転送
と、いうようなことはできなかった。できなかったというより拒まれた。黒い扉を抜けることは叶わなかった。
雄介の手は震えていた。雄介が言った。
「相手は只者じゃないようだ。」
「キリアさんが存在を消されるほどだもの。」
「おそらく相手はすでに別次元の扉を開きそこにキリアさんを押し込みそして永遠に閉じた。だから俺らは別次元の扉を開けない。だとしたら逃げ道はもうない。」
窓の奥では巨人が騒いでいる。度々響き揺れる地の揺れは巨人によるものだ。僕の絶望の瞳が何かをとらえた。
「雄介、あれって。」
雄介は振り向いてそれを見た。全身固まっている。扉の奥の二つは静かにこちらへやってくる。声が出ない。窓が開かれた。男と、翼のついた女。伝承にない。
その男が言った。
「俺らは敵ではないようだ。お前はカシウスを止める側だろう?」
雄介はひどく嫌な顔をしている。その男は言った。
「お前がこの世界の俺か。」
雄介はため息を吐いてから答えた。
「それがどうした?もう分かっている。だから入れてくれ。」
その男は雄介がした時と同じように印を結んだ。すると黒い扉が現れた。先ほどと違って扉の黒が蠢いていた。雄介は静かに歩み寄る。
「雄介…!」
「黙ってろ。今回は上手くやれよ。」
雄介はその黒い扉の奥へ溶けて消えた。僕の足は動かなかった。次第にその扉が小さくなって消える。その男が髪をかき分けて額を見せた。驚いた。雄介であった。
隣の翼の女性が言う。
「私たちもカシウスを破壊するつもりだ。あなたたちもだろう?」
「はい。」
僕は静かに頷いた。父は信介のような男を睨みながら頷く。麗花は両手を広げて頷いた。
それから僕たちは空へ浮き上がった。霊術と呼ぶらしい。その翼の女性による魔法だった。
戸惑う僕らは最終決戦へ向かうこととなった。




