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超創機大戦  作者: 馗昭丹
序章
13/77

見えぬ仮面~震動と再会

__________________


聖マルグリット学院…


修道院棟にある食堂内にて…


「清水学院長、失礼します」


「まあ、よく来たわね…暦さん、適当に掛けてて頂戴ね」


暦は食堂に入ると、白い三角巾にエプロン姿の老婆が鍋の中にある赤いスープの味見をした後に言う。


「…昨夜はすみませんでした」


「暦さん、もう少し待っててね、もう少しでスープの仕込みが終わるから…」



暦は昨夜の件に付いて謝るが、清水学院長は忙しいのか…暦の言を流す。



暫くして…



「失礼します。遅れてすみません、清水…院長先生」


「…(……震動が重なる……)」


先程あったばかりの石動兄弟が食堂に入ってくる。


「…何故、君が居る?」


智は表情に表さなかったが、暦を見る目には驚きと動揺が混じっている。


「…あら?智君と暦さんはお知り合いだったの?」


清水学院長は二人をからかう様な…予め知っていたかの様な笑みを浮かべて言う。


「違…」


「…はい、さっき知り合ったばかりです」


智が否定するよりも早く、暦は肯定する。


「ふふふ…若いって良いわねぇ…、ですが…当学院内での不純異性交遊は禁止していますよ?ねぇ…勇君…?」


「へ?…えぇ…?…と…兄さん?」



清水学院長は若い子達をからかう様に言い、勇に話題を振るが、勇は話題についていけずに智に助けを求める。



「…勇、…心得ています」


「………」



智は一瞬だけ表情を曇らせて言い、暦は智の表情と口調から微かな動揺を感じ取る。



「ふふ…からかってごめんなさいね、さあ…出来上がりましたよ」


清水学院長は微笑みながら言い、出来立てスープを食器に入れていく。



「手伝います」


「…(…震動が大きい…)」


智は食器に入れられたスープを盆に置き、運んでいく。


暦は無言で智と清水学院長の遣り取りを観察しつつスープを受け取りにいく。


「あ、僕もいかなきゃ」


それに続いて勇もスープを受け取りに席を立つが…


「…勇の分だ、自分の分くらい自分で取りにいけ…」


「あ…ありがとう…兄さん」


智は小声で勇に言い、勇は智を見て礼を言う。


「さあ、いただきましょう」


清水学院長は皆を見ながら笑顔で言う。


-スッ-


『安心して、毒なんか入れたりしないから』


「………」


「………」


清水学院長は毒味に忍んでいた苅藻を見ずに呟き、苅藻は指先に付けたスープとサラダを舐め取り、一瞬で食堂から脱出する。


智は重い表情をしながら清水学院長を見たが、直ぐに視線を逸らす。


「いただきます」


「あ、いただきます!」


暦は昼食を食し始め、勇も昼食を平らげ始める。


「………」


智だけは昼食が進まない様子で、複雑な表情のままスープを睨んだり、清水学院長の様子を伺ったりしている。


「…(…震動の影響が現れる…)」


暦は涼しい顔で昼食を食べつつも智と清水学院長の様子を見ている。


「………」


食堂の外では苅藻と黒田兄妹が談笑しつつも食堂の監視を続ける。



四人の間に沈黙の時間が流れる。



勇は三人の沈黙に構わずにスープをお代わりしたり、パンやサラダを取って食べたりしている。



四人はポツリポツリと世間話をしながら食べる。



「ところで学院長、私達を引き合わせた訳をお聞かせ下さい」


昼食を食べ終えた暦は、清水学院長に言う。


「ふふ…若い二人を近付けてみたくなっただけよ」


「……!」


一瞬だったが、清水学院長は暦と勇を見て言い、智の胸元と背筋に冷たい何かが走る。


「…そうですか」


暦は紅茶を静かに飲み、落ち着いた口調で言う。


「………」


暦は智の動揺に気付くが、敢えて気付かないふりをする。



「二年振りの学院はどうかしら…?」


「…以前よりも環境が改善されたと感じました、特に中等部や黒の館あたりが…」


清水学院長は笑顔で言い、暦は平然とした表情で感想を述べる。


「…(…二年振りの学院…?…黒の館…?…どういうことだ…、在学していたのなら俺の記憶に天郷暦の存在があるはず…、それが…無い…)」


智は清水学院長と暦の言に違和感を覚える。


「ふふ…黒の館はね、向こうから来た留学生が使う館だし、前々から提案もあったから増築したのよ」


「そうでしたか、二年前と比べ、施設も充実し、クラスも生徒数も増えていたので驚きました」


「………」


清水学院長と暦は当然の様に話すが、智は二人の会話に付いていけてなかった。


無理もない…彼には「黒の館」は見えないのだから…。


「…兄さん、天郷先輩も学院長も静かな人だね…」


「…(!?…勇には二人の話が聞こえていないのか…?)」


勇は黙々としている二人を見て智に言い、智は二人の会話が聞こえていないらしい勇に驚く。


「あの日は驚いたわね、暦さん」


「はい、震動が起きたあの日は…」


「…(…震動…?…二人が知っていて、俺の知らない歴史があるのか…?…学院長は…俺達にまだ何か隠してるのか…?それとも…俺をかまに掛けようとしているのか…?)」


清水学院長と暦はさも当然の様に話し、智は二人の様子を見て思案する。



「ふふ…そういえば勇君、この学院の環境には慣れたかしら?」


「ふぇ?は…はい!」



清水学院長は勇に言い、勇はいきなりの言に慌てて答える。


「この学院では中等部も高等部と同じ速度で授業が進んでいきますからね、学ぶ事が多くて大変でしょう」


「はい、授業も七時限目まであるし、えと…魔学と超能力も難しくて…、黒の館の先生に叱られて…、えへへ…勉強は…兄さんに助けてもらって…何とか…」


清水学院長は笑顔で勇に言い、勇は照れながら答える。


「…そう、良いお兄さんを持って幸せね、勇君」


「はい!」


清水学院長はそのままの口調で言い、勇は元気良く答える。


「…(…彼は震動の影響を受けながらも身体が認めないのね…、…勇君は無意識に…徐々に受け入れ始めてるけど…)」


暦は震動を感じつつ、清水学院長と石動兄弟の様子を見る。


-ヴゥゥゥン-



「…(…震動が止まった…そろそろ…刻が跳ぶ…)」


暦は冷静に紅茶を飲みつつ、紅茶の入っていない器を置く。



-カチン-


「やめて下さい!そんな話は!」


智はいきなり席を立ち、紅茶の器を返す。


液体が床に流れる…、落ちたり…止まったりを繰り返しながら…徐々に…。


「すみません…拭きます」


「あら、ごめんなさいね…」


「………」


暦は時計を見ると、昼休み時間が終わる少し前であり、食堂に勇の姿は既に無く、廊下に居た生徒達もそれぞれの授業を受ける為に教室に戻っていた。


苅藻達だけはそれぞれ監視を続けている。


「ありがとうね…後はやっておくから、智君は教室に戻りなさい」


清水学院長は智に言い食器を片付けていく。


「…失礼…しました」


智は食堂から去っていく…。



「…暦さんの住んでいた関西とこっちとじゃ…震動の頻度が違うみたいね…」


清水学院長は独り言の様に呟く。


「…学院長も…まだ安定しない様ですね」


暦も独り言の様に呟き、席を立つ。


「…そうそう、智君にも言ったけど…生徒会立候補の件、考えておいてね?天郷暦さん…」


「……考えておきます、…失礼します」


清水学院長は最後に凍てつく様な口調で言い、暦は無表情で答え、食堂から出て行く。


苅藻達がすぐさま暦の傍に駆け寄り、暦達は次の授業に急ぐ…。


___________________


放課後…


「お嬢、クラブの見学ですが、どうします?」


「クラブの見学か…、今日は思う所があってね…止めておくよ」


苅藻の言に暦は答え、後ろでは黒田兄弟が背伸びをする。


「…思う所…やはり夢ですか?お嬢」


「いや、少し美術部の教室を覗きたくてね」


苅藻は暦に尋ね、暦は首を横に振って言う。


「え…お嬢は美術部に興味が?」


「………」


「すいません、お嬢」


黒田命(兄)が意外そうな口調で言うが、暦の表情を見て直ぐに謝る。



「…(…雫は放課後には美術部で絵を描いているらしいが…)」


暦は雫と話した内容を思い出しながら歩いていく。


…その時…


-カン-


「天郷暦さん、また…会いましたね…」


暦達の前に背中まで伸びた美しい銀色の長い髪と紫色の瞳、内気そうな雰囲気が特徴的な女子生徒が声をかける。


「…朋鳴…魅鳥(トモナキ・ミトリ)…?」


「…覚えてて下さったのですね、えへへ…」


暦は魅鳥の顔を見るや驚き…魅鳥は照れながら笑う。


「魅鳥ちゃん…」


黒田命(兄)は魅鳥に見とれてしまい…、思わず呟く…。


「…え…?…み…命さん?」


「………!」


「俺…知らないよ?」


黒田命(兄)の顔色が蒼くなっていく…。


妹が傍にいるので、すり替わりは通用しない…、つまり命(兄)には逃げるしか道は無い。


「ち…違うんだ…、こ…これは…その…」


命(兄)はやむを得ない事情を話す。


「…そ、そうだったんですか…それで…女装を…」


「そうなんだよ…うっ…うっ…」


何とか納得した魅鳥に命(兄)は安堵するが…


「チッ…」


命(妹)は舌打ちする。


「あれ…?そういえば…暦さんは…?」


魅鳥は周囲を見回しながら言う。


「しまった!お嬢は何処に?」


「美術室…だったっけ?」


「行くぞ!命!」


黒田兄妹は駆け出す。


 ・・

「お姉、階段で走るとはみ出るって!もう!」


「見るな!エッチ!」


「ふえ…?えぇ~!?」


命(兄)は階段を駆け上るや、付いてきていた命(妹)は兄の下着を見て赤面し、兄も赤面しながらスカートを押さえて言い、魅鳥は両手で顔を隠しつつ指の隙間からはしっかりと見ていたという。



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