表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超創機大戦  作者: 馗昭丹
序章
14/77

月満ちる刻(前半)


聖マルグリット学院…


-ヴゥゥゥ-


「…お嬢、此処が限界です、若頭を待たせるとまた病気になるかと」


苅藻は酒本の激しい被害妄想のメールを暦に見せながら言う。


「…重症だな、仕方がない、酒本が暴走する前に帰ろう」


「…賢明な判断です、お嬢」


暦は立ち止まり、来た道を引き返す。



「命、帰ろう」


「「はい」」


追ってきた黒田兄妹に言い、暦はその先に視線を移す。


「……?」


「………」


廊下の陰から様子を見ていた魅鳥と目が合う。


魅鳥は恥ずかしそうな表情で言うか言うまいか迷う。


「…魅鳥、一緒に帰ろうか?」


「あ…はい!」


見かねた暦は魅鳥に言い、魅鳥は嬉しそうに言って追従する。


…暦達が学院から出た時は既に薄暗く、月が昇り始めていた…。


___________________


「つっき〜がぁ〜出た出った〜月がぁ〜出た〜」


昇り始めた月を見て楽しげに歌う少年…。


栗坂勢気は米サイダーを飲みながら家の屋根上でのんびりと月を見ていた。


-キラーン-


「おぉ?何か光ったぞ!?」


月から細かい一点の光が煌めき、勢気は跳ね起きる。


-カシャン-


「んおぉぉ!?んだアレ!?」


勢気は高倍率望遠鏡で月を見ると…


某アニメで出て来るウサギみたいな形の魔法生物が映る…。


ただ違うのは…それが緑色をしていて翼状光を発している事だろうか…。



「オッシャァァ!!9Bキタコレ!!」


-カラン-


勢気は奇声を発して金属バットを構える。



「ピッチャァァ9B!!!振りかぶって飛び込んできました!!!!」


「ミュ!?」


「対するバッタァァ栗坂!!!!」


勢気は一本脚打法の構えを取り、緑色の魔法生物は減速する。


-カッキィィィィィィン-


「ヘブッ!?」


「打ったぁぁぁぁぁぁ!!!!大きい大きいホォォォォムラン!!!!!」



勢気のフルスイングが緑色の魔法生物にジャストミートし、緑色の魔法生物はどこかに飛んでいく。



-ガラガラ-


「アンタ!!ちったぁ近所迷惑も考えな!!」


-ベシッ-


「痛で!?」


「さっさと飯食って風呂入って寝る!!」


-グイッ-


「かか母ちゃん!極まってる!極まってる!」


「つべこべ言ってないで入りな!!」


-ガラガラ-


勢気は凛に引きずられながら家に入る。


___________________



-ヒュゥゥゥン-



-ガン-


-ゴン-


-ドサッ-



緑色の魔法生物が道端に落下する。


「…痛たたた…、いきなり僕をぶっ飛ばすなんて信じられないよ…」


緑色の魔法生物は金属バットで打たれた箇所を毛繕いしながら呟く。


「…誰だよ、馬鹿だから楽に契約出来るなんて言ったの…」


緑色の魔法生物は自己再生して愚痴る。


「うーん、このまま帰ったら部長やキューン先輩やアンゼリカ先輩に怒られちゃうな…、代わりになる素質者を探さないと…」


緑色の魔法生物は呟きながら月を見る。



其処へ…



「魅鳥はこの辺だったな?」


「はい、暦さん、苅藻さん、命さん、ありがとう御座います」


家の付近まで送ってもらった魅鳥は、暦達に礼を言い…別れる。



「またな、魅鳥」


「はい、また明日」


暦はそう言い、魅鳥はそのまま応える。




魅鳥は少し歩くと…



「…?」



道端に居る…見た目可愛らしい緑色の魔法生物が目に映る。



「初めましてだね、僕は銀河警察のミュンリ、君の名は?」


「…ふぇ…?」



緑色の見た目可愛らしい魔法生物…ミュンリは魅鳥に言って近づき、魅鳥は警戒する。



「ねえ、君の名を教えてよ」


ミュンリは無警戒に魅鳥に近付いていく。



其処へ…



-ガシッ-


「ぎゅむ!?」



ゴツい手がミュンリの頭を鷲掴みにし、ミュンリの顔が歪む。


「パパ…」


「…おう、他人の娘に何迫ってんだコラ…!」


「…いえ、その…コレは…」


銀髪のワイルドヘアーに強面の漢がミュンリに凄み、ミュンリは視線を逸らしながら言い訳する。



「…おう…!」


-ギリギリギリ-


「…ひ…!」


ミュンリは魅鳥の父…雷鳥の迫力に青ざめる。


「…っと、そうだ魅鳥、冷蔵庫にパパの作ったプリンがあるから食後のデザートにしなさい、パパは事務所でちょっと御仕事しなくちゃいけなくなったからね」


「うん」


魅鳥の父は穏やかな笑顔で言い、魅鳥は笑顔で返事する。


「…事務所いこか、あんちゃん…!」


「ひぃ…!」


雷鳥はミュンリに凄み、そのまま事務所へ連行していく。


よくよく考えれば、暦はその筋の家柄の出であり…親交の有った魅鳥もその筋の家柄である事は十分に考えられる事である…。


___________________


翌日…



「兄さん、コレ何かな?」


「…勇、そんな馬鹿げたものに構うな、置いて行くぞ!」


「わわ、待ってよ!」


石動兄弟は磔にされているミュンリから離れていく…。




「うーん…昨夜は酷い目に遭った…」



ミュンリは磔にされている十字架に手足を固定されたまま呟く。



「このままじゃ、うわばみのおやつにされちゃうよ…」


ミュンリは固定具を身体に取り込みながら呟く。



「はあ…今年中にA級と契約しないといけないなんて酷な話だなあ…」



ミュンリは道端に出て歩む。



「まあいいや、目星はつけたし、下手鉄砲も数打ちゃ当たるだろうし…契約しちゃえばコッチのもんさ」



ミュンリは極めて前向きに物事を考え、素質者を求めて街を徘徊する。


____________________


街中…。


「ねえねえ、僕と契約して魔法少女になってよ!」


「うっわ!リアル9Bキター!!」


-ドドドドドド-


「そのネタはアッカァァァァァン!!!!」


-ドゴォォォッ-


「ぐふっ!?」


ミュンリの言に反応した嘉昌(ヨシアキ)は、無意識の内に駆け、叫びながらミュンリを蹴り飛ばす。


-ガシャァァン-


「ゴォォォォル!!!」


ゴミ箱にシュートを決めた嘉昌は、あまりの素晴らしさに思わず叫ぶ。


「ああ!今日も兄貴うっさい!」


-スパァン-


「痛ぇ!?」


「先に行くかんね!」


-タッ-


嘉昌の妹の秋良(アキラ)が耳を押さえながら嘉昌をスリッパでどつき、学園の方向に走っていく。



-カランカラン-


「…みゅー…」


ゴミ箱にはまったミュンリは、目を回しながらうなだれる。


____________________


「ねえねえ、僕とS-Xして魔女になろうよ!」


「や…ヤダ…!」


ミュンリは茸に似た形の尻尾をフリフリさせながら言い、少女は赤面しながら拒絶する。


「そんなこといわずにしようよ!」


「い…嫌!」


ミュンリは笑顔で少女に迫るが…。


-グシャッ-


「!!!!!」


「はいはい、ウチの妹見て興奮するのは分かるけど、相手見て言うべきじゃないかしら?」


少女の姉がミュンリを踏み潰しながら言う。


-ギュゥゥゥゥ-


「ぎ…ギブアップ…」


少女の姉の容赦ない足蹴にミュンリはギブアップ宣言する。


「姉ちゃんちとコレ捨ててくるから、塩まいといて」


「う…うん」


「おりゃっ!」


-ガボォッ-


ミュンリは少女の姉に生ゴミ入れに投げ捨てられる。


____________________


「ねえねえ、僕と組んで美少女戦士になろうよ!」


「…興味ない…」


「そんなこと言わずにさ!」


「…しつこい汚物は消毒…」


-ジュゥゥゥ-


「熱ちちちちち!!?」



___________________


「熱ちち…何で一般人が対宇宙生物用の消毒液なんかもってるんだよ…」


ミュンリはやっとこさ自己再生の終わった箇所を毛繕いしながら呟く。


「こうなったら変身術を使うしかないね…えいっ!」


-シュゥゥン-



「僕は一応女の子なんだからね!女の子が好物なだけさ!」



ミュンリは緑髪の少女に変身し、どこかに向かって言う。


___________________


刻は再び薄暗い夜…。



-ヴゥゥゥン-



「因果の黄昏」が広がっていく…。



『グォォォォォォン!!!』



「…芒霊!?」


苅藻達と共に帰り道を歩んでいた暦は、セイズ呪歌を聞いて見上げる。



苅藻達を始めとする一般人達は空間から切り離されたのか、因果の黄昏の中には暦しか居ない。


『呼んで…蒼月の巨人を…私達で…かの邪悪を打ち祓わん…』


暦の御守りが暦に話し掛ける。


『胸に手を当て…強く念じて…、…契約した時と同じ…想いを…』


暦の御守りが話し掛け、暦は胸に手を当て…強く念じる…。


『…呼んで…私の名を…』


「…コヨミ・ユミル!」


-ポォォォッ-



暦が力強くコヨミ・ユミルを呼ぶや、暦を中心に大きい魔法陣が現れる。



魔法陣からコヨミ・ユミルが現れ、暦はコヨミ・ユミルの中に跳躍する。



-バサァッ-


-ドォォォォォン-


コヨミ・ユミルは翼を広げ、蒼く輝く翼状光を展開して飛翔する。


満月の光を背に受け、コヨミ・ユミルの蒼月と紺のボディが活性化し、鮮やかに…神秘的な蒼月の如く輝く…。


『グォォォォォォン!!!』


-ドゴォォォン-


-ゴォォォォ-


焼き物の鯉の様な芒霊が、尾鰭を強く地面に叩き付けて跳ね飛ぶ。


『ウォォォォォン』


-ブシャァァァ-


鯉芒霊は口から泥水らしきものを吐き出し、牙を剥いて突撃する。


-ゴォォォォ-


-チャク-


-カチリ-


「その脇腹を…撃ち抜く!」


-ズドドォォン-


コヨミ・ユミルは魔導フィールドを展開しつつ飛翔し、収束魔導銃コンデム・リヴォルヴァーを展開して鯉芒霊の胴体部分を貫く。


『グォォォォォォン!!!!』


「面影は…下顎か!」


鯉芒霊はダメージを受けた途端、微かに下顎部分が動き、暦は面影の位置を看破する。


-ズゥゥゥゥゥン-


鯉芒霊は地面に落下し、ド派手な轟音を出して住宅街を粉砕する。


-ヴゥゥゥン-


「…あれは…魅鳥!?」


-ゴォォォォ-


…コヨミ・ユミルの魔導ディスプレイには…鯉芒霊の他に朋鳴魅鳥の姿が映し出され、暦は考えるよりも先に急降下する。


-ヴゥゥゥン-


『グォォォォォォン!!!』


「!!」


鯉芒霊の目が魅鳥を捉え、セイズ呪歌を浴びせる。


「あ……ぁ……」


魅鳥はセイズ呪歌により、恐怖で腰が抜け、身体が硬直化してしまう。



『ウォォォォォン!!!』


「魅鳥!!」


-ズドドドドォォン-


『ウォォォォォン』


コヨミ・ユミルはコンデム・リヴォルヴァーを連射して鯉芒霊の鰓と胴体部分を貫く。


-ゴォォォォ-


「ウォォォ!!!」


続いて魔導フィールドを展開したコヨミ・ユミルが凄まじい速度で鯉芒霊に迫る。


-バッキォォォン-


-ズゴォォォォン-


コヨミ・ユミルの突撃が鯉芒霊を吹き飛ばし、衝撃で鯉芒霊の胴体を二つに引き裂く。


-シャン-


「このぉ!」


-ドシュゥゥゥ-


コヨミ・ユミルはミスリル・ブレイドを鯉芒霊の下顎部分にある面影に突き刺す。


-ビキッ-


『ギャァァァァァァ!!!』


-ビシビシビシシィッ-


-ブシャァァァァァ-


面影を打ち砕かれた鯉芒霊は耳障りな断末魔をあげ、崩壊して泥水に変わっていく。


「魅鳥、無事か…?」


「…暦…さん…?」


暦は魅鳥に近づき、腰が抜けていた魅鳥は暦の声に反応して呟く。


「…良かった、無事で…」


「………」


暦は魅鳥の無事を確認するや、安堵する。



『グォォォォォォン!!!』


-ズゥゥゥン-


-ズゥゥゥン-



「…!?まだ居るのか」


「…あ…ぁ…」


他の芒霊達が現れ、魅鳥は再び恐怖に包まれ、気絶する。


「魅鳥、しっかりしろ!」


「………」


暦は魅鳥に呼び掛けるが、魅鳥は気絶したままで反応しない。


『ウォォォォォン!!!』


-ズゥゥゥン-


「…く、ユミル!魅鳥に魔導フィールドを!」


-シュゥゥン-



「飛ぶぞ、ユミル」



-ヴゥゥゥン-


-ドォォォォォン-


コヨミ・ユミルは魅鳥を左の掌の上で魔導フィールドをかけて保護し、天高く飛翔する。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ