根暗な空手少女あかり7話「堂々たる一歩 ~中学生編・トイレの秘密を女友達に相談~」
あかりはあの「男子トイレ丸見え事件」から3日間、頭の中がぐるぐるしていた。
授業中も、休み時間も、ふとした瞬間にあの光景がフラッシュバックする。
お〇んちんがシューって音を立てて、〇玉がぶらぶら揺れてる様子……。
(見ちゃった……あれから毎回、3階のトイレに行くのが怖い……
でも我慢できなくなったら行かなきゃいけないし……
私だけが知ってる秘密みたいで、誰にも言えない……
根暗だから、こんなこと相談できる友達、いないよね……
でも、胸の奥がモヤモヤして、夜もちょっと寝つき悪い……
道場のみゆたちなら笑ってくれるかもだけど、学校と違うし……
中学校で、誰か……信じられる人……)
昼休み。
あかりは意を決して、クラスで一番話しやすそうだった隣の席の女の子・はるかに声をかけた。
はるかは明るくて、誰とでもすぐ仲良くなるタイプ。でも変な噂を広げたりしない、優しそうな子だった。
「あの……はるか、ちょっと……相談してもいい……?」
はるかはお弁当を食べながら、目を丸くして、
「え、いいよいいよ! あかりちゃん、初めて話しかけてくれた~! どうしたの?」
屋上に行くわけにもいかず、廊下の隅のベンチに二人で座る。
あかりは顔を真っ赤にして、声を小さくした。
「実は……3階の女子トイレに行くとき……男子トイレの前通るじゃん……?
あそこ……ドアないよね……?
で、この前……男子がおしっこしてて……お〇んちんとか……金〇とか……全部見えちゃって……」
はるかは一瞬ポカンとして、それからプッと吹き出した。
でも、すぐに真剣な顔に戻って、
「あー! それね! 私も1年生のとき超びっくりした!!
あそこの男子トイレ、古すぎてドアないんだよね~。改修工事まだだってさ。
みんな最初はトラウマになるよ~! 私なんか、1週間くらい2階のトイレ使ってたもん(笑)」
あかり、目を丸くする。
(え……みんな知ってるの!? 私だけじゃなかったんだ……
はるかも見てたんだ……同じようにショック受けてたんだ……
私、変な子じゃなかった……)
はるかは続けて、クスクス笑いながら、
「でもさ、慣れるよ~。最初は『うわぁぁ!』ってなるけど、
だんだん『あ、また見えた~』って感じになって、
今じゃ通り抜けるときに『今日も元気だね~』って心の中で思っちゃう(笑)
男子も気づいてる子は恥ずかしがって隠すけど、気づいてない子は堂々と……ね。
中学校あるあるだよ~」
あかりの心の中、だんだん軽くなっていく。
(はるか……笑ってくれてる……馬鹿にしないでくれてる……
私、こんな恥ずかしいこと、初めて誰かに話せた……
胸のモヤモヤが、少し溶けてる……
根暗な私でも、相談できる友達ができた……
お〇んちん見ちゃったショックも、こうやって共有したら……
なんか、笑えるネタに変わってきたかも……
私、また一歩、前に出られた……)
あかりも、つられて小さく笑った。
「そっか……私だけじゃなかったんだ……
なんか、安心した……ありがとう、はるか」
はるかはニコッと笑って、
「いいよいいよ! これで私たち、秘密の仲間だね~!
次一緒に行こうか? 私がガードしてあげる(笑)」
その日から、あかりははるかと少しずつ話すようになった。
休み時間に一緒にトイレに行ったり、
「今日の男子トイレ、誰かいた?」って小声で笑い合ったり。
(中学校、怖いと思ってたけど……
こんなふうに、友達ができてく……
道場の金的蹴りで外側の敵を蹴り飛ばして、
今は、友達と話すことで内側の恥ずかしさを蹴り飛ばしてる……
私、ちゃんと堂々としてきてるのかも)
屋上の風が気持ちいい昼休み。
あかりは、心の中でつぶやいた。
(これからも、恥ずかしいこといっぱいあるだろうけど……
もう、一人で抱え込まない。
相談できる友達ができた。それが、私の新しい強さ)




