墜落
初めてヘリコプターに乗ったけど、落ち着かない。揺れは意外と無いけど、プロペラの音や空中にいる慣れていない感覚が落ち着かせてくれない。
「ヘリコプターは初めてですか?」
落ち着かない僕を見かねてか、向かいの席に座るレンさんが話しかけてきた。彼は慣れているのか、平気な顔をして膝に置いたノートパソコンのような物を手馴れた手つきで使っている。
「ヘリコプターっていうか、飛行機にだって乗った事ありませんよ」
「空飛ぶ乗り物は初めて乗ると不安になりますよね。でも安心してください! このヘリコプターは自動運転で動いているので、ミスや事故は起こりません!」
「運転手―――操縦士がいないんですか?」
「ええ。このヘリコプター自体は普通に買った物ですけど、後から改造したんです。本当はもっと多機能化させたかったんですけど、途中で飽きちゃって」
操縦席の方へ顔を覗かせると、確かに誰もいない。そもそも、操縦桿と呼ばれる物が存在していない。レンさんはミスや事故は起こらないと自信ありげだけど、ますます不安になってきた。
「それで、化け物はもう現れてるんですか?」
「いえ。ですが、いつ怪獣化してもおかしくありません。商店街通りはほとんどの店が閉まってても、いまだ開いてる店もあります。対象が変身した場合、残ってる店も無くなってしまいますね」
「避難誘導とか出来ないんですか?」
「物は作れても交友関係は作れません。それに「今から怪獣が現れるので逃げてください」なんて言って信じてもらえると思いますか?」
「町にもう三体現れてる時点で信憑性はありますよ」
「……すみません、若干嘘つきました。実は俺、他人と関わるのがトラウマになってまして」
「僕とこれだけ話してるのに?」
「ミズキさんは特別ですよ。憧れ通り越して、信仰しています」
「……なんか気味が悪いんで、普通に友達って事にしてくれません?」
「友達……十くらい歳が離れてますけど」
「友達に年齢は関係ないでしょ。それに友達になれば、もっと話しやすくなりますし」
「そうですか……友達……ヘヘ!」
外の様子を見ると、そろそろ目的地の商店街通り付近まで来ていた。見た感じ、化け物はまだ現れていないようだ。
その時、胸騒ぎがした。さっき感じたものより強い胸騒ぎ。
次の瞬間、商店街通りに細い黒い線が立つと、円状に開いて商店街通り全体を覆った。
「なんだ……あれ……」
「あれが怪獣です! 間違いありません! 反応があの黒いドームから―――うわっ!?」
突如鳴り出した警報と共に大きく揺れた。傾いたヘリコプターは引き寄せられるように黒いドームへと墜ちていく。
「何か強い力で引き寄せられてます!!」
「立て直せないんですか!?」
「無理です!! 墜落します!!」
「ほら見た事か!!」
変身しようとした矢先、目の前が暗闇に覆われた。




