを切らしたイーリースお継母(かあ)様が、より強い毒薬を使うようになって、ようやく自分に高レベルの毒耐性があることを知ったのだ。

(実際のところは、最初から高レベルの毒耐性があったわけではなく、知らない間にレベルアップしていた、というのが正しいのだけれど……)


 それはつまり、気づかないほど完璧に無効化できていたということである。

 同時に、知らない間に毒を盛られ、知らない間に無効化し、知らない間にレベルアップしたということになる。

 毒耐性だけが。

 自分に対してどれだけの毒が使われたのか、どれだけの毒物を摂取したら、毒耐性が上限(カンスト)間際まで成長するのか、考えただけで恐ろしい。


 冒険者の末席に名を連ね、薬草採取をこなし、魔法薬の調合をする過程で、恩寵の右目についても理解を深めた。

 簡易的な鑑定、解析、翻訳、遠見などに加え、人間には見えてはいけないものが当たり前のように視えることも。


 ──人間には見えてはいけないもの、とは。

 聖職者や僧侶などの、聖属性のスキル持ちでなければ視認できないと言われている、アンデッド系のアレ(・・)である。


 お継母(かあ)様が送り込んできた刺客は、間一髪、魔力の暴走で退けた。

 刺客は焼け死んだけれど、その後もレイスとなって屋敷の庭をうろついていた。

(正直、この能力だけは欲しくなかったわね)

 

 子供のころに流行病で死にかけたのが嘘のように、身体も健康で丈夫になった。

 シャーリーンに刺されても死ななかったし、寒空に放り出されても風邪の一つもひかなかった。

 指の一本や二本なら、失ってもすぐに再生する。

 およそ人の身ではあり得ない、再生能力と呼べるものまで備わっていた。


(知りたくなかったけれど)


 切断された指がが再生するかどうかを知るためには、一度は指を失わなければならない。

 ダンジョンで殺されそうになったとき、あいつら(・・・・)は討伐証明としてゴブリンの耳を集めるのと同じノリで、わたしの指を切り取った。


 恩寵の右目には取扱説明書もなければ、先達もいない。

 使い方を知るというのは、そういうことだ。


 スキルに似た小手先の能力なら、何通りも使えるようになった。

 生活魔法なら、ベテランのメイドも驚くほどだ。

 治癒魔法と無属性魔法は、失敗したことがない。


(それでも──)

 再生能力まで顕在化したというのに、属性魔法だは使えなかった。

 魔力が多いせいで、たまに火魔法が暴走することはあったけれど、結局、術式に則って意図した通りに使いこなすことはできなかった。


 鑑定の儀では、属性なしと判定された。

 四精霊に愛されなかった忌み子なのだと、陰に日向に囁かれた。

(努力はしたのよ)

 魔力がないわけではないのだから、頑張れば火花くらいは操れるようになるのではないかと、自分なりに修練を重ねた。

(ギルドの屋舎(おくしゃ)を燃やしそうになって、やめたけど)


 ──本当は、いつも心の底で思っていた。

 

 フィレーナお母様が生きていたら、何かが違っていたのだろうか?

(お母様がお元気だったなら、わたしがもう一度鑑定の儀を受けられるよう、お父様に頼んでくださったかしら──?)

 別の教会であれば、違う鑑定結果が得られるかもしれない。そう言って、(わたし)のために奔走してくれていたのだろうか──?

 ルミカさんのお母さん(テルミさん)のように。

拙作をお読みいただき、ありがとうございます。

気が向いたら下の方の「☆☆☆☆☆」を使った評価や、ブックマークなどでリアクションいただけたら嬉しいです(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ