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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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224/277

224.疑問

 なぜ、幼いうちにどこかへ捨てるか、修道院に閉じ込めるか、もっと簡単な方法を選ばなかったのだろう。それだけが疑問だ。

 何度か殺そうとしたものの、死ななかったから寄宿学校(ローランド)に放り込んだというのはわかる。

 けれど、閉じ込めるのなら寄宿学校でなくても、修道院やどこかの地下牢で十分だったはずだ。


 露見(ろけん)する可能性が高いから、人の出入りがある屋敷内には監禁できない──という理由なら、費用をかけずに閉じ込められる場所など、探せば他にいくらでもある。いっそ、人買いに売り飛ばすことだってできたのだ。

(シャーリーンのスペアとして、監視できる範囲に置いておきたかったのかしら……?)

 義理の娘(シャーリーン)のスペアが実の娘(わたし)、というのは逆なのではないか……という気もするけれど、そこは考えても仕方がない。


 レナードお父様のことも、イーリースお継母(かあ)様のことも、わからないことだらけだ。

 わたしの古い記憶の中にある、優しかったお父様の姿は何だったのだろう。

 イーリースお継母(かあ)様は、なぜわたしを寄宿学校に閉じ込める程度のことで妥協したのだろう。


 あの女は、何度もわたしを毒殺しようとしたのだ。わたしが家出したとでも偽って、こっそり売り飛ばすくらいのことはしかねない。

 死なずの化け物とは言われても、わたしだって本当に不死ではない。おそらく、即死するような攻撃を受ければ死ぬ。なぜ、もっと早くに刺客の数を増やして強襲しなかったのか──?

 不死の化け物としてわたしを恐れ、お兄様よりも先にわたしを殺したがっているくせに、やり方が手ぬるい。


 生家のことを考えると、いつも理解できない事実に突き当たって混乱する。

 考えても答えの出ないことだから、考えないように努力はしているのだけれど、ふとした拍子に頭に浮かんでくるのだ。

 家や家族、身分にまつわる事柄は、わたしの心をかき乱す要因でしかない。

 

 わたしは本当に、ハーフエルフとして生きることで、完全にあの人たちと縁を切ることができるのだろうか──?

 あの人たちが野望を成就させ、権力を手に入れてしまえば、わたしもお兄様も破滅だ。

 お兄様は家督を継ぐ気でいるようだから、当主であるお父様のことを告発して、家名に泥を塗るようなことはしないだろう。

 けれど、ヴェルメイリオ家を乗っ取りたいイーリースお継母(かあ)様は、いずれはお兄様のことをも殺す。今のところは、出来損ないの(わたし)のほうが始末しやすいと思っているから、お兄様は後回しにされているだけだ。

(もうあまり時間が残されていないような気がする……)


 わたしは死ななかった。

 毒を盛られても効かず、刺客を寄こされても退(しりぞ)けてきた。

 この前は、お継母(かあ)様が手引きしたと思われる盗賊団の襲撃からも、生き延びた。

 業を煮やしたお継母様が、先にお兄様へ矛先を向けたとしても、おかしくはない。

(手口が変わってきていると言えば、言えなくもないもの……)

 今までのように、わたし一人を狙うのではなく、形振(なりふ)りを構わなくなった。


 早い話、伯爵家を乗っ取るのなら、跡継ぎであるお兄様さえいなくなればいい。わたしが生き延びて何かを告発したところで、証拠もなければ、聞く耳を持つ者もいないと思われているはずだ。

(実際、その通りだけれど……)

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