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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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214.エルフになりたい㉕精製魔石の使い道

 精製魔石の製法というのは、未だに確立されていない。

 精製魔石というのは、複数の魔石を一つに圧縮し、一個の強力な魔石として練り上げたものだ。

 その製法から、精錬魔石と呼ばれることもある。

 一般的には、厳選した魔石を二〜三個使って、専任の魔法使いが交替で数日かかって練り上げるらしい。


 硬い石である魔石を、魔力だけで溶かしてくっつけて混ぜて固めるのだ。単純に考えて、粘土をこねるように簡単にはいかない。

 花瓶や食器を作るための粘土も、職人が懸命にこねてから成形するのである。

 焼き物に例えるなら、土をこねて成形し、乾かして焼くまでの工程を、全て魔力だけで行うのと同じだ。

 とにかく、膨大な魔力と技術が必要なのだ──と文献で見た。


 いわば、ベテランの職人が作る細工物のような位置付けであり、素人が手を出せる領域ではない。

 しかも、職人のそれぞれが独自のやり方でしか作れないために、精製魔石が安定して市場に供給されることはない。


 一般的に、大きな魔石にはたくさんの魔力が詰まっている。

 大きな魔力は、大きくて強い魔物からしか採れない。

 おおきくて強い魔物は、狩れる者が限られている。

 そのため非常に貴重であり、取引価格も目の玉が飛び出るような金額である。

 大量の魔力を消費する魔道具の動力源に使われたり、大型魔法発動のための媒介として、規模の大きい施設や組織が、年単位の予算を組んで買い上げるような代物なのだ。


 例えば、アレスニーアの城壁でもある魔法防壁。

 王城や、王都全体の城壁に使われている魔法障壁。

 都市をぐるりと囲むほどの巨大な魔法防壁の動力源は、複数の大型魔石──それこそワイバーン、リヴァイアサン、バハムート、グリフォンなど、竜種や災害級、伝説級の魔物から採れた魔石を使って定礎儀式が行われたらしい。


「アレスニーアの魔法防壁──」

 クロスが言った。

「あれの動力源として、師匠は精製魔石の活用を提案している。製法の確立を目指しているんだが、未だに個人の技量に頼るところが大きい」

(あ……)

 巨大魔物の減少と、それに伴う上級冒険者の流出──という社会問題を新聞で見たことがあった。


 巨大魔物は減少傾向にあるらしい。

 危険な魔物が出なければ、仕事(依頼)の減った上級冒険者は自国に居着かず、魔物の被害による大規模な復興事業も減る。

 何より、大型魔石の採取量=流通量も減り、防衛のための国力も低下する。

 災害級の危険な魔物でも、全くいなくなっては困るのである。

 巨大ダンジョンをいくつも抱えているウェスターランド王国はまだマシなほうで、他国では冒険者の流出を食い止めるための施策が、すでに行われているとかいないとか……。


「ちなみに、オレの師匠であるエリン・メルローズは、不老不死の魔法を開発した大魔法使いで、何百年生きてるかわからない化け物だ。

 が、その師匠をもってしても、ダブルやトリプルの精製には時間がかかる。師匠が片手間に作ったダブルの小魔石が5000フロヮなら、アリアのトリプル魔石が(いく)らになるか──」


 ダブル、トリプルというのは、おそらく精製に使用した魔石の数だ。

 わたしの場合は元になる魔石を使わずに、何もないところから生成しているので、込めた魔力の量ということになるだろうか。

 トリプル魔石というのは、魔石〈小〉三個分の魔力がこもっているという意味に違いない。


(精製魔石、などという上等なものではないけれど……)

 わたしはそこまで器用ではない。簡単には魔力が尽きないから、単純作業を長く続けられるというだけで、精製魔石の職人さんやクロスのお師匠様のように、精緻な魔力を操れるわけではないのだ。

 その証拠に、今までわたしの魔石は精製魔石ではなく、普通の魔石として扱われてきた。

 もっと緻密で丁寧な作り方をしていれば、精製魔石として認められたかもしれないけれど、今さら言っても仕方がない。


 が。 

「目の前で、見ている間にトリプル魔石を三個も生成できることが、どれだけ脅威的なことか──特にアリア! よく覚えておけ」

 ばん、とテーブルを叩いてクロスは力説した。

「絶対、二度と、他人が見ている前で実演したりするんじゃねえぞ!」

 雑な口調に戻ったクロスに、(にら)みつけられ(すご)まれて、わたしは思わず(すく)み上がって「はい」と答えた。

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