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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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218.エルフになりたい㉙猫の困惑

 目の前で、レッドが困ったような顔をしていた。

「今、そんな話してねーだろ……」

「だって、借金奴隷になったらレッドはどこかへ行ってしまうのでしょう?」

「……まあ、そうなるな」

 レッドは気まずそうに、さらに視線を逸らしてうつむいた。

「もう会えないのかな? 借金奴隷って町の中では見かけないから、どこか遠くへ行ってしまうの……?」

「そりゃあ……見かけねえだろな。基本的に、缶詰めにされて働かされるから……」

「会いに行」

「来るな!」

 被せるように(さえぎ)られた。

「たとえ、場所がわかって会いに来たとしても、オレは絶対会わねえ! 会いたくねえから!!」

 思っていた以上の剣幕で拒絶されて驚いてしまった。

「……ごめん」

 咄嗟に謝ってから、それもそうかと納得する。自分を借金奴隷に落とした元凶になど、二度と会いたくはないだろう。

「あ……オレのほうこそ、(わり)ぃ。会いたくねえわけじゃなくて……その……会わせる顔、ねえから……」


 などと言い合っているうちに、表からモントレーとイザークが呼ぶ声がして、話はいったん棚上げとなった。

「アリアちゃん、レッド、迎えがきたよ! 行こう!」

 呼びに入ってきたリオンは一瞬、わたしたちを見るなり怪訝な顔をした。

「どうしたの? また痴話喧嘩かい?」

「ちげーよ!」

 むすっとしたレッドが言い返す。

「なんでもないのよ、リオン。ちょっと、クロスに出された課題が難しくて……」

 わたしは適当に誤魔化した。ごめんなさい、リオン。

「助言したくても、俺は魔法のことはあまりわからないからなあ。課題の助けにはなれないけど、他のことなら相談に乗るよ。──っていうかアリアちゃん、それ可愛いね。よく似合ってるよ」

 お気に入りのワンピースを褒めてくれたのは、リオンだけだった。


「ありがとう。自分でリメイクしたのよ」

 リオンが開けてくれた扉を潜りながら、そんなふうに謙遜してみせる。

「アリアちゃんはお裁縫も得意なんだね」

「貴族令嬢が(たしな)むような刺繍は苦手よ。わたしができるのは、普段着を仕立て直すことくらい」

 服の仕立て直しなど、高位の貴族令嬢がやることではない。

「いや。生活魔法といい、お裁縫といい、十分に凄いと思うよ。アリアちゃんは、きっといいお嫁さんになれるね」

「ふふ、お世辞でも嬉しいわ。ただし嫁ぎ先は亜人種限定でしょうけど」

「あ、ごめん、そういう意味じゃ……」

「わかってるわ。──って、レッド!!」

 大事なことを忘れるところだった。


「な、なんだよ」

 わたしたちの後ろを付いて歩いていたレッドが、急に名前を呼ばれてびくりとしながら返事をする。

「今後は、わたしが貴族の生まれだっていうことは、内緒にしておいてね。わたし、これからはハーフエルフとして生きることに決めたから」

「え? え?」

 レッドはわけがわからないという顔をした。

「宴で余計なことを言わないでね、っていうお願いよ。わたし、この旅が終わっても、お祖父様に孫として認められても、二度と貴族には戻らないつもりだから」

「……」

「ここみたいな村に暮らして、冒険者として生きていこうと思うの」

「……」

「もっと勉強して属性魔法も使えるようになれば、採取や納品以外の仕事もできるようになると思うの」

「……」

「レッド? ねえ、聞いてる?」

 途中から、レッドからの反応が薄くなった。

 何度か呼びかけると、ぼそっとした呟きが返ってきた。

「わかった。黙ってりゃいいんだろ」

「うん。よろしくね」


 *


 玄関から外に出ると、律儀にもモントレーおじさんとイザークさんが揃って迎えに来てくれていた。

 リオンはずっと二人と喋っていたみたいだったし、クロスもすでに合流していた。そこに宿屋の旦那さんも加わって、わたしたちは総勢七人でぞろぞろと夜道を歩き出した。


 途中でやはり獣人族の若者が数名、姿を現した。

 けれど、モントレーおじさんとイザークさんが追い散らすより早く、レッドがキレた。

「ちょっと、レッド!?」

 ヒト族が獣人の集落に何の用だ! 早く出て行け! と投げつけられた石を、瞬時に獣化させた腕で叩き落とし、四人の若者たちに飛びかかった。

(なんか今日のレッド、情緒不安定だなあ……)

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