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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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233/276

233.宴会(村の掟?)

「冒険者になりたいって言って村を出たがってるんだけど、族長の許可が下りなくて、すっかり腐っちまってるんだよ」

「あなたたち、ここに来る途中で絡まれたんですって?」

「大丈夫だったかい? 怪我はなかったかい?」

 新しい大皿を運んできた犬族のおばさんと、お茶のポットを持ってきた猫族のおばさんが、給仕をしながら取り留めもなく話し始める。


 どうやら来る途中の乱闘騒ぎが、断片的に伝わっているらしい。

 わたしは「ええ、まあ……」と曖昧に誤魔化す。

 まさか、わたしの従者(レッド)が応戦して、クロスが水をぶっ掛けて追い払いましたとは言えない。

「族長もさっさと出立の許可を出しゃあいいのにねえ」


「お兄さんたち、お酒はいけるクチかい? 地酒もあるけど、もうちょっと待っとくれね。宴会と同時に強い()を出すと、すぐに男衆が飲んだくれて収拾つかなくなるからさ、」

 大柄で気っぷのいい雰囲気の犬族で、クリーム色のふさふさした耳と尻尾が特徴的なエルさん。

 

「そうそう。ウランさんから止められてるのよ。今日の主役はこちらのお嬢さんなんだから、酔っ払いばかり増えたら困るって言って、」

 猫族は細身の人が多いのか、エルさんと並ぶと小柄に見える、サバトラのような髪色をしたミーナさん。ちょっとお洒落だ。

 二人は空になった皿を片付け、新しい料理を置き、わたしたちのテーブルと周囲のテーブルへ、甲斐甲斐しく飲み物を注いで回る。


「俺たちのことは気にしないでくれ。俺たちは、アリアちゃんの御相伴にあずかっているようなものだから」

「ああ、これで十分だ」

 リオンとクロスのグラスに入っているのは、それぞれエールとワインのようだった。


「おやまあ、ヒト族にしちゃ珍しく謙虚な兄さんたちじゃないか!」

 リオンの返答に、エルさんが大袈裟に驚いた様子を見せる。

 いったい、前にこの村を訪れた人間(ヒト族)は、どんな振る舞いをしたのだろう。

「よしなさいよ、そんな言い方。失礼でしょ」

 空いた皿を片づけながら、軽く(いさ)めるのは宿屋の奥さん。名前はリエラさんといった。

「ああ、悪かったね。こないだのヒト族があんまりあれ(・・)だったものだからさ、つい……」


「ここでは村を出て冒険者になるのに、族長──ノアさんの許可が必要なのですか?」

 わたしは話題を変えようと、先ほどの会話で疑問に思ったことを問いかけた。

「ああ、そうさね。冒険者になりたいって子は、族長と手合わせして、認められなきゃあ出立は許されないんだよ」

「そういう“しきたり”があるのですか?」

「しきたりっていうか……」

 わたしが、いかにも獣人族らしい決まり事に感心していると、エルさんは困ったように口ごもった。


「あいつらが(よえ)ぇからだろ?」

 すると、隣で山盛りのカラアゲを頬張っていたレッドが、一息に口の中のものを飲み下して言った。

「どういうこと?」

 わたしはレッドに問い返した。

「あの程度じゃ、すぐ奴隷狩りに捕まるぜ。四人がかりで、オレ一人にも勝てねえんだから」


 一瞬、エルさんとミーナさんを含む周囲の人たちが、全員「えっ?」という雰囲気で固まった。

「あんた……一人であの四人組と戦って勝ったのかい?」

 周囲の声を代表するように問いかけたエルさんに、レッドが何でもない調子で肯定した。

「あいつら喧嘩慣れはしてるけど、それだけっつー感じ。タイマンなら、ヒト族の初級冒険者よりかは強いだろうけど、ダンジョンに放り込まれたらすぐ死ぬだろうな」

 言いながら、レッドは運ばれてきたばかりの大皿に手を伸ばす。

 今度の皿には小魚のカラアゲが大量に盛られていた。

 目を輝かせてそれらを口に放り込んだレッドが、感激したように声を上げた。

「うまっ! おばちゃん、これなんて魚?」

拙作をお読みいただき、ありがとうございます。

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