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自分を好きになれる詩(うた)  作者: 桃口 優/最愛を紡ぐ作家


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百八十四話 「私の喪失」

待合室。

スマホで時間を潰す。

特になにかしたいことがわけでもない。

でも、何もしていないのはなんだか落ち着かない。


名前を呼ばれ、スマホをポケットの中に片付ける。

開いていたページはどこかに旅立つだろう。

この廊下も私を素敵なところへ連れ出してくれないだろうか。

つい現実離れしたことを想像させる青空が描かれた壁紙。

私はドアをノックする。

トントントン。

緊張感のないリズムが私の感覚を乱す。

静寂と爆発は紙一重だ。

静けさは安全というわけではない。

「いつまでそのままでいるつもりなの?

もう答えは出ているんだろ」と誰かがけしかけている。

でも、それが誰なのかもわからない。

怖いと感じたら終わりな気がするからいつも耳を傾けない。

頭の中にいる小さな私は、今日もせっせと働いている。

彼女たちがもしストライキを起こしたら

私はどうなってしまうのだろうか。

彼女たちに自由をもっと与えようか悩む。 


診察室。

看護師に椅子に座るように促される。

少し抵抗したくなる。

でも、結局座る。

年老いた医師がやってくる。

医師は席につくなり色々と質問してくる。

面接を受けているみたいでいい気分はしない。

「心の病ですね。この病は⋯⋯」

医師は感情を込めずにそう話し出す。

なんだか人間として扱われていないと感じる。

それがどうしてかと言われたらうまく言葉にできないけど。

話が全然耳に入ってこなくなる。 

医師に質問しようと思ったけど

そもそも人を信用していないから聞くのをやめる。


心の中。

診察室を出る。

私は医師の話に思いのほかダメージを受けている。

他の患者の話し声がやたらにうるさく感じる。

一人で来たことを少し後悔する。

こんな時信頼できる人がいたらきっと安心できるから。

自分はどこもおかしくないと今すぐ主張したい。

それを病名が邪魔をしてくる。

もう誰も私の話を聞いてくれなくなるの?

耳を傾けてこなかった不安が一気に押し寄せてくる。

こわい、こわいよ。

でも、これからは病名が私を表すものとなる。

それは、私が私でなくなった瞬間だった。

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