再会
空は瞬いた。星は煌めき、太陽は燃え盛る。
大地を蔓延った巨人どもの轟は消失し、翼の生えた天使と呪縛を操る謎めいた男と僕らだけがそこにいた。それで全てが終わった、カシウスはいなくなったのだろう…そう思った瞬間だった。
「嘘つかれてる。」
耳に言葉が走った。顔を振り向かせるとそこには口があった。そして目があった。真っ赤な目。黄色い角。白と黒の髪。のけぞる僕の瞳に張り付いた彼女の目。
「ねぇ、航平。」
その声。改めて聞けば合点がいった。合点がいってしまった。
「母さん。」
僕は小声で言った。舐めるように舌を出したその鬼は空を滑空しそうして叫んだ。
「あんたは嘘をつかれてる。こいつらに。」
その時、周りが気づいた。鬼の存在に。天使の羽を生やしたレイと名乗る女性はそばにいた呪術師の男に口元で何やら囁くと鬼に向かって飛翔した。鬼は笑って距離をとった。
天使レイは歌った。
「こいつがカシウスだ。鬼の姿をした化け物。この世界を破壊し、神仏の理を汚すもの。」
僕は睨んだ。その鬼を。いや、その化け物を。
あの呪術師が呪いを唱えた。鬼は笑いながら、全ての言葉をかき消すような大声を出した。
「私はバケモノではない。私は凪航平の母親、そう、私は凪麗花だ。」
僕の目を見ていた。その目はなぜか懐かしかった。
父が声を出した。
「レイ、華?」
その刹那、父は落ちた。空から落ちた。
叫びは届かなかった。父を浮遊させていたのは天使のレイの霊術。僕はレイを見た。
涙ながらの糾弾をした。
レイは決してこちらを振り向かなかった。ただ、あのバケモノの方を睨んでいたから、僕も顔をそちらに向けた。
そこには母がいた。
黒髪の美しい、少し怪しい雰囲気に包まれた僕の母親がそこにいた。僕をあの日から変わらない優しさで包んでくれるかのように。
お母さんが言った。
「あなたは騙されていた。」
お母さんは僕の背中にお札を貼ってくれた。たちまち電撃が走って視界が暗転する。でも、その痛みさえ気持ちいい。僕は虚空を笑顔で迎え入れた。
意識が遠のいていく前に、誰かが僕のポケットを探ったような感触だけ感じて、ついには全てが優しさに包まれた。
お母さん…
長い間会えなかった母さんに出会えて今は嬉しい…その気持ちでいっぱいだ。
思えば僕はずっと母さんに会いたかったのだろう。母さんがやり残した貸本業に、伝承を読むこと。そして墓参り。
僕は、僕は
母さんに会いたかったんだ。
だから今は最高に嬉しいんだ。
ありがとう世界。
僕は今、幸せだ。ようやく、幸せを手に入れられたよ。
母さんが大好きだ。




